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Weekly report
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 February Fourth week

 2月第4週目のWeekly reportです。

  先日iPhone向けサービスである「セカイカメラ」が発表されました。AR(Augmented Reality)という考え方を利用したサービスであり、簡単に言えばスマートフォンなどに映った画面に、付加的に情報を表示するものです。簡単に言えばターミネータなどのSF映画にあったように、画面に対象物の情報を文字や画像で表示するサービスです。これを使えば、陳列してある商品を画面に映すとその生産者や加工方法、素材など、これまで店員などが口頭で伝えてくれた情報を表示することが可能になります。その情報の詳細度や動画を使った情報も提供できるなど、さまざまな効果があります。さらにその情報は、個人が付加していくことも可能であり、口コミサイトを現実の世界にもってきたような効果を生むこと可能です。

 残念ながらテクノロジー的には、対象物の画像を認識してその情報を提供するものではなく、位置情報に基づいた表示ということのようです。つまりGPSの座標を利用して、細かに情報を表示するのがこの仕組みであり、移動してしまう対象物(たとえば個人の所有する自動車)の情報を、追っかけて表示するシステムではないようです。したがってGPSの届きにくい室内では、Wifiに使われている位置情報をつかむシステムを利用する必要があります。

 しかしながらその可能性は無限であり、私自身本当にワクワクします。ネット等で紹介されているように、名所旧跡の情報や商品の情報を表示できるということは、実はあらゆるビジネスで利用可能なことに気づきます。たとえば工場において、生産現場のポイントポイントにベテランのノウハウを付箋のように張っていくことが出来ます。工場の生産機械にメンテナンス上の注意点や手順を動画で表示したり、インストラクションマニュアルを詳細に参照させることも可能になります。事務作業の現場でも、電話のメモを貼ったりFAXのマニュアルを表示することも出来ます。
 もちろん通りにおいて、いろいろなお店のクチコミコメントを貼ることができますし、その情報を見ながら街を歩くことも出来るようになります。その商品が売り切れているのであれば、近所のどの店にならその商品の在庫があるという情報も貼ることが可能です。

 このようにこのサービスの可能性は無限であり、これをプラットフォームとした多様なサービスが生まれることは間違いありません。開発者がコンセプトの5%ぐらいしか実現できていないというように、今後ますます成長し、mixiのように次々と新しい機能を盛り込んで成長を続けるのでしょう。

 しかしこのサービスを調べている内に、このサービスの恐ろしい側面に気づき、背筋が凍りました。技術には常に、利便性や革新性といった「日向」の側面と、悪意や犯罪に繋がる「日陰」の側面があります。新しい仕組みは我々の気づかない「日陰」の側面を持っており、この日陰の存在がその技術そのものの存続を危うくしたり、新たなる犯罪や悪意を産み出すことになります。古くはQ2サービスがそうでしたし、インターネットも闇サイトやブログ炎上といった日陰を産み出してしまいました。
 もちろん私は「日陰」主義者ではありませんので、その日陰の側面があるかその技術を利用すべきではない、といった考え方はしません。同時に日陰をなくすことは、新たなる日陰を生むだけなので、単純になくすことが必要とも思いません。大切なのはその日陰を限定してコントロールすることであり、そのコントロールのあり方を検討することと思っています。インターネットは人類に無限の可能性を生じさせましたし、今後も多様な発達をするでしょう。そのことは人類に新たなる課題を与え、我々が進化するチャンスを得たことを意味します。ただし同時に日陰の存在は放置できないレベルになっており、それを世界的視野からコントロールすることが必要なことは、利用したことのある人間であれば誰もが感じていることのはずです。

 この新しいサービスの日陰部分は、ずばり悪意をもった情報をいかにコントロールするかです。たとえばこの仕組みを使うと、芸能人や犯罪加害者/被害者の家などに情報を貼られる可能性があります。さまざまな理由で匿名をつかって生活をしている人間に対し、そのプライバシーを侵す可能性が生じます。さらには現在その家が長期にわたる留守であることを、新聞配達員が貼ることも出来てしまいます。新聞や宅配便の誤配は減りますが、防犯上は危険といえるでしょう。
 さらにレストランにおいては、悪意を持ったクチコミを次々貼ることが可能になりますので、意図的に商売を妨害することが可能になることも考えられます。店主が自由にタグを削除できるとすると、クチコミの客観性は失われてしまいますが、逆に削除が出来ないとこういう問題が回避できなくなります。スーパーの食品に対しても悪意を持った情報を貼れるとなると、やはり営業に大きなダメージを与えることになります。

 このサービスの一番の問題は、その情報のコントロールが困難な点です。悪意を持ったスレッドやホームページは、その閉鎖によって情報がコントロールできます。そのアドレスさえわかれば、それを差し止めることは技術的には可能です。しかしながら今回の仕組みでは、場所という特殊な情報がキーとなるため、そのコントロールは難しいと思われます。仮に管理者がそういった情報をコントロールするにしても、日本全国、場合によっては全世界の添付情報をコントロールすることになるため、相当に情報のコントロールが難しくなることが予測されます。それらができないようにどのような仕組みとしていくのかがこのサービスの課題かも知れませんが、容易にこういった事態が想定される以上その対策は積極的かつ十分に行う必要があるでしょう。

 このように新しい仕組みは、我々が想像し得ない情報流を産み出し、そのコントロールが困難になる可能性があるということ我々は意識せざるを得ません。モラリティという利用者に頼った仕組みだけでなく、第三者的な公平かつ強制執行が可能な機関を設立し、新しい時代の脅威を少しでも軽減する努力を始める時期が、まさに今来ているのかも知れません。

 こういった世の中での私の役割は、「狼少年」に徹することと思っています。多くの人に軽視され笑われたとしても、それが起きないことを真に心に願いつつ、狼の脅威を叫び続けるしかないと思っています。

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 今週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。

・ゴルフ場に在庫車ずらり 販売不振・減産・・消耗戦へ 人員減でも教育徹底
・楽天「市場」不況かわす 前期最終赤字でも営業最高益 「巣ごもり」顧客囲い込み
・国内アニメ各社 海外で人材育成 人手不足深刻化 下請けから主力に
・バラスト水微生物処理 アタカ大機 韓国企業と販売提携 装置義務化控え参入
・ソフトウェア開発の"舞台”提供 ミクシィ、インフラ企業への脱皮 新時代の旗手生むか
・セブン&アイと新会社 NEC、ネット新事業創出
・東京都北区立中央図書館の蔵書管理 ICタグで点検迅速に
・きらめく携帯売り場 ノキア ヴァーチュ 販売
・ウィルコム「次世代」に賭ける PHS技術 中ZTEと提携 コスト競争力武器に
・システム管理 アジアで攻勢 印タタ系、データセンター建設加速
・GM再建 甘えの構造 米政府に1.5兆円追加支援要請 秩序ある破綻へ?
・USB対HDMI「標準化」競争 携帯機器巡り激突 次世代接続技術 小型化など課題
・アパレル 小杉産業破産 在庫「余剰体質」が致命傷
・中小開拓で復権 のろし 日本IBM「内向き志向」是正 業績低迷で奮起
 

 さて来週は、どんな一週間なのでしょうか。