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Weekly report

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 October Third week

 ドイツがこの冬、ブラックアウト(電源喪失)の危機に瀕しているようです。

 原因は天然ガスの異常な高騰と不足。新型コロナウイルスの影響がやや落ち着いて、世界的には経済が再開されています。これまで止まっていた各国の生産状況が再び活性化していますが、それに必要なサプライチェーンが完全には回っていないため様々な原材料や部品が不足しています。特に産業のインフラとなるエネルギーは、世界的に急激な需要増となっており、冬に向かう北半球は暖房などの光熱にもエネルギーが必要となります。天然ガスの需給バランスが崩れた以上、値段は高騰に向かいますし需要過多であればそれを落ち着かせるのは糖分難しいでしょう。

 中国も国際世論を意識し、CO2の排出量の多い石炭による火力発電を控え、天然ガスにシフトしています。そのためユーラシア大陸の天然ガスを、中国は多く消費しています。ユーラシア大陸の供給元はロシアであり、ドイツもロシアから天然ガスを購入しています。さらにその救急を安定させるために、ドイツとロシアの間に天然ガスの海底ガスパイプライン(ノードストリーム2)を引こうとしています。しかしロシアとの接近を望まない米国の横やりで運用開始は止まっていますが、今回の事態でその状況は変わるかもしれません。

 ドイツには主に旧東ドイツ領に、石炭と天然ガスの採掘所があります。しかし天然ガスの供給量は需要全体の1/4程度であり、自国の資源だけでは旺盛なエネルギー需要をまかなうことはできません。さらに環境大国であるドイツは、石炭による火力発電や原子力発電を自然エネルギーに転換すると同時に、排出するCO2に高い税率も課してきました。今回のように天然ガス不足になっても、火力発電や電子力発電に簡単に戻れないのは、技術的問題以外にこういった問題があります。

 この状況を抜け出すためには、一時的に税制を停止し、化石エネルギーを使って乗り越えることでしょう。原子力発電を元に戻すには時間がかかりるためこの冬には間に合わない可能性があります。石炭はCO2の発生量が多くても天然ガスに比べて供給が安定していますから、緊急事態を乗り切るにはこの方法がいちばんでしょう。同時に米国との話し合いを進め、ロシアからの供給量を増やす必要もあります。ロシアに政治的な借りを作ることになりますが、とりあえずこの冬を乗り切るためには仕方のないことでしょう。

 こう考えてみると、この状況が来年以降日本で起きる可能性も低くはないと思います。日本もエネルギー自給率は極めて低いですし、経済が低迷し円安の状況では高値の資源を買い負ける可能性があります。安定供給先を見つけても、経済力が戻らない限り安定的に輸入することは難しいでしょうし、電力代の高騰にもつながりかねませんから、さらに経済を逼迫させる可能性もあります。

 世界が小さくなっている以上、世界で起きたことが日本でも起きる可能性は極めて高いと思います。福島以来原子力発電所に対する忌避感は強いでしょうから、完全な自然エネルギーへの転換や豊富に眠るシェールガスの安定採掘と供給が可能になるまで、あらゆる方法で日本のエネルギーのあり方を考えなければなりません。ばらまきばかり考える自らの権益しか考えない政治家を駆逐し、真の日本を憂う政治家が増えることを、心から願ってやみません。