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Weekly report
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 March Fifth week

 激動の2009年度ももうすぐ終了し、暗雲が晴れない2010年が始まります。

 リーマンショックの影響がIT業界にも大きな影響を与えた2009年でしたが、その影響はその他の要因とあいまって2010年にもさらなる影響を与えそうです。

 要因の一つとして考えられるのが、クラウドの普及です。クラウド業者の拡大とともに、SaaSをベースとしたクラウドはもはや当たり前となりつつあります。その反面既存のアプリケーション開発やパッケージシステムの売上は確実に下がるでしょうし、IT市場そのものが収縮します。さらにクラウドの利用者が自社独自業務の少なさに気づくと同時に、少ない独自要求があってもそれは自社だけの独自性ではなく、業界独特のものであることがわかっていくでしょう。そうなれば、SaaS業者もその業界の独自性に対応した修正サービスを提供してくるでしょうから、ますます自社でアプリケーションシステムを開発・維持することの意味合いが薄れていくでしょう。さらに導入後の法令や業務変更に対する保守コストや手間の少なさが認知されれば、多くの企業がクラウドに移行するはずです。
 こうして「クラウドの普及」「独自性の解消」「保守コストの低減」という要素がサイクルとして回り始めれば、間違いなくITに対する大きな流れ、おそらくは主流となるため、クラウド化が従来の一企業向けのアプリケーション開発や保守業務市場を縮小していくことは避けられないと思います。さらにこのことで、IT企業が顧客との接触の機会を相対的に減らしていくため、新しいシステム開発案件の種を探すことをさらに難しくします。その結果として、IT企業の売上が大きく下がっていくと思われるのです。

 もう一つの要因は、景気後退に伴う受注価格低下です。発注側企業も景気後退の影響を大きく受けているため、当面発注されるシステム化案件の原価圧縮要求は相当に強いと思われます。IT企業側としては低価格の案件でも、受注できないよりはましであるため受注せざるを得ません。その結果採算を出すためには、人手のかかる開発工程をオフショア化せざるを得なくなります。となれば、下請や孫請け業務を奪っていくことになりますし、元請け企業でも技術レベルの低い若手技術者の手が余ることになります。
 さらにこのことは、若手技術者の経験を得る機会を奪っていくことになります。プロジェクト期間の短いオープンシステムにおいて、経験は非常に重要な資産となります。なぜなら、技術変化が激しいため、経験の有無が開発効率や精度を変えてしまうからです。さらに進化する技術についていくためには、不断の経験が必要となりますが、仕事を失うことはその経験を中断させてしまうのです。

 このようにIT企業を取り巻く環境は厳しくなる一方ですが、この流れを変えられない以上、ITに係わるすべての仕事のあり方を変えるタイミングが来ているといえるでしょう。私の興味は、クラウド化に伴ってIT企業の人材像をどのように考えていくかです。私自身昔から提唱しているとおり、大きなITの変革の中では要求されるIT技術者像が変わっていきます。必要になるのはビジネスに近い上流工程を担当するIT技術者と、確たる技術を使いこなす高度なテクノロジストです。ネットワークやデータベースといった高度なテクノロジストになるためには、その発祥の中心となる欧米に拠点を持たざるを得ませんし、IT企業にとってはその人材を育成するよりも、海外から来日する人材を積極的に活用するほうが投資効果も高くなります。反面オフショア開発があってもその要求が日本で発生するのであれば、ビジネスよりの上流工程を担当するIT技術者(コンサルタント、プロジェクトマネージャ、ITアーキテクト)は、今後の日本市場において大きな可能性を秘めています。その人材育成を本気に考えていけるか、同時にそこに向かわないIT技術者の位置づけをどう考えるかが、いままさにIT企業に求められているのです。

 この本気度を示す企業が、どれだけ日本に現れるか....これが今後の日本のIT業界の方向性を決めていくことは間違いありません。


P.S.

 .以前このページでもご報告した心を壊していたO氏が、本格的に現場プロジェクトに復帰されたようです。そのプロジェクトのテーマが、私も最大の注目している「AR」! 豊かな才能をもったO氏が、その豊かな発想で新しい世界を築かれることを心から楽しみにしていますし、私も想像し得ない無限の扉を開かれることをフューチャリストとして願っています! ARに関してはたくさんのアイディアを持っている私としては、それを実現できる機会は本当にうらやましい!!

 決して無理せず、身の丈・心の丈を念頭において、新しい世界をお楽しみあれ!!

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 先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。

・eラーニング 掲示板・チャット追加 富士通ラーニング 講師・社員と交流
・マイクロソフト「フラッシュ」追撃 OS・機器によらずコンテンツ再生 開発ツール無償提供
・日本IBM、売上高1兆円割れ IT投資の抑制響く
・効率優先、シンボルに幕 VW「ニュービートル」生産中止 環境基準対応も難しく
・グーグル"長城"越えられず 中国本土の検索撤退 拠点縮小の可能性も
・スーツ型ロボット 触覚センサー全身に1856個 東大、力の大きさ測定 介護・スポーツなどに活用
・活路求め31社集結 電子書籍出版社協会が設立総会 紙との相乗効果狙う
・1か月で受注1万台 本田「CR−Z」 月間販売目標の10倍
・地域WiMAX、普及へ一歩 UQコムとの相互接続に指針 利便性向上尚課題
・オーディション知恵絞る レコード各社 異業種連携やネット駆使 消費者アピールも
・地銀向け勘定系、クラウド型で NEC、3度目の挑戦

 今週は、どんな一週間なのでしょうか。