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ソニーをダメにした「普通」という病  (4/20/2008) 

 横田宏信  ゴマブックス  \1,300

 元ソニーの社員で、現役のコンサルタントの方が書かれたソニーの本です。

 ソニーという企業は日本の企業の中でも非常にユニークな企業でしたが、この数年徐々にその姿を変えているように感じていましたので、この本を読んでみました。内容的には目新しくはありませんが、それでもソニーの持つ問題と、その他多くの日本の大企業に共通する問題点が提起されており、比較的面白く読めました。

 もともとソニーは、「奇人変人の集まり」の企業であり、その彼らがとんがった仕事をすることでその存在を世界にとどろかせていました。逆に学歴にとらわれず多くの優秀な技術者を集め、世界のスタンダードではなくソニーのスタンダードで仕事をする。これが彼らのポリシーだったようです。しかしながら世の中の変化は、ソニーの独自性を許さなくなりましたし、逆にソニーに集まる若者も優秀な大学での普通の人々になってしまったことが、今日のソニーの姿につながっているようです。斬新で実験的な取り組みを避け、採算の世界で手堅くビジネスを行うこと、これは決して否定されるものではありません。しかしながらソニーのような端点を歩く企業も必要であり、そういった企業が新しい流れや革新的な技術を産み出してきたことも事実です。

 しかし今日のソニーは、その手堅さの影で革新性が徐々に失われているという点は私も同意できますし、この著者の主張は、日本の大手企業に対する警告ともとれます。その意味で、参考になる点も多かったように思います。

 奇人変人に温かいまなざしをおくれ、その上でそれらの道を歩んでみたい方に。

 

オタク市場の研究  (3/25/2008) 

 野村総合研究所 オタク市場予測チーム  東洋経済新報社  \1,800

 このところJapan Coolという言葉で語られるオタク文化についてちょっと調べていますが、真面目にオタク市場を解説した良書なのでご紹介です。

 オタク文化が変質し、いわゆる変わり者からマニアックな人物を指すようになってきています。切手コレクターのように収集癖がつよいコレクターというのは昔から存在しますが、現在では彼らを含めてオタクという文化が創られています。もちろんアニメを中心としたいわゆるオタクもありますが、それらを含めてオタク市場と企業へのインパクトを解説した本がこの本です。

 この本の分類によると、私は「家庭持ち仮面オタク」と「我が道を行くレガシーオタク」の複合形ということがわかります。オタク市場が企業において無視できない存在であることは間違いありませんので、新しい形のマーケットインとプロダクトアウトを考える意味で、ちょっと面白いと思っています。なぜなら素晴らしい製品でなければオタクには見向きもされませんが、オタク心にうったえる何かの要素も重要になるというのが現在の特徴でしょうから。

 この本で気になったのは、その分類にやや偏りがある点です。もう少し趣味という世界を広くとらえ、その一般傾向を中心に市場を分析してもらえると面白かったのですが、ややきめこみがキツイ点が残念でした。

 オタク市場について、真面目に考えてみたい方に。