早くも師走に近づき、例年通り喪中葉書がポストに舞い込み始めました。その中の一通に、コンサルティング会社時代の友人からの葉書がありました。彼はチームの後輩であり、数年の間ほとんどのプロジェクトを一緒にこなしていました。彼は第二新卒としてコンサルティング会社に入社し他後、その実力からあっという間に頭角を現し、現在では某外資系コンサルティング会社で日本人初で唯一のパートナーとなっています。現在でもたまに飲んだりしますし、彼が新居を構えたときは遊びに行ったこともありました。
「誰が亡くなったんだろう?」と思い、葉書の文面を読んで絶句しました。彼の奥様が、今年の八月に帰らぬ人となったのです。
そういえば数年前、奥様が珍しい唾液腺癌をわずらい、手術をされたと聞いていました。多少麻痺は残ったものの、寛解したと聞いていたので安心していたのですが、それが原因だったのかもしれません。最愛のお嬢さんと亭主を残すことになる奥様の無念さ、同時に彼とお嬢さんの喪失感と暗黒のような不安が想像され、ただ立ちつくし、止まらぬ涙を流し続けることになりました。
この数日、このインパクトが心の弱っている私に重くのしかかり、相当なダメージを受けています。ちょっと思い出すだけで、いまだに流れる涙を止められないのは、単に歳を喰ったせいなのでしょうか。何もやる気が起きず、ただ灰色の心理状態にまた陥ってしまっています。この二日ほど虚血性発作が頻発しているのも、これが原因のように思えます。お嬢さんはまだ小学生だったはずですから、男やもめでこれから難しい時期を迎えるたった一人のお嬢さんの面倒をみれるのか、家事は大丈夫か。もとは優秀なコンサルタントだった奥様が家中を仕切っており、彼自身は仕事一本の人間でしたから、これからの生き方を抜本的に見直さざるを得なくなることは間違いないでしょう。あらゆる面で気の毒であり、切ない気持ちしか残りません。
この歳になって思うことは、やはり人は順番通りにいかなければならない、ということです。順番を守れず若くして身罷ることは、多くの人の未練につながります。思い出が風化するまでの時間が長く、残された人間がその気配を感じなくなるまでに時間がかかるでしょうし、同時に家中から消えていく気配を、長く惜しまなければならない。 本当に辛いことです。
精一杯生きる。そして生き延びる。これが当面の私の課題になりそうです。
K氏の奥様のご冥福を、心からお祈りいたします。
奥様、天国から、彼ら二人を強く暖かく見守って挙げてください。 合掌。