大手企業の賃上げが続いています。
ことの発端はファーストリテイリングであり、1月に新卒の初任給を30万円にすると発表し、既存社員は最大40%の賃上げを行うと発表しました。もちろんこれはベースアップではなく、実力主義を徹底するための手段と言われていますが、それでも他の企業に対するインパクトは凄まじいものとなりました。
これを受けて他の大手企業も続々と賃上げを発表し、バブル崩壊後初めてといっても過言ではないぐらい賃金が上昇することになりそうです。トヨタや富士通、三菱商事など大手企業が次々と追従し、物価上昇の中では非常にありがたい状況になりそうですし、可処分所得の少ない若者に対するメリットも大きいように感じます。
これだけ多くの企業が賃上げをするのは、やはり優秀な人材確保が目的と思われます。日本は年功序列制がいまだに続く側面がありますので、入社年度や年齢が若いほど給料が抑えられる傾向が残っています。10年かけてようやく企業に十分な利益をもたらせば徐々に給料が上がる、といったやり方で、人件費を抑制してきたように思われます。しかしこれは若者のやる気をそぎますし、働かない中高年が高い給料を得るといった不公平の原因となりますので、望ましいやり方ではありません。そもそもネットの時代でこの状況は誰しもが理解していますから、そういった企業に入社した若者が幻滅して離職してしまう結果となり、企業としては若者に対する投資が見合わないという事態になることをようやく認めたということなのでしょう。
しかしこういった景気のいい話はあくまでも大企業だけであり、中小企業はその余裕がないのが実態です。大企業はその利益を確保するために川上企業からの仕入れ価格を下げればいいだけですが、川上の中小企業は円高や原材料高騰を吸収することができず利益を削らざるを得ません。となると、やはり賃上げといったコスト増につながる行為は基本的に難しいことになってしまいます。
日本の経済規模の半分ほどを中小企業が担っている現在、中小企業の収益拡大は必須となります。大企業は中小企業をいじめることなくそのアイディアと付加価値で収益を高め、結果として中小企業も安定的な利益確保と適正な賃金向上を図れるように考えていかなえればなりません。