NECが新しいウェアラブルデバイスを開発しました。名前は「アームパッド」。AR技術を使った入力デバイスです。
具体的にはNECのホームページを参照していただきたいですが、簡単に要約すると
ウェアラブルデバイスであるメガネ型デバイスを身につけて腕を見ると、腕の上にキーボードが表示される仕組みのようです。表示されたキーボードに指を当てると該当のキーが押され、様々な入力を行えるようです。これによって実際にキーボードを装着しなくても入力が行えますから、音声や目線ではできなかった複雑な入力も可能になることが予想されます。
こういったメガネ型のウェアラブルデバイスの欠点は、二重焦点の問題が解決できない点です。以前にもご紹介しましたが、Googleグラスが失敗したのはこの問題が起因する部分が大きかったように思います。つまりメガネ型デバイスに写った画像に焦点を合わせると、それ以外の部分には焦点を合わせることが出来なくなります。となると車の運転中にメールを見てしまうと焦点はメール内容の表示にあってしまい、前方の風景を見ることが出来なくなってしまい、最悪事故に繋がってしまいます。今回のデバイスもその問題があるためどう解決するかに非常に興味があったのですが、当たり前の方法でこの問題を回避していました。
調べてみると、実はこのデバイスも二重焦点の問題は解決できていませんでした。しかしキーボードという特性上、基本的にはその作業をする際にそれ以外の箇所に焦点を合わせることがないのです。運転中にキーボードをたたく人間はいないでしょうし、仮にそれを行いたい人がいても、その瞬間はキーボードを眺めるはずですから目線は移動します。今回のデバイスは腕に表示する仕組みですので、腕を眺めるとキーボードが表示されます。となると、入力時は基本的に腕を眺めますから、二重に焦点を合わせる必要がないのです。ただし、プロジェクターで腕に映すようにキーボードを表示しようとすると、やはり二重焦点の問題が生じてしまいます。そこでNECは腕の上に映し込むのではなく腕の上部に表示するようにし、腕そのものに焦点を合わせなくても済む方法をとりました。ただしそうすると指に焦点が合わなくなるのですが、そこは指の疑似映像をキーボードの上に表示することで指を見なくても済むようにしました。このように豊かな発想で二重焦点の問題を解決したNECには、ちょっと感心しました。
ただし腕を見ない限り表示がなされませんから、ブラインドタッチはできません。細かいキーボード作業は無理でも、ボタン操作程度であればブラインドタッチのニーズはあるでしょう。となると今度は衣服に縫えるようなデバイスや、腕時計型デバイスと連動したフィルムのようなデバイスがあると便利かもしれません。ちょっとした凸凹さえあればボタンの違いは認識できるでしょうし、慣れればローマ字入力のような複雑な入力も行えるようになるかもしれません。
このように豊かな発想が、新しいデバイスの開発に繋がります。私のような老頭児(ロートル)の発想ではなく、若者の新しい発想がまったく想像もしなかった新たなデバイスの出現に繋がることを、心から願ってやみません。