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Weekly report

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 November First week

  先月13日のこと、国民の敬愛を集めていたタイ国王が崩御されました。タイは弔意を示すため様々な分野の自粛を行っていますが、経済的に深刻な事態を生み出しつつあるようです。

 もともと絶対君主制だったタイは、20世紀初頭に立憲君主制に変更したのちも国王が様々な分野で影響を与えてきた国です。近年は工業化でアジアの金型工場と呼ばれるほどの発展を遂げ、世界の工場たる中国の製造業を下支えしてきました。日本を始め世界から企業の進出を誘致し、高いレベルの教育を受けた国民を使って大きな成長を図ってきました。

 しかしその反面、政治面ではきわめて不安定な国です。軍や政府高官が何度も革命を目指した争いを起こしており、現在は軍事革命によって軍が政権を握っている状態です。しかしこういった争いの際に、率先して事態の収拾を図りさまざまな紛争を治めてきたのが、今回崩御されたタイ国王です。

 したがって今回の国王が亡くなったということは対国民にとっては非常に大きな出来事であり、タイ国王の喪に服すためあらゆる分野での自粛が行われているようです。一応この自粛も1ヶ月と期限が決まったようですがその影響は大きく、国内全体の経済に大きな影響を与えています。もちろん喪が明けたとしても、国民に大きな影響を与え紛争をとどめてきた国王が不在になるため、今後の政治的な不安定さに懸念が生じ、国外企業を中心とした経済に不安感がてきます。

 さらに今後の火種となるのは、次期タイ国王となるべき皇太子の評判です。素行に問題があるようで国民の支持は低く、もう一人の多い継承者である王女の即位を望んでいる国民も多いようです。王位継承の決定はしていませんが、基本的には皇太子が即位するようであり、政治的な火種になる可能性もあります。そのことが国内にまた紛争を呼び込み、経済に大きな影響を与える可能性もあります。

 ジェトロの調査によると、2008年から2014年にかけて、新たに20000社以上の日本企業がタイに進出しています。これまでは製造業が多かったものの、今回は製造業以外のサービス業の進出が目立ちました。これは製造業によって国が豊かになり、国民の消費意欲が高まったことをうけてのことと思われます。我々IT企業も新たに30社以上進出をしており、優秀な国民と安価な労働力、さらには整った情報インフラを基本に有望なオフショア先になっています。現在は優秀な技術が枯渇する状況ですが、より能力の高い若者がこの分野に流れ込んでくるでしょうから、やがては中国やインドに並ぶオフショア先になる可能性も高いといえます。

 しかし今回のタイ国王の崩御による政情の不安が、これらの活況な状況に水を差したり、内乱による混乱が発生すれば多くの企業はタイから流出してしまう可能性もあります。観光産業も一気に冷えるでしょうし、せっかく伸び盛りの経済も萎縮し、世界に大きな影響を与える可能性もあるのです。IT産業も有望なオフショア先を失い、新たなオフショア先の開拓に奔走しなければならないことも予想されます。

 ヨーロッパや中東のように、内乱によって経済や文化が崩壊してしまう例は、これまでにも世界中で沢山ありました。現在の難民問題もそうですが、様々な利害の衝突が大きな争いに繋がり、結局は多くの国民の生活を破壊してきました。そういった火種が近隣諸国にも飛び火し、結局大きな混乱を引き起こしている事実を我々は忘れてはなりません。今回のタイ国王の崩御が、こういった問題のきっかけにならないことを祈っていますし、国民の安全や経済の停滞に繋がらないことを願わざるを得ません。