いよいよ4月になりました。希望と不安を抱きながら社会に出た多くの新人さん、たった一日の出社はさぞ疲れたことと思います。とはいえ週末の各地の飲み屋は新人であふれ、これからの豊富を熱く語った夜になったのではないでしょうか。
さて4月に入り、さまざまな商品の値上げが始まりました。日銀の景気短観でも景気の悪さは明確になっていますが、様々なコストの上昇を吸収しきれなくなった企業が製品の値上げにはしっているようです。昨年までは商品の重量や個数を減らす実質値上げが多かったように感じますが、今年はいよいよ商品そのものの価格を上げざるを得ない程、企業の業績が苦しくなってきているように思います。銀行の住宅ローン利率も上昇を始めていますから、不景気のつけがますます国民に回ってきているように感じます。
政府や日銀の政策は手詰まり感が強いですし、これといった積極的な挽回策は見いだせないようです。それでも来年予定されている消費税引き上げをごり押しで実施したい現政権は、なんとか見かけ上の景気を保ちたいように感じます。すべては国民のためであればよいのですが、どう見ても首相の面目のためとしか思えないやり方には納得できない方も多いとは思います。
民間企業や組織の努力も、限界があります。大手家電メーカーが事業を売却せざるを得ない状況になったように、今後小売業や他の製造業でも同様の事態が発生することは容易に想像できます。もっともらしい公約を掲げるのではなく、本当に実体経済が上向くような政策を考えるべきですし、そうでなければまたリーマンショック後の経済状況が復活してしまうことを忘れてはなりません。
さて先日面白いニュースが、ネット上を駆け巡りました。去る3月23日、米マイクロソフト社は、AIチャットボット「Tay.ai」をtwitterなどのSNSで公開しました。このAIプログラムはSNS上の会話を行うものであり、SNS上の書き込み内容を学習してさまざまな若者の言葉を習得するというものです。ところがこのAIの学習機能に問題があり、差別や侮辱など倫理的に不適切な内容が多く書き込まれるとその内容を記憶してしまい、自らも不適切な発言を繰り返すようになってしまいました。事を重く見たマイクロソフトはこのサービスを停止しプログラムを改造しているようですが、31日時点で誤ってTayを公開した時点では改善が見られなかったようです。
プログラム設計や機能に問題があったことは間違いないのですが、人間同様コンピュータも無垢な状態では善悪や倫理観がないことを思い知らされる事件でした。どんなに優れた記憶力や判断力があっても、そのベースとなる知識に偏りや不足があれば多くの人にとって問題ある行動をとってしまうのは人間もコンピュータも同じなのかも知れません。今回Tayはやや悪意のある若者によって偏った思想や知識を学ばされてしまいましたが、これはテロリストの育成過程と似ているように思うのです。
一般的な知能と記憶力と常識があっても、偏った考えや知識を一方的に教え込まれれば狂信的な行動に結びついてしまいます。さらに理解度が高ければ高いほど、巧妙に作られた誤った論理を信じ込んでしまいがちです。かつてテロを行った宗教も同様であり、高学歴の若者が完全なるウソを信じ込まされ、一般市民を巻き込んだテロ事件を起こしています。ホームグロウンテロリストが問題になっていますが、これも今回のTayと同じく誤った論理を上手に教え込まれ、その教義に従って無差別なテロ行為に走ってしまうのでしょう。
逆に今回の件でマイクロソフトがどのような改善を加えてくるか、そしてTayは今後どのように倫理的・常識的に適切な内容を学習をしていくかに非常に興味がわくことになります。なぜなら偏りや誤りのない常識や倫理観とは何で、それは何に基づいて作られるのか、それがなぜ倫理的な判断のベースになるかを明らかに出来るということだからです。それが明らかに出来るのであれば、洗脳された人間をより容易に解除することが出来るかも知れませんし、テロに傾倒する若者を少しは減らすことが出来るかも知れません。
未熟で傷つかずリセットできるコンピュータを使って、人間の学習や心の仕組みを分析する。こういった新しい心へのアプローチが、今始まりだしたのかもしれません。