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 Nobember Fourth week

 先日久しぶり(15年ほどぶり)に、神田須田町のそばの名店に行きました。夕刻の4時頃だったのですが、相変わらず店内はやや使い古したお客で一杯でした。昔からこの店は、そばとつまみで一杯という江戸風情の残る店なのですが、やはり店内の客はほとんどアルコールを頼んで、早めの一杯を楽しんでいました。

 神田須田町界隈には、鶏鍋、あんこうなどの名店も昔の佇まいで残っていますし、どこもそれなりに繁盛しています。ご存じの方も多いと思いますが、これらの名店に共通するのがサービスの悪さであり、仲居のおばちゃんの態度の悪さと雑さに辟易としたことも少なくありません。ところが今回のそばやは以前より遙かにサービスが良くなっており、出口側から入る客も怒られなくなっていました。

 つまみを頼んで友人とゆっくり話しながらぬる燗を楽しみましたが、ざわざわとした雰囲気にもかかわらず、非常にくつろげた豊かな時間を過ごすことができました。つまみは相変わらず旨かったですし、ぬる燗の加減も良く、本当に心地の良い空間で落ち着けます。サラリーマンも多いのですが、都会の喧噪の中でもきわめて異質で不思議な空間といえるかもしれません。

 こういった空間や雰囲気は、実際の店でしか楽しむことはできません。ネットを検索すれば写真やメニュー、口コミ情報はたくさん書き込まれていますが、その本質を体験するには実際に行ってみるしかありません。どんなにコンピュータが進化しても、この雰囲気をバーチャルで作り出すには、まだまだ時間がかかりそうです。

 最近デジタルネイティブについて考える機会が多いのですが、こういった雰囲気を彼らがどう思うのか、興味のあるところです。というのも、海外旅行を積極的にしたがる若者は減少傾向にあるためです。私が若かった頃に比べ、世界中の情報はさまざまな形で入手することが可能です。googleアースはもちろんのこと、世界の風景や景色、雰囲気を、ネットのライブカメラや投稿写真、YouTube等の動画で楽しむことができるのです。しかしそこに表示されるのはデジタル化された情報であり、自然の持つ情報量には比べものにならない程度の限られた情報しかありません。すわなち、自ずからそこに出向いて体験して得る情報と、画面やスピーカを介して得る情報では、情報量が劇的に異なるのです。私自身、20歳の頃しばらく滞在したアメリカの雰囲気が、いまだに体のどこかに残っていることを感じます。社会人になってから世界の様々な国に赴きましたが、米国の滞在で得た印象を超える国はいまだにありません。

 となると、若者がコンピュータを介して世界を理解するというのは、世界のある側面だけを感じ取るだけであり、本当の意味で感性や感覚を十分には刺激できない可能性が高いといえます。テレビに出演する芸能人に実際に会ってみると、体格や見かけが想像と大きく異なることを体験したことがある方も多いと思います。このように、現在のコンピュータを介した体験は、リアルの世界で得る体験とは異なる次元であることがわかります。となればネットの口コミで私が訪れたそば屋を知った若者は、「趣がある」とか「風情がある」といった記号化された言葉で知っているかもしれませんが、その本当についてはわかっていない可能性が高いのです。ここにコンピュータを介したコミュニケーションの怖さが、潜んでいるように私は思うのです。

 かつて私のボスは、「コンピュータが人間に近づくためには、人間の五感そのものが表現できなければならない。その最大の壁は、匂いと味なんだよ。」と教えてくれました。現在のコンピュータが実現できるのは、視覚と聴覚の一部であり、触覚や嗅覚、味覚についてはまだまだ研究が遅れています。また視覚と聴覚の一体化は3Dやサラウンドなどで実現されてきていますが、他の3つの感覚との統合はまだまだ先の世界のようです。となると、しばらくは現実の世界のほうが、遙かに多くの情報を持ち続ける可能性が高いですし、ネットの世界がそこに近づくには、まだまだ時間がかかりそうです。やがては映画の「トータル・リコール」のように、人間の記憶を書き換えるサービスが、いつかは実現できるのでしょう。逆に言えば、そういった技術が開発されるまで、我々は現実の体験の大切さを認識し、積極的な行動を行っていかなければならないのです。

 インプットされた情報がプロセスを経て醸成し、やがて豊かなアウトプットにつながります。となれば、より豊かなインプットをすること、より良質な情報に触れることが、若者の創造力や感性を刺激するために必要と思うのです。そのインプットもいわゆる常識のフィルターがかかったものではなく、日常とは全く違う環境や情報でのインプットであるほうがより効果的で、良質であると思うのです。若者が世界に出かけることの肯定的な意味を、若いときに世界に出た体験を持っている人間は知っています。となると、デジタルネイティブである彼らが、デジタルの世界だけに籠もらず、広い世界に進んで出てほしいと願ってしまいます。

 そば屋でぬる燗をすすりながら、のんびりした午後を過ごす。この空間が創出する贅沢が、人間の感性と創造力を刺激すると私は信じています。

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 先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。

・高機能端末、シャープ集中 携帯分野で年500万台 3年内にシェア3割
・クラウド見据えPC強化 富士通 価格と質両立、1000万台狙う
・「賢い」飲料自販機 おすすめ商品表示 JR東系、東京駅にも 「いつ誰が何を購入」収集
・コマツ、IT駆使し適地生産 新興国モデルに背、価格維持
・富士通エフサス 長時間残業 PCが警告 管理ソフト 作業強制終了も
・電子決済に巨人グーグル 新携帯OS投入へ 先行の日本勢、正念場に
・スマートフォンに参入 パナソニック系 まず国内、来年に
・富士重、米でもHV投入 12年にも 環境志向の南部で拡販
・非接触IC用読み書き機 軽く持ち運び簡単 飲食店向け
・インテル、IT18社に出資 世界で総額64億円
・遠隔操作で端末ロック 高機能携帯 インテック GPSで探索も
・電動ブルドーザー出動 キャタピラー、燃費20%改善 部品削減、保守コスト抑制
・ビーム意識、夜は光り輝く 乃村工藝社 ガンダム像、武器にもこだわり
・タブレット端末向け電子書籍市場 14年度、国内800億円に 民間予測
・BMW、iPadで販売支援 画面上で色・パーツ変更 価格の比較にも便利
・来訪者の行き先予測 日立が技術 GPS利用、7割的中  

 今週は、どんな一週間なのでしょうか。