12月第1週目のWeekly reportです。
先日のこと、自宅の近所のカルフールに行きました。そこで、びっくり。なんと閉店だそうです。カルフールは、2001年に鳴り物入りで日本に参入したフランスのスーパーであり、開店当初はそのヨーロッパ商品を中心とした品揃えで、一世を風靡したスーパーマーケットです。私も開店当初に訪れましたが、その品揃えの豊かさと食品のおもしろさ、そしてフランスパンやチーズのおいしさにわくわくしたものでした。
しかしながらカルフールそのものは日本市場にあわせたビジネス展開が出来ず、結局2005年にイオングループにビジネスを売却し、イオンが引き続きカルフールブランドで経営を行っていました。しかし正直イオングループに移ってからは普通のスーパーと品揃えがほとんどかわらなくなり、店舗のオペレーションも特徴がなくなり、結果的に私にとっては非常に魅力の低いスーパーになってしまいました。イオングループ
そのものはこのところの流通業界凋落傾向の波を思いっきり受けており、今年度60店舗の閉鎖を発表していました。どうも近所のカルフールは、その一つに選ばれてしまったようです。
カルフールがなくなってしまうのは非常に残念ですが、この流れそのものをよく考えてみると、現在のさまざまな店舗が抱えている大きな問題を示していることに気づきます。その理由を、少しだけ考えてみましょう。
皆さんの身の回りの小さい商店が、最近たくさん閉店していると思います。シャッター商店街なんて揶揄されることも多いのですが、身近な小規模店舗の閉店傾向は、この数年勢いを増しています。バブル崩壊の時でさえここまで酷くはなかったはずですが、最近の傾向は異常です。もちろん原因の一つとして、それらの店舗を支えてきた世代が引退時期であり、後継者難が原因とも言えますが、それだけを原因とするのは疑問が残ります。やはり遠因にネットショップの存在を考えざるを得ないでしょう。
もともと身近な商店街は、皆様のちょっとした身の回りのものを販売していました。それは茶碗であり、ボタンをつける糸であり、魚や野菜であり、電球であり、たばこであり、お茶であり....生活をする上でないと不便なものを扱う、すなわち皆様に利便性を提供していたのです。それらのお店は小規模であり、多くの場合、おじさんやおばさん、その両親であるおじいちゃんやおばあちゃんが店番をしておりました。したがって大きな売上はなくても生活に困らない程度の収入がありましたし、皆さんも商店街に行けば用が済みました。
もちろん昔からスーパーマーケットはありましたが、その名の通り商店街(マーケット)の大型版であり、なんでもそろい値段も若干安い反面、品揃えに難ありというのが
スーパーマーケットの基本でした。その上もともとは衣料品などが、主力となっていたケースも少なくありませんでした。もともとスーパーマーケットは、
中規模な店舗面積と数多くの従業員を有しており、その結果として設備投費がかかるビジネスです。したがってたくさんの品揃えによってお客さんにさまざまな商品を買ってもらい、
トータルな利幅でビジネスを維持してきました。
商店街はスーパーマーケットの出現で徐々にビジネスを圧迫されてきましたが、小回りのきくビジネスときめ細かな品揃えで
戦ってきました。その結果両者が両立していたのがバブル崩壊までの状況です。しかしバブル崩壊によってさまざまなビジネスが影響を受ける中で、スーパーは脱皮しました。すなわちこれまでのビジネスを根幹から見直
すことで生き残りを図りました。
一つがPOSを基本とした品揃え改革です。POSの導入によって売れる商品のきめの細かい補充を行うと同時に、野菜などを1本単位で購入できるようにしたり、中食のような加工品を増やすことで、商店街がこれまで提供してきた需要を取り込むことに成功しました。それまでは子供にお使いを頼む場合、「お茶屋さんで海苔買ってきて。」「お肉屋さんでコロッケとメンチお願い。」といった言葉が使われましたが、今は無条件にスーパーになります。
もう一つが超大型化です。みずからの大型化によって品揃えを充実し、さらに建物の中に専門店を入れることでそれを目的とした顧客も取り込む。これがいわゆるショッピングモールです。これによってユーザに夢を与え、同時に一人あたりの購買量を増やす作戦をとったのです。
その影響をもろに受けたのがデパートでした。さまざまなブランド商品や大量の衣類などの商品を並べ、顧客に夢をみせることで購買につなげる。これがデパートのビジネスでしたが、同様のことを安価で実現したショッピングモールにその顧客を奪われ、デパートビジネスは衰退していきました。
こうしてスーパーのショッピングモール化が全国に急速に展開することによって、品揃えときめの細かさで戦ってきた商店街も、徐々に顧客を失うことになります。ショッピングモールに入る専門店は大手企業が展開するものであり、品物の回転率が高く値段もやすいですし、品揃えそのものが多様です。小規模な商店街の品揃えにはやはり比べものになりませんので、結果的に商店街は衰退していきます。
