日本の国技が揺れています。
もともとは野球賭博に端を発した事件から、とうとう八百長試合まで発覚し、春場所の中止も検討されているようです。現状すでに八百長を認めている力士が3名いますが、今後の調査でこれ以上の力士に広がる可能性が出ています。大相撲を管轄する文部科学省は、公益法人認定を剥奪する可能性が高いですし、そうなれば相撲協会が解散に追い込まれ、これまでのような形で大相撲を運営することは不可能になるでしょう。
野球賭博の時もそうでしたが、やはり大相撲の世界は古い世界であり、力士出身者だけの閉ざされた文化を持っているようです。タニマチやごっちゃんなど、他の社会では考えられないような習慣がのこっており、それが日本文化の継承と思われてきた部分があります。反面今回のような問題が起きた際には、力士出身者で構成される協会のみで処理が行われてきたため、外部からさまざまな批判を受けてきました。以前からさまざまな八百長の噂はありましたが、「絶対にない」の一言で終わりにしてきましたし、抜本的な改革なども行われてきませんでした。
ところが今回は携帯電話のメールなどから、明確な証拠が発見されています。さらにそれは警察という外部機関から指摘されてしまったため、もはや隠蔽は不可能になりました。今回はこれまでのように隠蔽はききませんし、最悪協会そのものの存続も危うい状況になっています。それでも協会に所属する力士、親方、関係者に対して行うアンケートによって、これ以外の八百長嫌疑を探そうとするところは、一般社会との距離感を感じずにいられませんし、小学校のいじめのアンケート同様、本質的な問題解決を行う姿勢とは思えないところがあります。本気で膿を出して再生することが大切と思うのですが、一刻も事を納めようとする姿勢には、さすがに疑問を感じます。私自身は相撲ファンでもありませんが、お年寄りを中心としたファンのために、どのような抜本的な改革を行っていくのかは興味のあるところです。
しかし今回の事件が興味深いのは、その引き金が携帯電話の消去メールであったことです。仮にこういったことが昔からあったとすれば、会話や手紙でそれが行われたのでしょうし、その意味で証拠は残らなかったのでしょう。当事者のみが知っていますから、秘密は墓に持って行ってしまえばそれだけのことだったのでしょうし、他人がその事実に気づいても、証拠がないことから立証することは困難だったのでしょう。ところがITの出現により、電子的な証拠が残ってしまい、今回のようにもはやごまかせない状態になっているのです。やましいことのある力士は、おそらくこの機会で機種変更やメモリーの交換、場合によっては物理的な破壊を行っているのでしょうし、パソコン等の買換も進むかも知れません。協会が本気で調査をする気ならば即刻全員の機器を回収すべきですし、回収できなかった力士は厳重な調査を行うべきと思いますが、おそらく3名の処分で解決となってしまう気がします。
このように今回の事件の顛末はどうなるか興味が残るとこでありますが、それ以上に私の興味を引いたのが、やはり情報技術によってビジネスモデルの変革が促されているという点です。今回の引き金は消去されたメールでしたが、このことは私が現在主張する仮説を立証してくれます。すなわち大相撲というプレIT(ITがない時代)のビジネスモデルも、高度IT化によってとうとうポストIT(ITが社会に浸透した時代)のビジネスモデルに変革せざるを得ないタイミングに来たということです。相撲も興行という形で収益を上げているので、公的なビジネスといえます。これまではプレITのビジネスモデルでも問題は生じなかったのですが、今後はポストITのビジネスモデルへと変革せざるを得ないということなのでしょう。
逆にポストITのビジネスモデルを考えると、これまどとは違ったビジネスチャンスが生まれる可能性もあります。世界中から力士を受け入れている現在、世界に取り組みのみならず練習風景やさまざまな文化を紹介できる可能性がありますし、たくさんの部屋毎に文化があるのですから、それを公開するといったことも可能です。そういった文化を背景としたコンテンツには、世界市場での価値が高いため、世界の企業が興味を持つ可能性があります。さらに相撲協会や各部屋の収支も明朗にすることで、懸賞金以外にさまざまな支援を、世界中の企業から集めることができるようになるかもしれないのです。
このように時代の変化は、こういう伝統の世界も変えようとしています。逆に伝統も情報技術に会わせて変わらなければ、その存続すらできないのが現代なのかも知れません。
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先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
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・脱ウィンドウズMS苦闘 10〜12月、0.4%減益 依存度下げれば利益率悪化
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・鳥インフル猛威 企業、対策用品供給に万全 高性能マスク:5000円でも引合
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・大人向け新ブランド タカラトミー 少子化で市場縮小 文具などに商品化権
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・ニホンウナギの卵採取 東大など 世界初、完全養殖に道
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・パナ「敵に塩」の恐れも 湘南工場の専用電池 中国企業へ売却
・東京ドーム、コースター転落死 遊園地事業、見直し必死 収益悪化は不可避
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・パスワード作成 銀行カードで 大日印 回路内蔵、ネット利用安全に
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・CCCがMBO 今日から、総額700億円 非上場化で事業再構築
今週は、どんな一週間なのでしょうか。