シェアライドが解禁されそうです。
政府は10月20日、シェアライド解禁に関する方針を明らかにし、当面は過疎地に限ってですがシェアライドが解禁されそうです。そもそもシェアライドとは、自家用車を使った客の搬送であり、これまでは白タク(自家用の白ナンバーによるタクシー)として禁止されていました。しかしながら世界の流れでは、UberrやLyftなどのシェアライドのベンチャー起業が次々と起業しており、世界中でサービスを展開し始めています。特にLyftは楽天が360億円あまりの資金を提供したことでも有名であり、日本の企業のその可能性については無視をしているわけではありません。
タクシーが普及する以前は、多くの街で自家用車を持った人間が白タクを行っていました。白タクとは営業用ナンバーの緑ではない、自家用である白いナンバーの車でタクシー行為を行うことです。料金は交渉次第であり、距離による明朗会計ではありませんでした。さらに乗車時の交渉料金で必ずしも運んでもらえず途中でさらなる追加料金を要求されたり、場合によっては強盗や性的暴行の危険性もあり、安全面は保証されていないサービスです。そこでタクシー業界は自ら健全化を図ることで白タクを排除し、タクシーの普及とともに白タクは規制を強められてきました。
しかし正規のタクシーサービスにも、不満はあります。日本のタクシーは安全の面から法律によって、見知らぬ人間との乗り合いを禁止しています。しかし遠距離であれば、同方向の客と一緒に向かい料金を折半した方がお得でしょう。白タクはこういったニーズに違法に応え、乗り合いももちろんありです。正規のタクシーで深夜に都内から私の自宅まで乗ると1万5千円ほどかかりますが、同方向の客を探せば折半できるとすれば、乗り合いサービスを求めたくなることも理解できます。
今でも深夜のターミナル駅では、終電に乗り遅れたり酔って降車駅を逃した酔客を求めて、白タクが客引きを行っていることがあります。正規料金の8割で約束しても、4人が乗れば正規タクシーの3倍ほど稼げるわけですから、怪しいビジネスとしては十分成立します。タクシーを待って1時間以上行列に並ぶよりもそれを使ったほうが楽だと考える酔客もいますし、タクシー運転手と違い全額自分の収入になるわけですから、タクシー運転手をやめて違法な白タクをやろうという人間もいるのです。
一方、田舎を考えてみると、また違った観点からこのビジネスの重要性が見えてきます。熱川の海潜亭を礼に考えてみると、このサービスはやはり価値が高いでしょう。というのも海潜亭は標高300mのところにあり、付近の商店街まで車で10分程度かかります。車がなければ事実として生活は不可能ですが、視力や体力の衰えが発生すると車の運転は出来なくなります。タクシーは割高ですし、かといって病院には行かなければならない。となると、近隣の友人と一緒に病院やスーパーに行けるのであればこういったサービスは本当に便利です。
今回のシェアライドについての政府の方針は過疎地のみの解禁ですが、実は海外ベンチャーからの圧力で解禁したきらいがあります。つまりUberのような大型ベンチャーはより多くの国でサービスを展開したいですから、日本の市場は非常に魅力的です。また自動車業界の思惑としても、これによって自家用車の保有率が上がるのであれば、賛成せざるを得ないでしょう。実際Uberは、東京で正規タクシーの配車サービスを手がけていますし、福岡でシェアライド実験を実施しようとして、国から中止を求められています。つまり国内外にこのサービスに対するニーズは、確実にあるのです。となると、今後都市部での解禁も間違いないと思われますし、それは時期の問題だけのようにおもわれます。
もちろんこの解禁によって、密室犯罪の発生や支払いを取り巻くトラブルは十分考えられます。インドでは女性への性的暴行の温床となっているという指摘もありますし、見知らぬ運転手の車に乗ったり、見知らぬ人間を乗せるのは日本では抵抗があるように思います。米国ではヒッチハイカーを結構見かけましたし、それが普通の文化となっていました。しかし日本ではまずそういったことはありませんでしたから、今回の解禁でも拒否感を持つ方も少なくないように思います。
こういったことで大切なことは、羹に懲りて鱠を吹かないことです。いかなる新しいサービスも、初期段階ではさまざまな問題を発生させます。その可能性を予見して事前に対応することは重要ですが、対応できないこともたくさん発生するはずです。となるとまずは限定された範囲でサービスを開始し、その中で徐々に不具合を明らかにし、制度や仕組みを改善していくことです。その上で適用範囲を広げていきサービスを普及させるべきですし、それでも一定量の不具合は発生することを理解しなければなりません。
もちろん我々ITエンジニアは、問題の発生を防いだり、発生した際の対応を簡単にする仕組みを考えなければなりません。たとえばその車に免許証のICを読み取る装置を付け、運転者本人の情報を配車センターまで送ります。センターではその免許が盗品でないかを確認し、配車を受け付けます。乗りたい人間は事前に身分証などで、本人情報と顔写真を登録します。配車を希望するときはスマートフォンで顔認証を行い、事前に登録された正規の登録者かを配車センターで確認します。その上で行き先を告げると、近隣の車から希望者を募ります。配車を受ける運転者は確認の返信と、乗車する人の顔写真が送られ料金が確定します。乗りたい人間は、スマホに送られた料金と車種、運転者の写真を見ることで、配車された車と運転者が正規に登録されたものかを画面で確認できます。こうすれば万が一事故や犯罪があった場合でも、運転者、乗客ともに身分を特定できますし、その後の対応もスムーズになるに違いありません。
もちろんこういった制度が普及すると、それに伴った事故も発生します。となると損害保険会社は、今までの自動車保険ではカバーできない事態が生じるでしょうから、シェアライド乗客を対象にした特約や強盗被害などの特約等を考える必要が生じるでしょう。また乗客が被害に遭うことも考えられますから、傷害保険のような乗客の損害に対する保険もつくらなければならなくなります。このように新しいサービスの出現が、さまざまなっびじねすに大きなチャンスをもたらすことを、我々は忘れてはなりません。
2020年に向かって、どのような新しいサービスがどのような社会を作り出すか、いよいよその始まりを迎えたようです。