【海洋編】
海洋については、若干気になったことがあります。それは主人公の窒素酔いです。たしかにある程度の水深で、窒素酔いになることはありますし、不安が増すこともまれにはあります。しかし幻覚を見るケースはごくまれでしょうし、深いところに行っても短時間であればまず障害はでません。もちろん体や内臓に異常を感じることもなく、特に危ないということないので、水深に対して過度の不安を持つ必要はありません。第一透明度がよくても、あまり深いところに潜ると赤系の色が無くなってしまうため、青みがかった世界しかなくなりますから、あまり面白いことはないです。
原作もそうなのですが、30mの水深を超えるととてつもないダイビングのように描かれていましたが、特にそのようなことはありません。グアムの有名なポイントのブルーホールなどは、横穴を抜けるために最低でも30mを潜らなければなりませんが、訪れたダイバーに異常が生じたという話はきいたことはありません。
もちろん水深を深くすればするほど血液中に多くの窒素がとけ込むため、その排出に時間がかかることは事実です。したがって減圧症の可能性は少し高まりますが、ダイブテーブルという減圧症にならないための時間を定めたものでも、42mの水深で7分以下ならば問題ないとしています。現に私自身先日パラオで40m以上の潜水をしましたが、特に何の問題もありませんでした。(ただしエアーは、ホントにものすごい勢いで減っていきますが...)
また映画の中で、レギュレータにアンカーがぶつかり壊れたため、バディのレギュレータを利用したバディブリージング(一つのレギュレータを二人で交換で吸います。)を行うシーンが出てきます。そのこと自体は問題ないのですが、プロであればその前にいくつかのことをするよな、というのが実感です。普通は漏れているタンクをそのままにすることはなく、壊れた方のタンクのバルブを閉めます。その後バディブリージングで呼吸を続け、タンクが空になったら、閉めてあるタンクにレギュレータを付け替え、残ったエアーを吸い続けるはずです。ちょっとその点は、「なにやってんだか..」というのが実感でした。
また海上保安庁のレギュレータには、バックアップ用のオクトパスをつけないのかな、というのが私の疑問でした。私を含め皆様のお使いになるレギュレータには、オクトパスという予備の呼吸装置がついています。したがって一つのレギュレータを交互に加えなくても、同時に二人が呼吸することは可能です。(もちろんその場合、2倍の空気を消費することになりますが...)映画そのものの設定はわかりますしドラマ性もわかるのですが、あれを見てダイビングが怖くなる、といった方がいるとマズイので、少しだけご説明です。
ともあれあの映画の、船の上からのエントリーにはビックリしました。どう見ても10mぐらいの高さから飛び降りていますから、あれが一番怖いかも....少なくとも私には無理ですな。