チリの大地震のように、自然界を含め世界規模で大きな変化が起きています。今回のチリ地震で被災された方々に心から御見舞申し上げたいと思いますが、日本の裏側で起きたこの自然現象が、ここまで日本に影響を与えることに本当に驚きます。地図ではわからない地球の裏側で発生した津波が、球形の地球を基に考えるとその影響が最終的にすべて日本に集まるということに、本当に自然界の波及の姿に驚かされます。ビジネスの世界も、こういう観点で眺めると本当に大きなうねりがいろいろな形で世界に波及するのでしょうね。
さてこのところ暇があれば品質について考えていますが、今週いくつかのヒントを新聞で見つけました。
まずは日本的品質のあり方です。日本は世界でもトップレベルの、品質大国ということが出来ます。おそらくそれは国民性にあるとは思うのですが、すべての製品や機能において完全・完璧を常に目指すのが日本人の特性のようです。同時に開発技術力が背景となり、最高の機能を持った高品質の技術を製品に盛り込み提供するのが、日本の製造業のあたりまえになってきました。しかしそのレベルが行き過ぎれば、顧客という観点が少しずつ失われていき、顧客不在の技術競争だけが製品の基本となってしまいます。
その最大の弊害は、コスト増です。顧客の観点から必要性のあり/なしを考えずに、その時点で考え得る機能をすべて高品質で搭載すれば、当然製品の価格は跳ね上がります。同時に耐久性の観点、利便性の観点、網羅性の観点などさまざまな観点からすべての機能や性能を盛り込めば、顧客にとっては確実に不要な機能や性能が発生します。同時にそれらをすべて機能させるためのさらなる機能や品質も要求されることになるため、幾何級数的にコストが上がってしまうのです。結果として、その製品を購入する顧客が、すべてのコストを負担せざるを得なくなるのです。
この状況を変えるために、我々はもう一度製品の機能や性能をもう一度見直し、何が顧客にとって必要なのかを考える必要があります。考え得るすべての機能を無条件に製品に具備するのではなく、もう一度それぞれの製品に絶対必要なもの、付加的にあれば便利なもの、思いつきレベルで特に必要のないものを棲み分けていかなければならないと思うのです。これまでの携帯電話でもわかるとおり、すべての機能を使ったことがある方は少ないと思われます。となれば、もう一度それを見直し、それらを再検討する必要があるのです。
さらに理想的には、顧客が自ら必要な機能を選択出来るようにすることが大切と思います。必要な機能を顧客が選択し、そのコストを負担する。この、ごく当たり前のことを、我々はもう一度考える必要があるのです。さらにそれぞれの機能において、どのレベルの品質を求めるかも選択できることが理想です。とりあえずあまり使わないからそれほど高い品質要求しない、あるいは数回の使用に耐えればよい、といった選択を顧客がすれば、相対的にコストは下げられると思われます。
さらにこういった仕組みを作ることが、世界進出のカギになります。世界は日本の最新技術に憧れますが、コストの問題や必要性の観点から、日本とまったく同じである必要はないケースが多いと思われます。ましてすべての機能を盛り込めば極めてコストが高くなりますので、その製品そのものを購入できないことになるのです。となれば、それぞれの国や企業の事情によってそれらを選ぶことが出来れば、現在よりずっと安価に製品を購入できるため、世界進出の足がかりになるのです。さらにそれらの機能を徐々に追加できるのであれば、国や企業の成長に伴って継続的により多くの機能向上を行うことが出来るようになり、継続的な発展すら望めるのです。
こうやって品質を考えた場合、我々IT産業に大きなヒントがあることに気づくはずです。上記を実現する方法こそクラウドであり、日本がそのアイディアをきちんとまとめサービスとしてラインアップをきちんとつくれば、世界に進出することは確実可能になります。しかし製造業と違い新しい機能やサービスを産み出すモチベーションが低いことが、最大の問題となります。となれば、その両者を強めていくことが、IT産業が世界で戦い抜く一つのヒントになることは間違いありません。
リーマンショック以降韓国が強くなってきているのは、日本の製造業の追撃をやめ、その視点を切り替えたことが大きい要因のようです。日本の製造業はもう一度自らの戦い方を見直し、品質のあり方を考え直さなければならないと考えます。同時に我々IT産業は、新たな世界に向けた確実な準備を始めなければならないのです。
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先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
・総務省「ICTタスクフォース」国際競争力強化を議論
・デザイン家電 量販店でも リアル・フリート まず都市部 ヨドバシ、ビックの20店
・手軽に携帯、気軽に投稿 小型ビデオカメラ ソニー:PCに本体直結 三洋:厚さ半分、操作性向上
・サイバー攻撃想定し訓練 「携帯普通」「金融市場閉鎖」 ワシントンの民間団体
・プラザクリエイト、正社員拡大 接客向上へ人材確保
・若手社員の等級簡略化 NTT 中長期視野醸成狙う
・平らなキーボード 病院など向け 東レ・ミネベア 拭き取りで除菌
・トップへの提案力強化 日本IBM、コンサル組織再編 戦略部門 数百人規模に
・ICカード、厚さ0.28ミリ 大日本印刷 非接触型、1枚50円と安く
・医療、健康 ITで支援 血圧を自動計測/体組成計に連携機能 医療法の制限拡大の壁に
・自己資本率60%超 オリエンタルランド 将来の投資に備え盤石
・防犯装置など無線機器 電池交換せず数年作動OK NEC 信号回路改良 電力1/3に
・タワーレコードに出資 セブン&アイ 持ち分法適用に
・TIS、中国で運用代行 情報システム データ拠点自前で新設 品質、安全、日本並み
・ヤマト運輸の配達員支援システム 3種の電子マネー対応
・中国・大連 ソフトウェア売り上げたか25%増 今年計画 外資ITを後押し
・中古車レンタル カーセブン参入 3時間700円から FC展開 初年度30店計画
・米社に敵対的TOB アステラス「営業力狙い」 買収成立は不透明
・フェリカ、4cm角 キーホルダー型、加工容易に
・サン互換機テコ入れ 富士通高性能サーバー オラクルと連携強化
・写真・音声、クラウドで管理 エバーノート、日本版開始 ドコモやソニー 対応製品、今春から
・介護施設運営会社 倒産相次ぐ 新規参入組、苦戦目立つ 大手集中の傾向
・電子書籍46%希望 有料オンライン・コンテンツ利用 ニールセン、世界調査
・日本勢、存在感薄く 欧州IT見本市「CeBIT」 躍進目立つ中国勢 電子端末や3D装置が話題
・中国側から提案目立つ 日中のシステム企業、IT連携加速 自国市場開拓 先進の日本製活用
・多様な発想に期待 文科省、世界から頭脳募る 研究開発人材の開放化カギ
今週は、どんな一週間なのでしょうか。