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  • 2009年3月4日

【寺垣氏訪問】

  ひょんなキッカケで日本の天才技術者である、寺垣武先生を訪問する機会を得ることが出来ました。寺垣先生、ならびに代表取締役の早瀬様、エンジニアの宮ア様、本当に遅くまでご対応いただき有り難うございました。また図々しくも遅くまで長居しました我々に対しお世話いただきました寺垣先生の奥様、本当に有り難うございました。またお誘いいただきましたK様、本当に有り難うございました。スケジュールの調整をはじめ、本当にお手数をおかけしてしまいまして申し訳ありませんでしたが、このような機会を設けていただけましたこと、心から喜んでおります。またご一緒にご参加いただいた皆様も、遅くまでご苦労さまでした。

 さて寺垣氏ですが、以前Book Reviewで紹介したこの 本の作者の方です。ご本人によりますと口述筆記なのでこの本は問題が多いとおっしゃっていましたが、それでも日本のモノ作りのあり方を考えている私にとって本当にヒントの多い本でした。その本で興味を持っていた寺垣氏をK氏が訪問し、私のために再度今回機会を設けていただきました。

 率直な感想を述べますと、「すごい!!」の一言です。 私の稚拙な文章力では、あの感激の3時間を伝えることは出来ませんが、本当に近年まれに見る充実した時間を過ごすことができました。寺垣先生は御年85歳だそうですが、これほど破綻なく2時間 以上話し続ける方も珍しいですし、その話しの面白いこと面白いこと...久しぶりに「天才」を見ましたし、「天才」に共通する歳をとらない姿、柔らかさ、かわいらしさを感じました。 いやぁ、本当にすごい!!

 そのお話しを聞いて、本当に久しぶりに目から鱗がポロポロ落ちまくりました。多少オーディオをやってきたつもりでしたが、その大半が「間違った思いこみ 」であり、誤った常識を持ち続けていたことに本当に驚きました。寺垣先生はその一つ一つをユーモアを交えてご説明下さり、その説得力の高さ と技術的な裏付けにただただ唖然とさせられました。

 「”すり切れるほど聞く”とレコード盤のことをいいますが、レコードは決してすり切れません。なぜならば柔らかいお餅をカンナで削れないのと同じことです。レコード盤は塩ビですので、ダイヤモンドの針と擦りあわせると、800度ぐらいの熱を持ち柔らかくなるのです。したがってダイヤはレコードを削ることをできないのです。逆にダイヤは純粋な炭素ですから、その熱で燃えてしまいます。したがってレコード針は減りますが、 レコードそのものはすり減らないのです。それでもなぜレコードがすり減るのかと言えば、それはレコード盤そのもののソリに原因があります。山型にそったレコード盤に針を載せると、盛り上がったところではレコード盤に強い圧力をかけることになるのです。 その限界を超えた圧力が、レコードの溝を削ってしまうのです。」

 こういった考え方を一つ一つ実証するために実験器材を買われ、さらにそれを実証するプレーヤーを3億円以上の巨費をつかって制作する執念、すべてが私の想像を絶するものでした。また簡単に見える一つ一つの機械もきちんと技術的な裏打ちをもっており、街の発明オヤジのように雑に工作するのではなく、技術者として「くそ」がつくほどの真面目さできちんきちんと作られていました。部屋にはボール盤などの機械もあり、85歳の今でも一つ一つの部品から試作されているとのことでした。

 お話しの後、一つ一つの製品を見ながら個別にお話しする機会を頂戴いたしましたが、未知に対する真摯な姿勢と情熱、それを支える膨大な知識と考察力には圧倒されるばかりでした。 仮説検証という難しい言葉を使わずとも、本当に観察を行い、仮説を立て、実際に検証される、それも考えて考えて考え抜いてそれを実現される姿に、私自身の未熟さをただただ痛感させられる結果となりました。 その熱きエンジニア魂を間近に感じ、久しぶりに心が躍りました!

 ということで本当に日本の誇るべき技術者である寺垣先生、有り難うございました!