先日、ちょっと面白いものを見つけました。
某クライアントのビル前に交差点があり、横断歩道があります。その近所に大きな病院があるためか、横断歩道の手前に、視覚障害者向けの音響装置のスイッチがあったのですが、その形状が非常に面白いのです。通常は信号灯の電柱に設置してあるケースがほとんどだと思うのですが、そのスイッチは電柱から50cmほど離れたところに独立した形状で設置されていました。ちょうどガードレールの支柱ぐらいのポールの上にスイッチボックスが着いており、そこまできちんと点字ブロックが誘導されています。歩道を歩いてきた視覚障害の方でも、無理なくスイッチが押せるように配慮されたもののようでした。さらにそのスイッチの前から横断歩道が始まっていますから、スイッチを押して待ち、音声が鳴ってから歩き出せば安全に横断歩道を渡れるように工夫されているようでした。
そのスイッチそのものは素晴らしいのですが、面白かったのは反対側のスイッチです。なぜならば、反対側の歩道は通常通り電柱に設置されているのです。ここが非常に面白いところで、その電柱は1mほど横断歩道から離れているのです。さらにそのスイッチまで誘導する点字ブロックがなく、歩道を歩いてきた障害者の方は横断歩道を見つけることが出来ても、スイッチは見つけられないのです。となると、このスイッチは、何のためなんだろうと考えてしまいました。本来であればスイッチまで点字ブロックを伸ばすべきなのですが、伸ばすと横断歩道ではない位置で障害者の方は道を渡らざるをえません。しかしスイッチがなければ、一人では横断歩道を渡ることが出来ません。
どうしてこんなことになったのか、理由は分かりません。おそらくはもともと両方の音響装置のスイッチとも横断歩道から離れていたのでしょう。それを危険と思った障害者やそれを介助する方の指摘で、一方の横断歩道側にこういった装置が設置されたのだと思います。ところがもう一方は何らかの理由で設置できず、そのままの状態で放置されているようです。安全のため点字ブロックもないのでスイッチの位置がわかりませんし、仮にスイッチが分かっても横断歩道からずれますから渡る方にとっては危険です。
正確な理由が分からないため、このような片手落ちと思われる対策を非難することはできません。しかしそれが現実に放置されている以上、誰かが解決策を考える必要があります。我々ITエンジニアは、こういった面でも活躍が期待されているように私には思えます。たとえば障害者の杖に発信器を取り付け、信号のそばの点字ブロックに触れると音声がなるような仕組みを作れば、いろいろな利便性が上がります。その杖を持っていれば券売機で障害者向けの音声や割引が行われれば移動が便利になりますし、エレベータのスイッチも自動で操作できるかも知れません。もちろんスーパーなどでも同じ仕組みで商品の情報を音声で案内できるでしょうし、公共施設の利用も便利なるかも知れません。
さらにこういった仕組みをいろいろな障害に広げていけば、見た目は健常者と変わらない障害者もさまざまな利便性を享受する事が出来るかも知れません。片眼を失明していたり視野が狭くなる病気でものや人にぶつかってしまいがちな方に注意を喚起できたり、聴覚に障害があってもスマホなどに文章や画像で説明ができるようになるでしょう。
障害そのものがなくなることが理想ですが、それは非常に難しいといえます。障害に対する理解を求めても、すべての人間が等しく障害を寛容に受け入れることも難しいと思います。だからこそ、こういったソフトな方法で障害を解消することがもとめられますし、ITの進化がその可能性を日々高めています。
あとはちょっとの想像力、と私は考えます。当たり前の人間の当たり前の生活には、当たり前であってはならないことが沢山あったりします。だからこそほんのちょっとの想像力を持って当たり前を見直し、その不便や不具合を解決するアイディアが、ITエンジニアには求められている気がします。