VW(フォルクスワーゲン)が、本気を出してきたようです。米国による排ガス不正により、米国や日本で大きくブランド力を毀損したVWですが、好調な欧州でいよいよ自走自動車の実験を行ってくるようです。
先日の報道によると、ドイツのハンブルグ市と提携し、スマート交通の実用実験を行うと発表されました。車を一つの情報デバイスと見なし、当面は日本のITS(高度交通システム)と同様に渋滞情報や駐車場情報を提供していくようです。しかし当然のことながらその先に自走自動車の実験も控えており、この分野でのVWの取り組みは
相当本気であり、日本メーカーもうかうか出来ない状況です。また中国大手自動車メーカー配下のIT企業3社ともこの分野での提携を行っており、コンセプトは欧州、その製造や利用技術は中国という
棲み分けで効率よく実験・開発を行っていくのでしょう。
またかねてからVWは中国自動車メーカーと合弁で電気自動車の生産に乗り出しており、ゆくゆくは中国でも自走自動電気自動車を走らせてくると思われます。日本と違い揚州や中国は右側通行ですから、あらゆる技術も欧州・中国で同様に利用できますから、非常にメリットは高いと思われます。日本でもトヨタ自動車が積極的にこの分野での開発を進めていますが、その他のメーカの動きは決してよくありません。また管轄する官庁もこの分野に積極的とは言いがたく、ここでも日本は世界の負け組になる可能性はあると思います。
これまでの製品やサービスを見て分かるとおり、日本ではあらゆる意味で安全性が重視されます。食品、医薬品、機械などあらゆる分野で最優先されるのは安全ですし、その安全を保証するためにあらゆる官庁がさまざまな規制を行っています。これは利用者にとって非常に望ましいことですが、開発する側にとって非常に手間がかかり
コストの上昇と著しく開発スピードが失われます。結果として発表した製品は世界で魅力のないものとなり、日本独自の仕様で日本だけで流通することになります。日本の市場に十分な消費力があれば良いのでしょうが、失われた20年で消費者の購買意欲は決して高くありません。となると最終的には、収益を得ることが出来ずその市場からの撤退やメーカー自身のサイズ縮小を生んでしまいます。
2000年前後に世界で成功した日本の電化製品は、メーカーもろとも日本の国内から滅びようとしています。シャープは鴻海に身売りされ、東芝は開発余力を失っています。ソニーは徹底的に製品を絞り込んでいますし、他のメーカーも同様でしょう。現在はまだ世界で通用する自動車も、自走自動車や電気自動車を念頭に置くと決して安泰な状況ではない事は誰もが理解出来ます。しかし悔しいのが、その理由の何割かが規制に起因する状況が生んでいるということです。
安全は軽視すべきではありませんし、高い品質はいつもで人を引きつける可能性があります。しかしそれが世界と比べて度が過ぎると、日本製品としての競争力を失ってしまい、結局は安全でなく品質の低い海外製品を購入せざるを得なくなるという結果を、我々はもう一度考えなければならない時期に来ているように私には思えます。
日本と世界を考えるとき、国は規制のあり方を変えていかなければなりません。安全や品質不良の国としての責任追及を逃れるために規制を行うのではなく、官庁の勢力争いの結果として規制を複雑化することなく、もう一度規制を見直さなければならないと私は思います。新しいアイディアや製品により速くチャンスを与えて実現させ、その利用や普及によって生まれる問題に対し少しずつ現実的なルールを作る、これが日本に求められている行動であると私は確信しています。それが世界のスタンダードであり、そのスタンダードに乗ることこそがこれからの国際競争に生き残るための第一条件であることを、我々は認識しなければなりません。
自走自動車を中心とした新しい街、すなわちスマートシティの実現が日本を救います。逆にそれを阻害する規則を徹底的に変革しない限り、世界の最劣等国としての日本が待ち受けていることを、我々全員が考えなければなりません。