世界が激変しようとしています。
去る11月8日に米国で実施された大統領選挙において、大方の予想を覆してドナルド・トランプ氏が選出されました。様々な手続きを経て、来年1月20日に大統領就任式が行われ正式に政権が発足しそうです。この流れを受けてオバマ大統領は就任期間中でのTPP加盟を断念し、事実上TPPが崩壊しそうな動きです。トランプ氏の大統領就任に納得しない国民のデモは当面続きそうですが、このまま大統領に就任することは間違いなく、米国ならびに世界は大きな転換点を迎えてしまったようです。
今年の6月にイギリスが国民投票でEU離脱を決定しましたが、今回の大統領選はそれ以上のインパクトを世界に与えています。選挙演説中トランプ氏は、米国のあり方を変えるとはっきり宣言していますし、世界の警察官ではなく米国だけが繁栄する国づくりを目指すようです。日本の安保条約も見直され、日本に駐留する米国軍も撤退の可能性があります。韓国も同様の状況になる可能性が高いですし、そうなると地政学的に考えても日本と韓国が民主主義を単独で標榜することは難しくなります。中国やロシアとの協調を検討せざるを得なくなりますし、東南アジアとの関係も見直す必要が出てきます。同時に単独で国を防衛できるよう軍備を強化せざるを得なくなるでしょうし、これが医療や福祉などの国民の生活に大きな影響を生む可能性があります。いずれにせよ今後の激変は戦後の日本政府樹立と同様の混乱を生むでしょうし、国民全員の意識を本格的に変える必要が生じるかも知れません。
先週まで私も、正直クリントン氏が勝利すると思っていました。しかしいくつかの講座で申し上げたとおり、メディアの一方的なクリントン支持になぜか恣意的な臭いを感じざるを得ませんでした。イギリス同様多くのメディアが予測する内容が意外と感情的・恣意的なものが多く、本当に国民の意識をとらえているかに疑問があったからです。現状の閉塞した状況を考えると、イギリス同様既存の政治に不満を持つ国民が多くなることは当然ですし、極端であっても変革を起こそうとする意識が国民に沸きます。となると、EU離脱も今回の大統領選も、理性的・合理的には反対の結果のはずなのですが、感情的には国民の民意を反映した結果と言わざるを得ないのです。
米国人の選択がこの先世界にどのような影響を与えるかは、真剣に考えていく必要があります。選挙戦の内容を考えると、米国は個別主義を打ち出していくのでしょう。EUを離脱した英国同様、自国の都合で自国だけが有利になる政策を掲げることになるでしょうし、他国と譲り合ったり他国に有利になる政策は極力廃止していくことになります。またもや資源ナショナリズムが再燃し、自国に不足する資源はどんな手を使ってでも自国に入手するようにするでしょうし、そのためにさまざまな軋轢が起こすことも辞さなくなるのでしょう。
インターネットの出現によって、世界は本当に小さくなりました。書籍やメディアを通してではなく、さまざまな方法で世界の状況を知ることが出来ますし、さまざまな商品を入手することも可能になりました。国境を越えてさまざまな文化が交流し、よりよい考えを持った若者を沢山生むことができるようになりました。しかしその反面、自国では得られないさまざまな製品やサービス、制度や社会などを知ってしまったために、他国に嫉妬し不満を持ってしまうようになったことも事実といえます。自分が不幸なのは他人のせい、他人が不幸になれば自分は幸福になる、といった極端な思想も芽生えますし、それを信じる人間も増えるのでしょう。イスラム国の台頭などはこれの一環であり、西欧諸国が搾取したものを取り戻し、自国のアイデンティティを強めようという極端な思想の表れと言うことも出来ます。
このような流れの中で世界を考えると、やはり個別主義が台頭していくのは自然な流れなのかも知れません。イギリスやフィリピン、そしてアメリカなど、自国の主張を前面に出し他国と対立してでも自国の優位性を高めようとする動きは、世界的に止められないものなのかもしれません。
となると、この中で我々日本人がどのような選択をしていくのかが大きな問題となります。米国の庇護下でこれまで考えてこなかった、国家として当たり前のことを国民全員で考えなければならない時代になってしまったように思われます。私は戦争に反対ですが、楽観論で国防を論じるつもりはありません。地政学的に考えて米国のメリットがあったからこそ守られてきた国ですが、米国にとってのメリットがなくなったのであれば軍事的・経済的に自立せざるを得ないのです。
日本には古くからの文化があり、規律を重んじ勤勉かつ知的に優秀な国民が沢山います。それを隷属的に利用したい国は沢山あるでしょうし、それらの国が日本を手中に収めようとすることは、夢物語とはいえないはずです。だから軍備を拡張する、というのは単純な発想であり、我々も個別主義の道を歩くことを意味します。私は理想主義者であるからこそ、今こそ多くの国が手を取りあい、この不安な世界にもう一度秩序を取り戻す良いきっかけと考えています。東南アジアの小国や世界の小国と手をつなぎ、相互に利する協調のあり方を考え実施する。一国一国は経済的にも軍事的にも小さくても、大国一国に比べれば全体としてさまざまな点で強みがある、こういった新しい枠組みを真剣に考えるべき時期に来ているように思うのです。
そしてそれは小国だけでなく、世界を股にかけるIT企業同士が国を超えて手をつなぐことに繋がることを心から願っています。世界のITエンジニアが平和を願い、国の利権ではなく人類の繁栄を旨に一致団結する。短絡的な政策で国民を不幸に陥れる国と違い、適正な利益でよりよい仕組みを共有しあう。こういった世界を始めるきっかけが、この大統領選挙で訪れたと考えたいと思っています。
大切なことは、たった一人の国の代表にすべてを委ねるのではなく、我々がどのような未来を望むかです。そしてその望みを実現するよう、平和で希望的な取り決めを行い、その中で世界的な枠組みや仕組みをつくることが望まれますし、それを実現できるのはIT企業だけかも知れません。
立ち上がれ、世界のITエンジニア!