このところ大掃除や机回りの整理などの片付けのかたわらテレビをつけている時間が増えましたが、例年に比べ特徴的なことに気づきました。年末年始だからということもあるのでしょうが、番組の編成に不況の影響を色濃く感じたのです。
まずは年末ですが、日中は再放送ばかりでしたが、これは通常のことのように思います。しかし大晦日は、特徴的に感じました。例年紅白歌合戦はまず見ないので、例年通り格闘技を見ていました。しかしこの番組の長さは6時間ほどもあり、これまでは21時頃から3時間程度に比べ倍近くに長くなっています。それだけ多くの試合を放送するということなのでしょうが、それでも通常は同じぐらいの試合数を2〜3時間程度で放映しています。さらに民放ですのでコマーシャルを放映しますが、同じコマーシャルがヘビーローテーションで流されていることにも驚きました。スポンサーはパチンコメーカーであり、大晦日のゴールデンタイムをほぼ一社で5〜6時間買い取っていることも本当に驚きです。
明けて新年も、本当に一つ一つの番組が長い長い。ゴールデンタイムに3時間番組はざらですし、本当に長いのはやはり5〜6時間です。これまではテレビ東京などが、年末年始に時代劇を12時間連続、というような放送を行っていましたが、今年は他の民放もこぞって5〜6時間の番組が続きます。内容もいわゆるバラエティばかり。出演しているのはお笑い芸人が中心であり、変わり映えせず本当に呆れてしまいます。日中の時間は再放送が多く、ドラマも韓国ドラマが多く目につきました。
これらはすべて、これまでテレビ番組にコマーシャルを提供したスポンサーが撤退したことを意味するのでしょう。すなわち昨年来番組のスポンサーを担う企業が減っており、仮に続けるにしてもその提供金額も大幅に減っていると思われます。その結果テレビ局が出した結論は、一本あたりの番組の時間を長くして、製作コストの削減を図るということのようです。スタッフや出演者を考えた場合、一時間番組を2本作るより、二時間番組を1本つくったほうがコストが安くなることは容易に想像がつきます。その結果、番組の本数が減り、結果として一番組あたりの放映時間が長くなったのだと思われます。さらにドラマはセットやロケのコストがかかるので、バラエティが多くなります。一番安上がりなのはグルメ番組でしょうから、そういったセットすら必要のないバラエティ番組が数多く見られました。
さらに驚いたのは、過去の放送の名シーンを集めて半分以上の時間を費やし、その後ほんの一部だけ新編を作成し放映したドラマや、正月番組のダイジェスト番組などがあったことです。制作費を削減するためにドラマの放映時間を短くし、大半の残りを過去の放送シーンでカバーするという手法には本当に驚きです。また正月のバラエティ番組の賞味期間(再放送が可能な期間)が短いことから、10日頃に正月番組のダイジェストをつくってしまうところには、驚きを越えて呆れてしまいました。
もう一つ気がついたのは、ドラマ製作に協力する企業数が増えたことです。エンドクレジットの最後のほうは、映画以上に協賛企業の名称が出てきます。つまりドラマ中に利用される多くの商品は皆、こういった企業が貸し出した、あるいは提供したものになっており、事実上ドラマ内でコマーシャルが行われるようになってきているのです。
こういった状況が不況の影響が強い今年だけに限定されるいか、という点が今後の課題なのでしょう。私は不況が落ち着いてもスポンサーを控える状況は続くと思われますので、放送局側がビジネスモデルを変えざるを得ないのではないか、という懸念を持っています。つまりスポンサーをつとめる企業側としては、本当にCMの効果が高いのかという点を考え直さざるを得ない状況に来ていると言うことです。若者を中心として、テレビをテレビで見ない世代が徐々に増えています。違法・適法は別にして、PCを利用したネット配信によって番組を見るため、コマーシャルは見ないでしょうし、視聴時間も様々です。となると、番組や放送時間をベースに割り出した視聴者層とは一致しない世代が番組を見るため、コマーシャルを見られたとしても効果は薄れます。(早朝にお酒のコマーシャルを試聴したり、男性が女性化粧品のコマーシャルを見ても、効果は低いですよね...) さらに中年以降の世代も、HDDレコーダを利用して録画された番組を見るのでしょうし、そうなるとコマーシャルをとばしてしまいます。となると、コマーシャルによる商品や企業の認知度向上を目指しているスポンサーにとって、テレビというメディアを考え直さざるを得ない状況になるのです。
放送局側は、インターネットによる有料のオンデマンド配信を試行していますが、コマーシャル付きで無料で見ることの出来る放送を、わざわざ有料でみる視聴者も多くはないと思います。となると、決定的な決め手になることは難しいのではないか、というのが私の考えです。BS放送を中心にショップチャンネルが多すぎて問題になるように、こういった安直な方法しかとれないのが現状のようです。
最後の手は試算である過去の番組の切り売りであり、とうとう1970年代のドラマですらDVD化されて安価に販売されるようになってきました。
こうして不況の影響は、プレIT(ITが出現する前の時代)のビジネスモデルを崩壊させようとしています。この波にのまれるか否かはそれぞれの業界や企業の問題ではありますが、それに変わる新しいビジネスモデルを我々ITエンジニアがどのように支援するか、これが我々の課題に思えてなりません。その意味で、Amazonのキンドルと新聞社の関係は、新しいメディアのあり方を占う一つの試金石になると私は考えています。であれば我々はなにを提供すべきか、我々のビジネスチャンスは確実に広がっているのです。
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先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
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・WOWOW加入者増好感し株価上昇基調 "番組力"で顧客引き留め
今週は、どんな一週間なのでしょうか。