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 October Third week

 10月第三週目のWeekly reportです。

 生活者としての実感はないものの、経済の世界では確実に景気が回復しているようです。10月1日の内定解禁をキッカケに、新聞に来年度の新人採用状況が記されています。どの産業も採用数の拡大傾向であり、確実な売り手市場であるようです。内定者の辞退も多く、内定は多く出したものの最終的には定員を満たさない企業がでるようです。

 これらはすべての若者にとって朗報かというと、そうでもないようです。経産省の人材政策担当参事によりますと、優秀な若者を複数の企業が奪い合うゼロサムゲームが始まっている様子です。優秀な若者はどこでも引く手あまた、そうではない若者は就職先が見つけられない、まさに格差社会の縮図が始まっているようです。少子化を考えますと、この競争も激烈になり、やがては不能になることが目に見えています。参事官は、この改善のために教育の改革を挙げています。若いときから就業意識を高め、企業の要求する人材像を明確にして教育を行う。それによって優秀な若者を相対的に増やし、少子化の中でも人材の安定供給をはかろうというのです。私自身、この考え方に異論はありません。しかし要求する人材像だけを提示しても、おそらく現状は変わらない気がするのです。

 数年前、趣味が高じた私は、1年かけて夜間の専門学校に通うことになりました。軽い気持ちで入学したものの、そこにいたのは現在の自分を変えようとする熱い若者でした。関西での正規の職を辞して居を東京に移し何とか技術を身につけようとするもの、アパレル業界を離れ職人として生きていくことを志す若者、現在の販売員からその扱っている商品の修理技術を身につけ、技術者として生きていくことを決めた若者。優秀な企業では見かけない、不器用で熱い若者がそこにはいました。

 何かのキッカケで、学校終了後何人かの若者と食事をしたことがあります。その多くが日頃十分な報酬を得ているわけでありませんし、私自身の職位や年齢を考え、何も考えずに食事をおごりました。しかしその反応に正直驚かされ、同時に考えさせられることになったのです。これまでも多くの研修で、若者との酒を飲み、それなりのところで食事をおごってきたつもりです。もちろんそれは私の勝手であり、おごられた彼らになんの拘束もありません。しかしその場で「ありがとうございます」がでることすらまれですし、その後礼のメールがあるわけでもありません。私自身、それが当たり前と思っていました。

 しかし専門学校の彼らは、違ったのです。おごってもらうことにものすごく驚き、同時にものすごく丁寧かつ誠心誠意礼を言うのです。「ほんとにいいですか!こんな美味いもの喰ったことないっす!!有り難うございます!!」「うめぇ〜!!」 なにより食事中の嬉しそうなこと。こんな風景、本当に初めて見たといっても過言ではありません。

 ここで私は気づくのです。おそらく彼らは、家族以外から褒められたりご褒美をもらったことがないのです。何をやっても上手くいく若者はいつも褒められ、ご褒美をもらいます。優秀な若者はいつも上手くいくし、いつもご褒美をもらうのです。やがてそれは彼らにとって当たり前になり、褒められること・ご褒美をもらうことに何も疑問をもたなくなります。それどころか褒められない状況・ご褒美をもらえない状況に疑問さえ持ってしまうのです。「こんなに頑張っているのに、回りはわかってくれない」「こんなに度努力しているのに、上司は何も評価をしない」。これです。 その結果として社会問題となっている、若者の離職傾向が強まっているように思うのです。褒められることが当たり前になった若者は、褒めてくれる企業を探すのです。

 それに対して褒められたことのない若者。不器用がゆえ、学校が求めるものを示せないがゆえ、ご褒美をもらったことも褒められたことのない若者。必死に現状を脱し、少しでも自分らしく生きようとする若者。いわゆる優秀でない若者の中に、こういう若者も存在するのです。彼らだって、いや彼らだからこそ、ご褒美をもらうこと・褒められることは嬉しいはずです。しかし彼らは、自分自身を褒めることを知っていますし、褒められない自分を変えることを知っています。何より、その意欲があるのです。受け入れてくれる場所を探すのではく、受け入れてもらえるよう必死で努力をしているのです。我々はそんな彼らを見抜き、仲間にし、育てていく努力をしなければならないように思うのです。

 褒める。難しいことです。何年間も平均30本以上打つホームランバッターが、その年25本しか打てなければ褒められることはありません。しかしそれまで十分な成績を残せなかった選手が年間10本打ったら、褒められるべきです。優秀が故にさらに頑張ったものだけを褒めるのでなく、絶対的にがんばった人間を褒める。同時に学校の尺度が示す優秀者ではなく、その人間がもったポテンシャルを見抜き、その良さを延ばすことを始めなければならないのではないのでしょうか。

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 今週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。

 ・保守・修理に主軸を移したジェットエンジンのロールス・ロイス
 ・タイヤにセンサーを埋め、車や道路状況を把握しようとするブリヂストン
 ・$250PCを発売した華碩(ASUS)電脳
 ・芝電子システムズの歩行中の顔認証技術

 さて来週は、どんな一週間なのでしょうか。