三菱自動車が日産自動車の傘下に入ることになりました。
二度のリコール隠しで傷ついたブランドは、今回の燃費の偽装問題でとうとう自力で復活することができず、日産の支援を受ける結果となりました。反対に日産としては日本で弱かった軽乗用車の市場を攻略できる体制ができましたから、三菱自動車が倒産という最悪のシナリオが回避できたことは非常に望ましい結果だったのかもしれません。
三菱グループとしても、前回6000億円弱を投資して復活させた三菱自動車に対し、未来なき支援をすることが回避できたのは僥倖といえるでしょう。いずれにせよ傷ついたブランドを回復できないにせよ、その技術や働く人の誇りを守れたことは良かったと思いますし、ブランドはともかくその精神をもう一度復活できるよう努力してほしいと思います。
とはいえ今後の三菱自動車は、まだまだたくさんの障壁が待ち構えています。支援を受けたとしても、傷ついた三菱ブランドを品質に厳しい日本の顧客が選んでくれる可能性は当面低いと思われます。可能性があるのは、ブランド力のある車種を日産の共同開発し、あとは日産の技術会社として機能することかもしれません。日産としても、三菱自動車と競合する車種を統合し、三菱の得意としていた軽乗用車分野とオフロードスポーツ分野を三菱に残し、他分野は日産で開発するしたほうがシナジー効果が生まれやすいと考えるでしょう。いずれにせよ日産の強みとする世界展開を視野に三菱は技術を絞り込む必要があるでしょうし、電気自動車など残りの技術は日産と順次統合していくのではないでしょうか。いずれにせよ徐々にスリム化が図られるでしょうから、徐々に従業員や関連会社の数も減ることが予想され、日本の働きがやはり減ってしまう可能性が高まったと思います。
電気自動車が本格的になって以来、世界的にビッグ3とスモール100との戦いが本格化しています。自走自動車の主導権を握っているのはグーグルであり、既存の自動車メーカーはその一部を担当しているにすぎません。世界の自動車ブランドも統合の一途であり、これからは移動運搬手段ではない新しい自動車の姿が求められています。このような流れによってトヨタ自動車が発表したように、これからはトヨタ自動車といえどもこれまでと同じやり方で世界と戦えば負け戦さが予想されますし、その戦いを迅速かつ有利に進めるよう効率化を前提とした組織改革に取り組むようです。
自動車のあり方は何で、現在の延長線上にあるのかは誰にもわかりません。ネットワーク配信という技術がビデオテープやCDをベースとしたビジネスを破壊したように、自動車の理想と本来の目的を考えないと、すべての自動車メーカがイノベーションの陰で破産することになるでしょう。またそのあり方がわかれば、スモール100のようなフットワークの良い企業のほうがずっとビジネスが有利になることを、我々は忘れてはなりません。
大きな時代のうねりは、近代を支えた自動車産業の姿さえもかえようとしています。そのうねり中で生きている我々は、常に変化を意識し、人が何を求めるのか、世の中にとって素晴らしいものは何かを考え続けなければなりません。