2月第2週目のWeekly reportです。
先日私の事務所の斜め前のやや交通量の多い道路横の敷地に、セブンイレブンが新規開店しました。1年ほど前まで、歩いて五分ほどの交差点に別の小さなセブンイレブンがあったのですが、なぜか突然閉店してしまいました。その1年ほど前には近所のミニストップも潰れてしまっていたため、近隣にコンビニがなくなり不便な生活を強いられておりましたので、今回のセブンイレブンの開店は本当にありがたいです。
とはいえいろいろと雑事も重なり、やっと昨日そのセブンイレブンに行ってみました。もともとその場所は文教堂という書店が入っていたのですが、これまた1年ほど前に廃業してしまいました。その後なにが出来るのかと思って見守っていたのですが、それなりの面積を持った土地だったため、駐車場が10台ほど入る結構大きなセブンイレブンになっていました。
しかし店の中に入ってビックリ。広い店舗面積の中には、壁面のラック以外に2本のラックがあるだけ。それも非常に背が低く、全体に閑散としたイメージのある店舗です。さらにそこに陳列してある商品にも驚きました。その2〜3割が「セブンイレブンブランド」のものであり、いわゆるナショナルブランドの商品が相対的に減っていました。窓際の雑誌と店奥の冷蔵庫こそ一般的なコンビニのレイアウトですが、それ以外のラックは「7イレブン」ブランドの商品が溢れておりました。また出口付近では、トレイにパックされたフルーツや野菜が箱に入れられ積み上げられており、いわゆるコンビニのイメージを覆す店になっていました。
実はこの数年、私の事務所の近隣から、セブンイレブンが次々に廃業され撤退しておりました。半径2キロ圏で、おそらく10店ほどのセブンイレブンが撤退しております。それらの店に共通するのが、店舗面積と駐車場です。即ち商店街にあったような駐車場のない小規模セブンイレブンが撤退し、その反面大きな駐車場を持ったセブンイレブンが、今回を含めて3店新規出店しています。それらの店を注意深く眺めたことはありませんが、おそらく今回のセブンイレブン同様品揃えがプライベートブランド中心になってきているのでしょう。
私の事務所のある相模原市は、都心から急行電車で40分ほどの新興住宅地が多く存在する街です。大半は高度成長期に建てられたものですし、結果的に現在は街中が老人で溢れています。商店街は次々シャッター化しており、開いている店も在庫のないヘアサロン、マッサージ、不動産屋、学習塾になっています。反面車で15分圏にはイトーヨーカ堂やイオンなどの大型店舗が複数あり、地元商店街から郊外型大型施設に商業圏が移り変わっている典型的な郊外都市です。
地元商店街の閉店は、売上の減少と商業圏の移動だけが原因ではありません。おそらく店主の年齢も問題の一つのようです。すなわち高度成長期に店を構えた商店の店主は、いわゆる団塊の世代です。その店主も60才を超え、跡継ぎもいません。売上も年々下がるしとりあえず店は自分も持ち物だから、店を閉めても生活は出来ます。つまり店主の高齢化が、商店街の店舗閉店の原因の一つとなっているのです。
このように近隣住民の高齢化がシャッター商店街を生み、同時にコンビニに求める機能を変えてしまったようです。車で訪れる若者は夜半を中心に購買を行いますし、その移動手段は主に車です。コンビニの売上げそのものは「酒酔い運転」規制の影響で落ちてしまいましたが、その直接原因としてコンビニが存在するわけではないので、酒類の売り方さえ気をつければ夜半の需要は単価が高く、ありがたいものなのでしょう。
逆に若者が働いている昼間は、老人需要にチャンスがあります。朝の早い老人世帯の朝食や昼食のニーズを取り込むことは、やはりビジネスチャンスとしては大きなものになります。団塊老人の特徴は、比較的外食が好きだと言うこと。つまりステレオタイプの老人とは異なり、スポーツや趣味を謳歌する世代であり、時間をかけてきちんとした食事をつくる、ということには比較的執着がありません。さらに老人が好きそうな昔ながらの煮物や煮魚といった日本食でなくても抵抗なく食事が出来ますし、新しいものが好きです。本来は近所の総菜屋やパン屋が取り込むべき需要なのですが、それらがシャッター化した今、できたて弁当や焼きたてパンを売るコンビニはチャンスになります。
しかしこうやって近隣の環境変化を考えてみると、セブンイレブンの変貌はそれだけが原因でないことに気づかされます。すなわち、経済不況がセブンイレブンのビジネスモデルも圧迫し、変貌を要求していることが想像できるのです。もともとコンビニの商品はライフサイクルが短く、売上に繋がらない商品は即時返品されるのが常でした。それでもメーカーにとっては貴重なマーケティング材料となりますから、返品ロスを覚悟してでも次々と新商品を開発し、それをメインブランドに育てるキッカケになったのでしょう。しかし昨今の原材料高と今回の経済不況は、メーカーのビジネスにも大きな影響を与えました。すなわち返品ロスは見過ごせない水準になっているのでしょうし、新製品の開発速度も落ちています。となると、これまでのようにコンビニは、自由に商品を返品することができなくなります。同時にメーカー・問屋サイドからは仕入れ価格の値上げ要求があるでしょうし、それはコンビニの利益を圧迫します。となるとその打開策として、プライベートブランドを中心とした商品展開で、返品と利益の問題を解消しようとする動きは、当然のことと思えてきます。
しかもしたたかなのは、この商品の生産を行うのはこれまでナショナルブランドをつくってきたメーカーという点です。自社ですべてを内製化する負担を抱えるのではなく、企画と販売をセブンイレブンが行いメーカーに製造を委託することで、両者のコストダウンと共存を模索しているのです。さすがセブンイレブンですね。
さらにこういった変化は、結局セブンイレブンのイトーヨーカ堂化、あるいは小型イトーヨーカ堂の出現を意味します。流通小売業全般が壊滅的被害を受けている今、イトーヨーカ堂におけるコンビニの実験は、新たなる流通小売業のスタイルを模索している
証拠なのかも知れません。
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今週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
・NEC「ハード回帰」正念場 半導体・携帯不振 2万人分削減 改革に落とし穴
・大衆薬「ネット販売連合」 安全の統一ルール視野 ヤフーや団体、販売規制牽制へ
・「放任」の代償 凍える日立 グループ総崩れ、最終赤字7000億円
・乱戦薄型テレビ 変わる競争軸 32型3万円 米で価格下落一段と
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・包装ラップのプラスチック刃 紙箱に接着、ノリ使わず
・補聴器、新市場を開拓 シーメンスヒヤリング、4シリーズ
・WiMAX KDDI系、26日開始 「高速普及」に両刃の剣 援軍74社、料金は横並び
・ワクチン 注射器不要 張ってめくってプチッ リンテックと南部化成
・プロジェクター手のひら時代 プレゼンなど手軽に大画面 参入続々 人気"映す"
・稼ぎ頭 テレビ神話崩壊 パナソニック 今期赤字3800億円
・44万円の差 ホンダの意地 新型インサイト発売 「エコ運転」が秘密兵器
・「名門」AOL漂流 グーグル、保有株売却を検討 無料サービスで遅れ響く
・アメリオCEO電撃辞任 レノボ、赤字転落で引責か 「国際化」を一時減速
・携帯機器の燃料電池 間近 まず充電用電源に 大容量化やコスト減必須
さて来週は、どんな一週間なのでしょうか。