ビッグデータが、いよいよ本格的な普及期を迎えたようです。
先日日経新聞主催で行われたICTサミット2012でも話題になっていましたが、これからの時代、IT業界ではビッグデータをどのように活用させるか、さらにモバイル環境とどう組み合わせて考えて行ったら良いのかが、IT企業のトップの命題のようです。もちろん大きなビジネスチャンスのためやや誇張した発言をするのかもしれませんが、データ分析に新たなチャンスが訪れたことも間違いありません。
20年ほど前、私もかつてのボスと「大福帳型データベース」の研究と普及を行っていました。結果的にはW・インモンの「データウェアハウス」のコンセプトが支持され、大福帳型DBはあまり考え方は普及しませんでしたが、大量データを分析することの重要性と難しさはある程度理解することが出来ました。(このコンセプトは、総務省のEAとして生き残っていますが...) ただし当時はマシンの性能の限界とデータを収集するコストの高さが、大量データの分析を進める上でのネックになっていました。
しかしこの数年の情報技術の進化によって、それらの問題は解消されつつあります。センサテクノロジとデータベーステクノロジ、ならびにCPUがいずれも幾何級数的に性能を向上させており、十年前では考えられないぐらい大量のデータを集め、整理し、活用できる環境が整ってきています。事実インターネットのトラフィックも、1ゼッタバイト(1兆ギガバイト)を越える勢いであり、今後は動画などによりもっと多くのデータが集まるのでしょう。
そうなると、情報技術として大量データをさばく環境は整ったといえるので、今後はそれをいかに使いこなすかに焦点が移るはずです。IT業界はデータ分析のヒントや例を提示することは出来ますが、本当に何を分析したいのかを考えるのは、それぞれの企業のプロフェッショナルのはずです。すなわちビッグデータを使いこなす鍵はシステムや環境ではなく、多様なビジネス経験に基づいたプロフェッショナルの仮説が重要になると思われるのです。ビジネスのプロが今後のビジネス展開に必要な仮説を立て、それを過去データを駆使して証明する。これがビッグデータの当面の価値でしょう。もちろん情報システムが自律的に分析を行う可能性もありますが、プログラムである以上人間の意図した分析結果しか表示されませんし、仮に一時的に価値を生んだとしても、それを多くの企業が真似れば結果は意味を持たなくなるはずです。
このようにビックデータを使いこなすカギの一つは、ビジネスのプロによる仮説が重要であることは間違いないのですが、きっとそれだけではビッグデータを使いこなすことは難しいように思います。なぜならばその仮説をどうやって立証するか、そのための根拠となるデータに何があるか、それらをどう組み合わせて分析結果を出すかということ自由に出来なければ、データが価値を生まないためです。すなわちビッグデータを使いこなすもう一つのカギが、縦横無尽にビッグデータを使いこなし、そのために必要なデータの整備と検索ノウハウをもつデータアドミニストレータであると私には思えるのです。データアドミニストレータは分析のプロであり、同時に情報技術のプロである必要もあります。どこにどのようなデータがあるのか、それを分析するキー項目になにがあるのか、どのようなクロス検索をかけると結果が出せるのかを考え、プログラムやコマンドとして作成・実行できる人間が、今後は重要になることは間違いありません。
米国のドラマに「クリミナル・マインド 行動分析課」という番組がありますが、このドラマの中に元ハッカーのデータ分析官がでてきます。プロファイラーである複数のFBI捜査官が立てた仮説を元に、このデータ分析官が様々な省庁のデータを駆使して、場合によっては機密データをハッキングしてでもデータを絞り込み、犯人を特定していく。このデータ分析官の姿こそ、ビッグデータを使いこなすカギであるデータアドミニストレータに私には見えるのです。
データアドミニストレータは、分析と情報技術のプロです。となると、一般企業がそういった要員を育成したり、最新技術を学習させることは合理性に欠くように思えます。つまりそういったデータアドミニストレータを活用するのが一般企業であり、そのような要員を育成しサービスを提供することが、我々IT業界にとって新たなビジネスになると私は考えています。
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先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
・ビッグデータで事業創出 トラブル予兆を察知
・フェイスブックの次は? デジタル教育に可能性
・ネットワーク自動構築 情通機構 障害児、数秒で迂回路
・ターボ搭載エコカー躍進 フォードやGM、北米で
・新人研修は自衛隊入隊 ゆとり世代の鍛え方 団体行動や責任感・任務後「見違えた」
・ドコモ、エバーノートと連携 写真整理、クラウドで楽々 人物を自動で特定
・アップル 次は車革命 新OS今秋投入 声でiPhone操作 ジョブ図示の夢 iCarへ接近
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・フルサービス型設立 インドネシア・LCCライオンビジネス席や機内食提要
・再生エネ元年 沸き立つ企業 買い取り制 来月から
・友達つくる自販機 コカ・コーラ 愛飲者の好みに迫る ホンダ:ドライブ履歴、個人把握
・米携帯大手からシステムを受注 NECの米子会社
・NTTコム、業務に仕様スマホ 顧客目線 サービス改善 漏洩対策・コスト削減両立
・天井落下防ぐ新技術 鹿島、つり下げの補強材
・スマホ半導体 調達ピンチ 独占クアルコム供給難 夏モデルに影響 日本勢対応に苦慮
今週は、どんな一週間なのでしょうか。