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 April Third week

 4月第3週目のWeekly reportです。

 経済不況の影響を受け、IT業界がいよいよ曲がり角を迎えています。

 米国においては、サンマイクロシステムの不振と身売りが騒がれています。今年に入ってIBMとの間で買収案が検討されましたが、買い取り価格の低さからサンマイクロシステム自身がこの案を放棄し、次の身売り先を探している状況です。しかし株価を見る限り予断は許さない状況のようであり、今後の動向が気がかりです。
 サンマイクロシステムといえば、オープンシステムの覇者であった企業です。大型汎用機の不振によりIBMが「save the whale(鯨を救え!)」キャンペーンを打ったときの、鯨を追い込んでいたのがサンマイクロシステムが代表するUNIX ORCA(シャチ)でした。皮肉にもそのキャンペーンで示されていたPC SARDINE(いわし)によって、UNIX ORCA(シャチ)も絶滅に瀕しているようです。もう一方のUNIX ORCA(シャチ)であるHPも決して状況がよいとはいえません。それどころか、最後に生き残ると言われたPC SARDINE(いわし)も決して楽観できない状況です。

 日本においては、名門ワープロソフトの開発元であるジャストシステムが、キーエンスと業務・資本提携を結びました。とはいってキーエンスが筆頭株主であり、キーエンスの配下に入ったことになります。キーエンスといえば測定器メーカであり、特にジャストシステムとのコラボレーション効果は見えてきません。この数年ジャストシステムが手がけてきたXMLやXfyテクノロジーをドキュメント等に利用する可能性はありますが、とはいっても事業として独立するだけのメリットはないようにおもえます。ということは、一時的に配下に入ったものの、今後はゆるやかな事業縮小の可能性があると思えます。

 このようにIT業界は、さらなる変化を始めています。しかしここで注意しなければならないのは、これらの変化が単なるコンピュータ機器のトレンド変化やソフトウェア企業の衰退ということではないという点です。すなわち情報システムそのものの質がいよいよ転換しつつあり、ユーザが情報機器や表計算・ワープロといったソフトではなく、サービスを求めはじめたと言うことです。

 ワープロが売れたのはワープロが打ちたいからではなく、仕事や生活で文章を作成する必要があるからです。しかしその文章は印刷するために必要なのではなくWebにブログを乗せたり、電子メールのコンテンツとして必要になっているだけなのです。となれば高機能のワープロや表計算といった単なるソフトではなく、目的に応じたサービスが要求され始めたと言うことであり、それをソフトウェアの組み合わせではなくサービスとして提供されることをユーザが望み始めたと言うことです。

 企業においても、同じことがいえます。かつて企業は、情報システムを利用するために高額なハードウェアを購入する必要がありましたし、その上で自社業務あわせたアプリケーションシステムを構築するのが一般的でした。そのためにセンターを構え、大量人数のシステム要員がその業務に従事するのが一般的だったのです。しかしバブルの崩壊とテクノロジーの進化により、こういった設備・建物やハードウェア、そして人を保有することに意味合いが薄れていきます。センターはそれらを保有するメーカから借りればよいですし、人も外部の人間で十分です。アプリケーションシステムにしても、ちょっとしたカスタマイズで済むパッケージシステムがたくさん登場しましたし、逆にPC上のアプリケーションシステムでもそれなりの仕事ができるようになります。やがてインターネットとの進化とともに設備・建物、ハードウェア、人はすべて外部に頼るようになり、その結果としてアプリケーションシステムさえも必要なくなるということに気づき始めるのです。つまり企業が欲しいのは業務を支援するサービスであり、逆にたくさんの資源を保有することはコスト面、運用面で負荷が高すぎることがわかってしまったのです。
 今後この流れは急激に進でしょうし、それがクラウドという言葉で説明される事象となります。SaaSのみならず、HaaSやPaaSによって自社なりのサービスを簡単に構築することが可能になり、その結果としてハードウェアやアプリケーションシステムが売れなくなっていくのです。提供されるサービスを自由に使いこなす。その時代が、いま急速に始まろうとしているのです。
 
 先日weekly reportでもご説明したとおり、自動車産業とまったく同じ現象が、我々IT産業でも始まっています。それを実現できるクラウド環境が充実しつつある現在、私の予想より早くIT業界も「サービス・コンテンツ」の時代が始まろうとしているのかもしれません。

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 今週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。

・在宅医療 ITで攻勢 GE・インテル提携 体調管理に専用端末 高齢化各国で展開へ
・ジャストシステム キーエンス傘下に 浮川社長、筆頭株主降りる
・電動バイク 原付2種クラス販売 和歌山ホンダが独社製
・セルフ式スタンド ガソリン以外の商品販促を支援 ジャパンエナジー PDAで効率営業
・携帯30年主役交代 主導権、「川下」にシフト 地殻変動、米で始まる
・ドコモ、携帯通販育成先導 1兆円市場に拡大期待 テレビ通販3位を買収
・身売り交渉IBMと決裂 サン、狭まる選択肢 生き残りへ他社にも接触
・炊飯器オシャレに変身 洗練デザイン競う 三菱電機 立方体、赤色も用意
・第一三共・塩野義 インフル薬、開発大詰め 年度内にも承認申請
・賢い送電網 スマートグリッド 「環境」の主役に グーグル参入、ソフト開発
・USEN「ネット大手」幻に 「GyaO」経営権、ヤフーに売却 ユーチューブ登場の誤算
・譲れぬ低価格 常識覆す日本製多様 素材から見直し 軽薄短小と両立
・体内で溶ける人工心膜 グンゼ 3ヶ月後分解 心臓手術癒着防ぐ 異物反応リスクも減
・節約型IT活用広がる 無償・割安ソフト/印刷業務を委託
・バイク便で買い物代行 セルート、24時間受付
・ヤフー 電子看板向け配信参入 ニュースなど提供 通行人の属性分析
・電動二輪車 2人で疾走 GMとセグウェイ 最高時速56km
・シャープ「亀山方式」決別 地産地消に転換 片山流、大きな賭け
・転機の水晶部品産業 「脱・携帯依存」へ技術磨く 小型・高精度で新用途
・「クラウド」商戦熱く IT各社、知恵絞る コンサル、接続機器も続々
・日本製造業 揺らぐ足下 工作機械受注 3ヶ月連続8割減 本格淘汰・再編か

 今週は、どんな一週間なのでしょうか。