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Weekly report

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 May Fifth week

 5月も早最終週、今月最後のWeekly Reportです。最近テクノロジー的に、次々と面白い記事が報じられますので、本当に楽しい日々が急展開しています。

 まずは富士ゼロックス社の製造業4.0の取り組みです。ラインを完全に自動化してIoTを導入し、さまざまな情報をリアルタイムで取得するようです。その上で品質上の問題が発生した場合は該当箇所のライン部分の数字を分析し、最適な形になるよう調整を行うようです。結果として最終の品質テストの不要にしていくという発想は非常に面白いと思いました。

 次にNEC社のイヤホン型の個人認証システムです。イヤホン型デバイスにはスピーカーやマイク、加速度センサーやジャイロセンサーが搭載できるようになっており、いわゆる聴覚型のウェアラブル端末といえます。しかしそのユニークな点は、事前に耳の中のサイズ図っておき、その中の反響音で本人を特定するというところです。洞窟内で声を発すると反響が起きるように、デバイスから一定の周波数の音を発生させ、その音の反響音の違いで個人を特定する仕組みのようです。これであれば、さまざまなゲートで本人確認をする際に、カードを当てたり虹彩をうつすといった特定の動作をしなくて済むようになりますし、なにより停止して確認作業をする必要がなくなりますから利用範囲が非常に増えるはずです。

 さらにApple Watchにも利用されている触覚フィードバックという技術も、非常に注目です。任天堂Switchにも採用されているようですが、さまざまな振動によって人間に反応を返すテクノロジーであり、普段の生活の様々なシーンで活用される可能性が高まっています。Apple Watchでは、画面を軽く押すとクリック感を感じられるような振動を発生させ、あたかも画面そのものがボタンとして機能しているような感覚を創り出しています。また昨年購入した私の車も方向指示器を付けずに車線の変更をしようとすると、車両が車線を逸脱したと判断し、ハンドルを軽く左右に振動させて運転者に注意を促します。このようにこれまでなかった身体の一部の触覚を利用したインターフェースを創り出すのが触覚フィードバックであり、今後さまざまな分野での利用が検討されています。

 またTelexistence社が開発するロボットは、その名の示す遠隔臨場感(Telexistence)を人間に提供してくれます。人間の身体に様々なセンサーを付けて動作をすると、遠隔地にあるロボットが同じ動作を行う仕組みであり、逆にロボットのセンサーの情報も人間に返すため、遠隔作業を臨場感を持って行えるようになります。こうったロボットがあれば、危険地帯や人間が対応出来ない劣悪な環境においても様々な作業を精度を持って可能にすることができるようになります。たとえば福島原発の原子炉内に立ち入り、さまざまながれきの撤去作業や対応するための装置や設備を構築することもできるようになりますし、そのリアルタイムの状態を正確に把握することが可能にもなります。

 ドローンの進化も本格的であり、デンソーは橋梁の老朽化を点検するドローンとシステムを開発中です。日水コン社は下水道の点検を行うドローンを開発していますし、大成建設や国際航業は地形を3D計測できるドローンを開発しサービスを提供しています。ペイロード(搭載荷重)の拡大と飛行時間の延長によって物流の一端を担うことも可能になってきていますし、この分野もきわめて急成長です。現在は一機一オペレータが基本ですが、近いうちにAIの搭載による自立協調も可能になるでしょうから、一人のオペレータが複数の機体を同時に操作することができるようになりますし、そうなると災害時の被災者発見や被災状況の把握に大きな力を発揮することは間違いありません。

 こうした記事が日々新聞に掲載させる今日は、まさに産業革命といわざるをえません。日々新しい技術が発表され、今まで出来なかったことを可能にし、今まで出来たことでもやり方を変えてしまう。変化を求められた職場では職がなくなり、変化によって生まれた新たな人材が求められる。今日はその動きが急速に起きており、人々の想像を超える速度になっているというのが事実と思われます。これに対し富士通社は、AIの開発を行うエンジニアを200名育成するとアナウンスしていますし、各社もこぞってIoTエンジニアやデータサイエンティストの育成を行っています。しかしこれでは、この進化をコントロールするには余りに速度が遅いように私には感じられます。

 現在の産業革命は事実として起きており、そこに今までいなかった多くの人材が求められていることに我々は気づかなければなりません。それぞれの技術を生み出すエンジニアは確実に育ち、多くの技術を生み出して活動しています。しかしそれら単体で出来ることは限られるのですから、それらを総合的に企画し構築する、まさにシステムをデザインするエンジニアの育成が今後は重要になるのです。例えば上記の技術を俯瞰して考えてみると、Telexistence社が開発する遠隔臨場感の仕組みを使って、ドローンを飛ばします。飛行している状態を五感で感じながら、危険はアラームや音声で伝えるのではなく、全身を使った触覚フィードバックで瞬時に伝えます。耳にはNEC社のイヤホン型のデバイスが搭載されており、適切な人間以外がそのドローンを操作したりハッキングできなくします。さらに操作者は現場の状況を遠隔臨場感で得ているため、様々な指示は音声と画面情報で提供するようにする、といった仕組みを考えるエンジニアが、今後益々重要になると思われるのです。

 こういった技術者を育成するためには、現在のIT企業が取り組むスペシャリスト型人材の育成では対応出来ません。さまざまな技術を広く学び、生活や業務の中で見えない不便や未達成の作業を見つけ、それを広く高い視点から総合的に分析してアイディアを生み出す。まさに価値創造型ができるジェネラリスト型人材の育成が必須となっているのです。今私が取り組んでいる「考える力」の講座は、その一歩に過ぎません。しかしそのような人材の必要性を認識し、育成のためのカリキュラムを考え実行しない限り、日本の繁栄が再び起きることはないと私は断言できます。