3月第1週目のWeekly reportです。
医薬品のネット販売規制が話題になっています。今年の薬事法改正で、インターネットを利用した薬の販売が原則禁止となるようであり、テレホンショッピングやカタログ通販も同様に扱われるようです。その目的は薬の対面販売の徹底であり、薬剤師によりきちんと説明を受けて薬を利用すべきと言う趣旨に乗っ取ったものといえます。効果の強い薬はその利用法により重篤な後遺症が発生したり、誤った服用によって症状を悪化させる可能性があります。また薬の多用により症状を抑えていても、現実はより深刻な病状になっていることを気づかない可能性もあるため、それらを発見する意味で対面販売は大切といえます。もちろん目的外利用を前提とした薬の違法販売を防ぐために、これらの規制が必要という側面もあります。
しかし私自身は、この規制に反対です。まず効果の強い薬については、店舗のみ十分な説明が行えるという前提が気になります。揚げ足的にいえば、現実の店舗でもほとんど説明をうけることなく薬が買える、という現状が指摘できます。しかし発展的な論点から考えますと、「インターネットにおいても、薬の作用や副作用の十分な説明は可能ではないか」と私には思えるのです。薬剤師の問診が知識ベースによるものであり、店頭で受ける簡単な説明をベースとすると、ネットにおいてもこの仕組みを作り出すことは可能なはずと考えています。
なぜならIT機器のトラブルシューティング同様、YES/NO質問を繰り返すことで適切な薬を選ぶことも出来ますし、説明の動画や音声を聞いた後に販売画面に移らせることも可能なはずです。疑義のある場合やリクエストがあれば、メール等の手段で応対も出来るはずです。となると、対面販売で提供されるべき薬に関する説明やサービス提供は、ネットにおいても不可能ではないと思えるのです。またそれらのホームページ作成や販売に薬剤師が関与しているとすれば、その情報の適切性は保証されます。ましてや楽天やyahoo等のショップであれば、楽天やyahooがそれらの仕組みを作り出して各ショップとリンケージすれば、説明情報の信頼性や網羅性も上げられると思うのです。その上で楽天やyahooの薬剤師である責任者が各ショップを巡回し、違法販売や説明が不十分なサイトを指導するのであれば、ネット特有の問題は解消できると思われます。
深刻な症状を市販薬で抑えている人は、やはり自己責任の問題となります。これは対面販売で発見できるものでもなく、積極的な相談があって判明するものと思われます。となると、これを理由にネット販売を規制するのも根拠がなくなります。
日本では販売していない薬を外国から輸入する、という点についても、日本の薬の認可制度の問題を露呈しているだけと思いますし、それを効率化・迅速化することが大切で、ネット販売の問題とすり替えることはおかしいでしょう。現実に抗ガン剤や鎮静剤など、世界中で効果があるにもかかわらず日本では認可が遅れて販売できていない薬もあり、多くの方が生存のためやむなく輸入している現実があります。そのコスト保険が適用できないため高いのが一般的ですが、生存のためや人生の質的向上のため使わざるを得ない人もたくさんいます。それらを閉め出すためにこういった法律が作られるのであれば、それは一部の人間や会社の利益保護のためと疑われても仕方ないでしょう。
最後の論点としては、目的外利用を前提とした薬の違法販売です。たとえば一時前に流行った咳止めシロップの目的外利用などです。しかしこれは店舗においても発生する問題であり、ネット販売だから可能という考えは短絡的すぎます。むしろ決済情報や購入者履歴から危険性のある薬品の多数店舗/大量購入者を捜し出すことが出来る点で、ネットの方が理があるように思われます。となると、こういった購入者を捜せる法的な仕組みを作った方が、より確実に規制が可能になるはずです。さらにスパムメールの多くがED(Erectile
Dysfunction)薬などの勧誘メールですが、こういったものの輸入販売は別の法律で規制すべきものであり、これらを防ぐためにすべての医薬品をネット販売禁止にするという論理は乱暴すぎると思います。
逆にネット販売の利点を考えると、利便性とプライバシー保護の点があります。風邪薬ならまだしも、若い女性が水虫薬や育毛剤を購入することは、かなり心理的障壁が高いことは容易に想像できます。働く女性のうち、少なからぬ
数の女性が水虫に悩んでいると聞きますし、精神的負担の大きい時代のため、脱毛や薄毛を気にする女性も増えているそうです。
もちろん妊娠検査薬や避妊薬を購入することも気が引けるでしょう。そういった薬を男性店員のいる店で買うのは辛いことですし、恥ずかしいと思われます。ネット販売であれば、こういった問題は無くなります。さらに近隣に自分の必要とする薬が置いていない、場合によっては近隣に夜半まで開いている薬局がないのであれば、やはりネット販売は非常に重要な機会となるはずです。私としてはじっくり商品の検討が出来ることも、ネット販売のほうが便利と思えるのです。(正直
私も育毛剤の検討をしたことはあります。まだ購入しておりませんが...)
「単純に危ないからいけない」「違法な薬が海外から流入しているから、そのオーダー元となるネット販売はすべて禁止」という論議は、あまりにも
雑で幼稚です。楽天によれば、先新法米国は処方箋薬を含めてネット販売を認めている時代であり、それが世界の潮流です。時代の変化とともに、こういった法律の成り立ちからきちんと検討を重ねて、これからのあり方を検討すべきであり、その際には一部の利害者だけではない多くの人材を交えて検討すべきなのです。
こうやって考えていくと、薬品のネット販売規制はまだまだ検討すべきことが多いことに気づかされます。一部の感情的な論議で規制を行うのではなく、合理的目的や多角的な観点から新しい社会のあり方を検討すべきですし、そういった検討過程をすべての人に公開することが大切だと言うことを我々は忘れてはならないように思います。
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今週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
・攻勢サムスン ノキアは防戦 機能より割安感を強調
・オバマ医療改革 諸刃の剣 電子カルテかで雇用減も
・講談社、赤字76億円 前期、販売・広告落ち込む
・NTTコムウェア 入退室管理に電子タグ 防犯性向上も大量処理課題
・ナノファイバー 「塗る太陽電池」に展望
・未完の戦略図 重責引き継ぐ 本田社長に伊東氏 環境車開発急ぐ
・車載LAN 通信速度5倍 日産、次世代車に採用へ ハイブリッドなどの性能向上
・日本航空の整備システム 50万種の部品一元管理 ERP導入、作業スムーズに
・大衆薬ネット販売規制「結論ありきか」 阻止へ、楽天社長の本気 迫るタイムリミット
・国際線機内 携帯どうぞ ソフトバンク まず海外の2社の便で
・ソフトバンク 売れて憂う アイフォーン投入、都心で通信渋滞
・「緩まない」2重構造ナット製造 ハードロック工業 レールや橋梁 需要もがっちり
・「0円携帯」再び ”封印”はや解除 ”出血”も覚悟 春商戦、各社てこ入れ策
・全日空、アメとリストラ 社員持ち株、利益還元
・採用担当 相棒は盲導犬 日立情報システムズ 障害持つ学生に助言
さて来週は、どんな一週間なのでしょうか。