さらに商店街のビジネスを支えていた最後の特殊な商品、すなわち産地直送品やこだわりのブランドなどが、やがて誰もが自由に変える時代が到来してしまいました。これが、ネットショップです。これによって商店街が最後の命脈としてきた特殊な商品やこだわり商品の価値が失われ、結局小規模店舗は閉店に追いやられてしまったのです。
ネットショップの出現によって、
消費者は日本中の特産品や名産品を手に入れることが出来ます。逆にそれらの生産者や商店は、販路を拡大でき、同時に流通コストを負担しなくて済みます。これは利幅の増大を意味しますから、多くの生産者や商店はその拡大を目指します。これによって地元の商店は見向きもされなくなりますが、同時に皮肉なことが起きます。そうです、スーパーマーケットそのものも相対的に価値を失っていくのです。産地直送の漬け物を手に入れた消費者は、もうスーパーでは漬け物を買わなくなります。行列の出来るこだわりのシチューを手に入れた消費者は、スーパーの棚を埋めるレトルトや固形ルーのシチューを買わなくなります。となるとスーパーマーケットは、これまで商店街が扱ってきた茶碗、、魚、野菜、電球、たばこ、お茶に商売を託すことになりますし、これがますます商店街を圧迫します。同時にスーパーは広い面積と多くの従業員のコストをこういった単価の安い商品でまかなわなくてはならなくなりますので、結局業績が悪化していきます。つまり商店街や百貨店のビジネスを奪ったスーパーは、商店街や百貨店と同じ運命をたどっているのです。これがイオングループをはじめとした大型スーパーすべての現状なのでしょう。
ではネットビジネスは盤石かといえば、そうでもありません。ネットビジネスの最大の問題は、時間的ラグとついで買いがない点です。今必要!という商品について、ネットショップは利用できません。となると日常の不便を、本格的にまかなうのはまだまだ難しいのです。同時にネットショップは、ついで買いが起きにくい特徴をもっています。近所の大型家電ショップでDVDレコーダーを買えば、ついでにDVD−Rを購入する方は多くなります。しかしネットショップでは、それが起きにくい特徴があります。同時にネットショップの選択理由は、基本的に価格となります。つまり売れるショップは価格が安い、すなわち利幅も小さいのです。逆にネットショップであっても利幅を確保する値付けをすると、顧客が寄りつかないのです。となれば、ネットショップも相当な淘汰が起きています。事実知名度を上げたネットの専門店は、ネットのショッピングサイトから退店し独自ショップを持つケールが増えています。知名度が上がればショッピングサイトを利用するメリットはなくなりますし、利幅確保のためにはショッピングサイトに払う手数料を削減しようとしているのでしょう。
この結果、結局一番つけが貯まるのは誰か、考えてみましょう。より安くより便利にということを追求した結果、結局不便になっているのは我々消費者なのです。身の回りからさまざまな商店街が消え、スーパーマーケットもなくなってしまう。ネット商店を利用するには、タイムラグがつきまとう。結局誰も得を出来ない社会ができあがりつつあるのです。近所のお年寄りの不便さをよりうみ出してしまっている、これが現在なのです。
ではこの状態を変えることはできないか。そんなことはありません。つまりネットビジネスとリアルビジネスの新しい融合を追求していけばいいのです。事実それによって立ち直ったアスクルや、ネット注文当日配送をめざすスーパーマーケットも増えつつあります。ネットという販路とリアルな商品の品揃えをつなぐことが、次への社会への課題ですし、我々IT業界に携わる人間にとっての宿題でもあります。
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今週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
・携帯電話 リサイクル競う ソフトバンク:来年度再生率80% KDDI:液晶リユース
・大正、糖尿病の新薬候補 来期にも第二相治験開始
・音響機器で後方確認 パナソニックが車載用 まず日産向け、市販も視野
・監視カメラソニー新作戦 アナ・デジ両用増設簡単 ハイブリッド型レコーダー
・NTTコミュニケーションズ 「プロ」育成へ5段階評価 スキルの空洞化防ぐ
・コピー紙オフィスで再生 1時間に150枚 機密も保持 シードが小型装置
・システム運用技術者派遣 半年〜1年 開発後の移行支援
・日本IBMが人員削減 年内に1000人規模(日経新聞)
さて来週は、どんな一週間なのでしょうか。