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Weekly report
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 March First week

 なんだかんだと忙しい毎日が週末にまでずれ込み、ホームページの更新が遅れ気味です。月曜日のヒット数が高いので、楽しみにされている方が多いのはわかっているつもりですが、なかなか時間の確保と最適配分というのは難しいものです。

 さて先日、IBMが旧PWC(プライスウォーターハウスクーパース)を買収して設立したIBMビジネスコンサルティングサービス社(IBCS)を、吸収・統合することを発表しました。これで歴史あるプライスウォーターハウスコンサルティング社とクーパース&ライブランド社の残滓が完全に消滅することになり、C&L出身者の私としては本当に感慨無量です。

 この動きは、IT業界の新たな潮流を明確に示しています。この数年日本のSIerを中心に、コンサルティング会社を買収する動きが起きました。たとえばヨーロッパのコンサルティングファームである「キャップジェミニ」はNTTデータに買われ、ザカティーという名前を経て現在はクニエというコンサルティング会社になっています。かつてのデロイトトーマツコンサルティングは、ブラクストンという名前を経てアビームコンサルティングとなり、NECに事実上買収されて今日に至っています。このように、コンサルティング会社そのものがIT企業との関わりを強くしているのは事実ですし、コンサルティング会社もIT分野に積極的展開するのが常識となっています。つまりビジネスのインフラとしてITは不可欠になっただけでなく、戦略展開上もITを抜きにビジネスを構築することは不可能になったことを意味します。
 反面、コンサルティング会社がSIer化することで、コンサルティングサービスの質の低下を招いてしまっているのも事実のようです。事実某超大手コンサルティングファームでは、その大半のコンサルタントがSE化してしまい、コンサルティングサービスを提供できるベテランを再募集しているような状況となっています。

 今回IBMがこういう動きに出たことは、いよいよ上流工程の戦いが次のフェーズに移ったことを意味していると思います。もともとコンサルティング会社は、企業の戦略やビジネスの観点から問題点を整理し、より飛躍する、あるいはより効率のよいビジネスを行うための様々なアイディアを提供することが業務でした。そのアイディアを実現するのはSIerの仕事であり、その意味で仕事そのものは棲み分けられていました。
 しかしいつしか両者の関係は悪化し、アイディアを実現できないSIerへのいらだちがつのる、あるいは出来もしない机上の空論を繰り返し失敗の責任のみを押しつけるコンサルティング会社への不満が大きくなり、やがては両者がお互いの地位を狙う状況になっていきます。

 このような状況を劇的に変えたのは、ERPの出現です。ERPによってコンサルティング会社は、SIerに頼らなくても情報システムの構築が可能になりました。その結果多くのコンサルティング会社はERP会社と提携し、システム構築の市場を奪っていきます。逆に市場を侵食されたSIerは、コンサルティング会社が担当していた最上流の世界を目指すことになります。そこで自社でコンサル部隊を育成する方法以外に、既存のコンサルティング会社を買収する方法がとられました。しかし買収後も上流工程を遂行できるというコンサルティング会社のブランド力を残すため、あえてSIerの名前を前面には出さないのが通例となっていきます。

 しかしここに来てIBMがIBCSを吸収することを決めたのは、上記の状況が変わったことを意味します。その理由はおそらく、クラウド化です。つまりクラウドになると、既存のシステム構築を行ってきたSIer側のチャンスはより小さくなり、反面コンサルティング会社側のメリットがより大きくなるということなのです。つまり両社を分離していると、コンサルティング会社側のブランド力と仕事量はますます上がるでしょうが、実際のシステム構築部分について仕事量が減り、SIerのブランド力がより下がってしまう可能性が高まってきたのです。となれば、両者を分離して持つメリットは失われますから、両者を一体にする必要が生じます。となれば、規模と伝統に勝るSIer側のブランドを残す選択となるのです。

 この動きの成否を予想するのは時期が早すぎます。しかし今回の吸収統合から垣間見えるのは、クラウドというIT業界の新たな潮流が、本格的にシステム構築の主流となっていくことなのでしょう。同時にそれは、私の恐れる世界規模のSIerの再編を引き起こすでしょうし、その中で日本のSIerやIT業界が生き延びることが出来るのか正直不安です。しかしこれが今起きている現実ですから、我々はそこから目を離すことなく、次の世界を早急に描き自らの体制を立て直す必要が生じていいるのです。

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 先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。

・クラウドでコスト半減 財務諸表の国際標準デジタル化 宝印刷 国際会計基準適用にらむ
・米PC大手 業績明暗 HP:増収 デル:減益続く 規模の差、価格競争が直撃
・中国国産映画大国目指す 映画館建設や3D政策検討 政府も育成を後押し
・NTT,情報漏れ防止 スマートフォン シンクライアント化
・基幹システムもクラウド MS、国内で本格展開 NECなど50社と連携 富士通「自社版」も投入
・電気自動車の充電器 オートバックスに設置 東京・大阪などで試験運用
・介護用食品 集まる期待 在宅向けに冷食通販:マルハニチロ 強みの野菜で新商品:カゴメ
・「全日空と共同運行検討」 コンチネンタル 羽田−グアム線 米で申請
・売上高、ピーク時の6割 講談社 2期連続赤字(前期) 社長交代「環境整わず」
・障害、予兆検知し対応 クラウド情報システム エラーパターン解析 富士通研
・原発、新興国向け80基目標 韓国、価格・安全性で訴求 人材確保・再処理には課題
・エイズ、今や”慢性疾患” ワクチン開発手探り続く
・太平洋セメント 国内3工場生産中止 生産能力、370万トン分削減
・ニッセンHDが3カ年計画 ネット通販、中国を開拓 経常益倍増へ提携拡大も
・「日本経済新聞社 電子版」来月23日創刊 ネット時代の新メディア 信頼の情報 即時に
・PCに薄日でも先行き不透明 国内出荷額1月増加 国のIT整備策 学校「特需」大きく
・ITサービス国内市場規模 1%減4兆9777億円 IDCジャパン調べ 今年、2年連続前年割れに
・システム2子会社合併 日立、事業効率向上図る
・日の丸連合 3つの難題 NECエレ ルネサスと合併、総会で承認 再生へ産みの苦しみ
・日本IBM IBCSを九州統合 コンサルとシステム構築 一貫対応で機動力向上
・システム品質「見える化」 NTTデータなど6社が指針 顧客と認識ズレ解消
・MSオフィスに無償のウェブ版 通常版と{100%互換」 出先で利用想定、機能絞る

 今週は、どんな一週間なのでしょうか。