全世界でiPadの話題や人気が高まっている中、Apple社は次世代のiPhoneを発売することを発表しました。これまでのiPhoneとはデザインを大きく変え、まさにiPadの小型版というデザインに仕上がっています。私の望む両者を合体するアイディア(iPadのなかにiPhoneが格納される)が実現できるほど、薄くスマートなデザインであり、予約を含めてまた市場が活性化しそうな雰囲気です。
日本におけるiPhoneですが、スマートフォンシェアのなんと7割以上を握っているそうです。このところ確かにiPhoneユーザが増えていることを、駅や電車、町中で感じるようになりました。従来の携帯電話とは大きさが違いますし、インターフェースの特徴から操作も少し違いがあります。したがって他のアンドロイドやHTC等のスマートフォンと間違えることはないため、本当にシェアを握っているのでしょう。
最初は話題性だけだったはずですが、やはり発売から2年たってユーザが増えたということは、間違いなく製品としての魅力があるということです。毎度申し上げますとおり、iPhoneの工業製品としての性能は、他の機種に比べてたいしたことはありません。画面の精度や大きさは言うに及ばず、カメラの性能や機能も日本の携帯電話の2〜3世代前のものですし、モーションセンサーもブルートゥースも目新しいものではありません。唯一タッチセンサーが二点で反応することが目新しいとは思いますが、それとて他社もすぐにまねられる機能です。つまり2年もあれば技術的にはすべてまねることは可能なはずなのですが、あいかわらずこれを超えられないというのが事実です。
何度も申し上げてきましたが、結局違いはインターフェースを中心とした感性品質の実現と思っていますし、この普及の状況を考えるとその考えがますます強くなります。なぜかといえば話題性でiPhoneを購入しても、感性品質などの引きつける要素がなければ操作性の悪さのみがとりざたされ、結局その周りの人間は選ばなくなると思うのです。となれば普及すればするほど売れなくなる、という状況が始まるはずなのですが、そうはなりませんでした。逆に周りが使いだせばだすほど、iPhoneをほしいという顧客が増え、結果として現在の状況を生んだと思うのです。
もちろんのことながらそこには、iTuneストアを中心としたシステムのうまさもあります。機器の値段はそれなりでも、その後安定的な収益を上げることができる。まさにかつてのSONYが考えたビジネスモデルを、現代風に上手に運営しているのがApple社です。日本が考えたビジネスモデルは世界に通じるのに、それを世界に展開できなかった多くの日本の経営者は、後の世代に何を残したのか本当に考えてしまいます。
さらにこうやってiPhoneやiPadが売れる状況を見ていると、複雑な気持ちがわき上がってくるのも事実です。この製品のデザインとアプリケーション開発はアメリカ、部品は台湾や韓国、製造は中国が行っています。となれば、全世界でこの機種が売れたとしても、日本企業には大きな見返りはありません。こういった高機能製品の中央部品は日本、高精度・高品質な仕上げは日本、ということが、とうとう過去になってしまったようです。製造大国が製造を捨てたつけが、徐々に後の世代にのしかかり始めています。かつてのイギリスのように、斜陽の帝国に落ちぶれているのが現在の日本ということを、強く感じさせられてしまいます。
政治が変わるこのタイミングで、日本のすべての人間がこの危機感を上手に反転させる努力をすることが強く望まれています。
ガンバレ! 日本!!
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先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
・iPad向け顕微鏡 スカラ 無線で接続 250台同時に表示
・W杯日本戦を2劇場で上映 TOHOシネマズ
・クラリオンブラジル メキシコ製ナビで無関税
・脳の意図、電位で読み取り 神経細胞 玉川大とケンブリッジ大 脳波や視線頼らず
・小型拠点、3年で1.8倍 佐川急便 集配地域、きめ細かく
・電子看板に参入 グリーンハウス 小型端末、価格半額に
・iPad基幹部品 サムスン、専用LSI製造 アップルの戦略支える
・静岡大学の新情報システム基盤 クラウド、形態使い分け もっとも安価なサービス選択
・原油流出食い止め、一定効果も 英BP、解決への道険し 時価総額6兆円減
・ビールサーバー電気・氷冷両用 サントリー種類 安定稼働で商機逃がさず
・リンゴの魔法、日本勢恐々 新型iPhone登場 デジタル家電に挑戦状
・スタンド、生存競争熾烈 EVインフラ始動 サービス重視へ転換急ぐ
・有機EL再び光 ソニー、大型化に道筋
・電子看板商機くっきり パナソニック:世界最大152型 サムスン:業務用で巻き返し
・タッチパネル、日進月歩 触れずに操作 タッチセンサーと一体
・JR九州とIT合弁会社 印パトニ
・絹から骨の再生材料 農工大・日大 スポンジ状足場 体内で自然分解
・大規模臨床研究の受託強化 協力の医師にiPad 300台無償貸与 データ入力簡単
・全MRにiPad 大塚製薬 1,300台、情報提供を充実
今週は、どんな一週間なのでしょうか。