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■アラン・ケイの夢 (11/22/2005)

 古き良きマイコン少年にとって、アラン・ケイは予言者であった。東芝のダイナブックは、アラン・ケイが提唱した「ダイナブック」コンセプトから名前を付けられており、その由来を知っている者にとって東芝のノートパソコンの名前に違和感を感じたものである。

 アラン・ケイ。1940年生まれのこの技術者は、伝説のゼロックス・パロアルト研究所において、アイコンやマウスといった技術を開発した。それらはゼロックスのSTARというドキュメントワークステーション(古い人は、日本版J-STARをご存じかも..イーサネットの怪物でしたな。)を生み出した。そのコンセプトはS・ジョブスに影響を与え、Macを生み出した。そのMacがWindowsに影響を与えたことは、周知の事実であろう。

 アラン・ケイは言う。「今日のパソコンは、ダイナブック構想の30%しか実現できていない」と。なぜならばダイナブックは新しい創造性を発揮するツールであり、現状はまだまだ創造性の発揮にいたっていない。また、価格も高すぎるそうである。彼の夢は、子供たちにとって当たり前の道具となり、全世界の人間がITを使いこなしてこそ、IT革命が実現できるそうである。そのためアラン・ケイは、100ドルパソコンの開発を目指している。

 私自身が共感するのは、この点である。子供たちがテクノロジを使いこなしたとき、本当の意味でパラダイムシフトが起きる点である。現に今の子供たちと、我々オールドエコノミーでは、ITに関する感覚や取り組み方が根本的に違う。例えば今の子供は、両手で携帯電話を扱う。多くの大人は、片手で操作を行い、両手は使わないはずである。その理由を考えたことがある方は少ないと思うが、おそらく我々が両手を使わないのは、使えないからなのである。つまりそのような感覚を持っていないし、両手を使うためには高度の制御能力の習得が必要となる。キーボードのブラインドタッチと同じで、両手を上手に使うためには訓練が必要だし、そもそも両手を使うことを意識しなければならないのである。
 ところが今の子供は、何の疑問も持たずに、両手を使う。その理由を子供に尋ねると、「早いから」、それだけなのである。ここに変化を感じる。

 今の子供たちが物心ついたときには、ゲーム機のコントローラーが存在していた。何も考えずに両手を使って操作をする、そのボタン数が増え操作が複雑になっても、ゲームを楽しめる。まさにテクノロジを使いこなしているのである。インベーダーゲーム華やかしかり頃、ゲームスティックとボタンを連打するゲーマーは賞賛に値した。しかし今の子供は全員、それ以上の力、すなわち情報リテラシーを有しているのである。

 現に先日発表されたナノテクロジのツールには、ゲームのコントローラとそっくりの操作盤がついていた。微細なものを、機械を使って操作する、その操作能力は子供の時から修練される時代になっているのである。子供の頃の習慣は、大人になっても引き継がれる。テクノロジーが当たり前に身の回りにある、ということのすごさを、携帯電話やコントローラで実感できるのである。それがPCで、どこの家庭やお店、学校にも当たり前にあり、全世界の子供たちが使いこなしたら...

 その子供たちが、大人になりつつある。生まれたときから3Dのゲーム機があった子供たちが、大人になるのである。アラン・ケイが夢見た世界が、確実にそこまで来ている。