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Weekly report
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 October Fourth week

 マンションの傾斜問題が拡大を続けています。

 ことの起こりは昨年の末、横浜にあるマンションで棟と棟をつなぐ渡り廊下で段差が発見されました。会社側の調査で2cm以上の段差が確認され、マンションそのものが傾いていることが確認されました。原因調査の結果、マンションの基礎となる杭が強固な地盤である支持層に届いていないことが判明し、大きな問題に発展しました。

 その後の調査で少なくとも7本の杭が支持層に届いていないこと、それにもかかわらず届いたがごとくのデータ提出されていたこと、そのデータは他の杭のデータであり、施工の報告書そのものが改ざんされいたことなどが次々に判ってきました。さらに発売の際に提示していた羽根付きの杭を使ったダイナウィング工法も使われておらず通常の杭が使われていたことや、その杭を固定するために流し込むセメントの量も少なかったことなどが解り、施工を行った旭化成建材、ならびに設計・管理を行った三井不動産の責任が問われる事態となっています。

 さらにその後の調査で、その工事を担当した現場代理人がその他にも数十棟もの杭打ち工事を行っていたことが解り、それらすべてでデータの改ざんや偽造がある可能性もでてきました。もちろんそれ以外にも旭化成建材は数多くの建物で杭打ちを行っているため、その影響は日本全国に及ぼうとしています。現在は問題のあるマンションの基礎調査が行われていますが、その他の工事箇所も今後順次検査が行われる予定になっています。

 この問題は、さらに大きな問題を呼び起こしています。工事の基礎部分であるため建築後の確認が非常に難しいということですし、それは不正があっても気づかれない可能性が高いということになります。となれば、これ以外にも多くの建物の基礎でこういった不正が行われてきた可能性がありますし、もしそれが業界の慣例であればさらに大きな問題へと発展する可能性も高まります。

 もともと杭打ちが必要な高層マンションは、工場や造成地の跡地に建てられるケースが多いと言えます。それらはもともと田んぼや沼地であったものが少なくなく、戦後土壌が改造されて低層の建物が建てられいました。やがて主要都市の発展とともに宅地が必要となり、工場や倉庫、低層の建物が建て替えられ、高層の建物が建つようになります。となると上場や倉庫では問題がなかった土壌も、大きな建物にとっては軟弱のため今回のような支持層への深い杭打ちが必要となるようです。近年のショッピングモールや高層の建物はだいたいこのパターンですから、本当にそれらすべての杭がきちんと支持層に届いているかは、かなり疑問が残ります。

 今回の件が氷山の一角だとすると、今後このような問題が次々に露呈する可能性もあります。となると、旭化成や三井不動産だけでなく、あらゆる建物にかかわる企業に大きな影響が出ることも予想されます。今回の件で旭化成関連の株価は暴落していますし、それが複数の企業に渡る問題となると、日本経済そのものに大きな影響を与えることは間違いありません。

 今後の動向は見守るしかありませんが、このような事を繰り返さないためには、施工時のデータをより確実に捕捉する仕組みを作るだけでなく、それらの審査業務を迅速化かつ高精度にしていくしかないでしょう。これまでのように基礎データを書類として提供し人手で内容を審査することは、時間と労力が無限に必要になるだけでなくその見落としの可能性も高まります。となると、基本的には大半を自動化する仕組みを作っていくしかありません。

 今後は杭や工作機にセンサーを取り付け、工事の情報を確実に発信できるようにすべきでしょう。支持層に到達したことを杭一本一本が発信し、そのすべてがリアルタイムで記録されれば、このような改ざんは難しくなります。また工作機の運転状況や稼働状況をすべてログとをとれば、本当に所定の時間をかけて工事が行われたことを施工主がリアルタイムで確認したり、管轄官庁が爾後的にチェックすることもできるようになるでしょう。さらに工事のデータを定型化し、IoT技術とビッグデータ、人工知能を利用し、さまざまな角度からチェックとシミュレーションすることを可能にすべきと考えます。人間が計算することであれば、プログラムによっても必ず出来るはずですし。複雑かつ一度きりの構造計算でも、ビッグデータと人工知能を使えばその多くを自動的に計算できるようになるはずです。また様々な計算方法も官庁がクラウド上に登録していけば、日本全国の自治体で同様のチェックができるようになるはずです。となれば、最終的な判断や確認だけを人間が行えばよいことになりますし、作業効率と精度の向上が期待できると思われるのです。

 このように、問題が発生した都度その事象を改善するだけでは、根本的な問題の解決には繋がりません。出来ないことを信じるのではなく、出来ることを少しずつ可能にしていくこと、さらにそこに新しい技術を前提とした仕組みを考えていくことが、我々IT技術者には求められていると思います。