実質二週間にわたりお休みをしてしまいました。申し訳ありません。
この二週間も、本当に大きな出来事が沢山ありました。政府のくだらない軽減税策、iPhone6SとiPad
Proの発表、ヨーロッパの移民問題、安保法案、司法試験の問題漏洩などなど。とはいえ先週一番大きな出来事だったのは、やはり鬼怒川を中心とした北関東の洪水でしょう。
事の起こりは台風17号と18号でした。今年はエルニーニョ現象で偏西風がブロッキング現象を起こしており、台風が北上することを防ぐ気圧配置になっていたようです。そこに台風17号と18号が同時に日本に接近してきました。先発の台風17号はやや遅れて日本の東側を通り、後発の18号は中部と関西を直撃しました。このため台風の被害は中部と関西に出ると思われたのですが、この二つの台風が相互に反応して、今回の被害をつくってしまったようです。
東側の台風17号は18号と偏西風に阻まれて、ゆっくりと日本の東側に居続けました。逆に18号は17号と偏西風に阻まれて、本来は東に動くところがそのルートを取れず、やや西に進路を傾けながら北進しました。結果として二つの台風の間に溝ができてしまい、ここに線状降水帯がつくられてしまいました。台風18号は北進の過程で、冷たい風を線状降水帯に供給します。逆に東に居座る17号は、北進の過程で海上の大量の水蒸気を含んだ空気を線状降水帯に供給してしまい、ここで非常に激しい雨雲が線状に出来てしまったようです。
当初この線状降水帯は静岡上空に南北にでき、9日に南関東に大雨をもたらしました。やがてその降水帯は東に移動し、鬼怒川上空で大雨を降らしました。結果的に降雨量が600mmをこえる猛烈な雨が鬼怒川付近に降り注ぎ、付近の雨水が鬼怒川に流れ込んだことから、今回の洪水に繋がってしまったようです。
日本の河川は、降雨量300mmを想定して護岸がつくられているようです。今回は想定値の二倍以上の水量となりましたから、護岸が決壊して洪水となってしまいました。その被害は予想外に甚大であり、昨年の広島に続いて多くの方が命を落とす結果となりました。東日本大震災の津波で照明されたとおり、多くの家屋や什器は、水のもたらす流れと浮力には耐えられません。急速な水量の増加で家屋は浮き上がり、水流の強さで建物ごと流されてしまいます。横風の勢いには耐えられても、水のもたらす力には対応できません。結果として家屋が流され、避難できなかった住民を巻き込んで倒壊する結果となります。
今回の不幸は、いろいろな自然現象が重なってしまったことです。氾濫を起こした箇所は、多くの川の合流地点であったこと、上流での豪雨で急速に水かさを増したとき、下流の地域ではすっかり雨がひいていたこと、付近はもともと沼地であり、川の水面より低い海抜にあったこと、護岸工事の予定はあったものの、用地買収等に難航して工事に着手できなかったことなど、多くの要因が重なって今回のような災害になってしまいました。
地球温暖化の影響といえばそれまでですが、今後もこういった災害が日本全国で予測されます。ひまわりのレーダーが高性能になったことで、線状降水帯は日本のどこででも発生していることが確認されています。多くの河川の護岸設計は鬼怒川同様ですし、豪雨で氾濫がおきることは容易に想像できます。東京もそうであるように、海抜の低い地域の付近には大きな河川があるところが多いように思います。となると、今後もこのような水害が起きることは容易に想像がつきます。
東京でこのような水害が発生した場合、その被害は今回の比ではないでしょう。多くの地下道や地下鉄がありますから、一旦洪水が起きれば多くの人命が失われることは間違いありません。都市インフラも地中に敷設されていますから、その後の復旧にも相当な時間がかかります。国家運営や経済活動にも深刻な影響を与えることも考えられます。
こういった事態を防ぐために、今後はより精度の高い気象予測が必要になるでしょうし、シミュレーション機能を使って被害想定をしなければなりません。その上で必要な工事や対策を積極的に行っていかなければ、昔からつづく天災に対応できないでしょう。起きてから憂うのではなく、起きる前に考え対応を行う。ごり押しで安保法案を急ぐのではなく、今後の国民の生命や財産のための活動を優先することが、今の日本には求められていると思わざるを得ません。