11月第1週目のWeekly reportです。
先日、小学館の「小学五年生、小学六年生」の休刊の記事が新聞に載っていました。大正時代から続くこの雑誌の休刊は、出版業界の実情を表しています。もちろん私の記憶にある「小学五年生・小学六年生」とは誌面が劇的に違うのでしょうが、それでもその誌名が示すとおり、現代の子供には訴求しないタイトルではあります。幼稚園からTVゲームやインターネットに触れている彼らにとって、あまりに魅力のないタイトルでしょう。
もともと雑誌の誌面そのものは、想像力がない限り決して楽しめる内容ではありません。私が子供の頃は、雑誌の写真やイラストにさまざまな想像力を広げましたし、それが「〜ごっこ」につながっていったように思います。見たこともない南極の風景や大型タンカー、石油プラントや工場など想像を膨らませるたくさんの写真やイラストが掲載されているのが、それらの雑誌でした。もともと小学五年生・六年生もそのような性質の雑誌ですが、現代の若者に共通する事象である大量の刺激情報のなかで想像力そのものが衰えていますから、彼らにとってまったく魅力のない雑誌になってしまったのでしょう。小学校低学年であればまだ情報に触れる機会は限られますが、高学年になれば大人よりもインターネットを上手に扱います。となれば、これらの雑誌から休刊に繋がるのは仕方がないことなのかもしれません。
私は都度都度、出版業界の問題について考えを述べています。子供の頃から現在まで少なくとも年平均数百冊の書籍を読んでいますし、書籍や雑誌には今でも本当にお世話になっています。しかしメディアとしての書籍や雑誌は、このままではこの命脈がつきることは間違いありません。
CDが売れない音楽業界が生き残ったのは、音楽配信というサービスのおかげです。しかしその結果消費される音楽が増え、ヒット曲のサビだけを聞く若者が増えてしまっているのというのも事実です。CDには1曲のヒット曲と、奏者や作曲者の気持ちのこもったほかの10曲ほどの曲が入っています。ヒット曲を含んだアルバムCDが一枚売れるということは、その他の10曲の印税も入ってくることを意味しますから、奏者や作曲者には多くの利益が還元されます。しかしダウンロードでヒット曲しか選ばれなくなると、こういった曲が売れなくなってしまい、彼らの収入が激減することになります。経済的な余裕がなければこういった活動も続きませんから、音楽家にとっては辛い時代が始まったことを意味します。
逆に音楽業界の裾野は、個人のホームページ公開などで広がります。街頭でライブをしたりライブハウスで演奏するだけがメジャーになるキッカケではなく、ホームページをつかって自分の音楽を他者に伝える方法が現在はあります。もちろん街頭ライブやライブハウスの映像、場合によっては自分の演奏風景もインターネットの動画サイトで見せることは可能ですので、こういった新しいメディアが音楽業界の裾野を広げているのも事実なのです。
Amazonのキンドルに代表されるように、出版業界でもデジタルコンテンツ化が始まっています。どこかの会社が雑誌の画像を販売しようとしたことからもわかるように、デジタル化のニーズが確実に高まっています。しかしその反面、書籍そのものが売れなくなり、出版社がもたなくなる。こういった可能性もあります。デジタルコンテンツ化を考えると著者と編集者と校正者だけがいればいいことになりますので、企画から営業、印刷、運搬などの業務を司る出版社という存在そのものが必要なのか、本当に考えなければならない時期に来ているのかもしれません。どこの出版社も極めて経営的に苦しい時代ですから、新しいビジネスモデルを誰が考えつくのか、本当に興味がつきないところでもあります。
「書籍はなくならない!」確かにそのとおりでしょう。しかし現在のような紙媒体だけを見つめていると、以外に早くその世界はなくなってしまう可能性も高いように思います。米国では新聞業界からその淘汰が始まっているようですが、日本の紙媒体産業もRFIDなどの消極的な手段だけではなく、本格的に新しいビジネスモデルを追求する時代が来ています。
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今週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
・進化するネットマーケティング クーポン、顧客に直送 マクドナルド会員1500万人
・企業の国際会計基準導入 TIS、300人体制で支援 ERP構築 大規模案件にも対応
・QRコード、部品に打刻 製造情報不要 針9本で速度五倍 セイコープレシジョン
・電子ペーパー端末開発 フルカラーと折り曲げ型 ブリヂストン
・小学五年生、小学六年生 小学館 今年度で休刊
・ベンツ小型化 投資拡大 モデル数倍の4車種に 生産能力を増強
・「米経済、拡大始めた」 オラクル社長 ITの将来語る
・ヤフー”買い物”生かす Gyaoやデータセンター 7〜9月、増収増益 広告持ち直しの兆し
・HDD、SDDおハイブリッド化 東芝再発信 対サムスン、決戦に備え
・スタバ850店に無線LAN設置 NTT、来年度末までに
・先行リコー追うキャノン 消耗品→情報システム 販売源不振 モデル転換
・iPhone企業に浸透 ソフト拡充、セキュリティ強化奏功 機能の充実課題に
・変革の雄か一夜の夢か 米VBフィスカー、GM旧工場買収 重荷背負い環境車攻勢
・NEC,最終黒字へ総力 今期営業利益予想を引き下げ クラウドに資源集中
・携帯OS「シンビアン」普及団体 富士通、中核メンバーに
・日本のCIO 「クラウド重視」五割 ITの重点課題IBM調査 世界全体では3割
・USBの新規格高速化の波 HDD性能引き出す コスト高く普及は先
・HV、EV用 疑似エンジン音装置 コアテックシステム 「義務づけ」にらむ
・任天堂、業績急ブレーキ ”ドラクエ"発誤算の連鎖 「奇跡の成長」には材料不足
今週は、どんな一週間なのでしょうか。