911が節目を迎えました。
それから10年立ったことに本当に感慨を覚えますが、このテロの主犯と目されるビンラディン氏が、潜伏先のパキスタンで米国SEALSの急襲を受け死亡しました。ニューヨークにおいて命を落とした多くの人々にとっては、やっと気の休まる瞬間が訪れたといえますが、世界的にはテロの危険性が高まる結果となっています。
テロは決して許されるべきものではありませんが、かといって今回の急襲にはやはりさまざまな問題を感じてしまいます。まずはこういった事件において、報復は許されるのかということです。テロの現場においては、緊急性や他者の安全のために、制圧を目的とした反撃は許されるのかもしれません。しかし今回の件においては、あまりに多くの無実の人々が命を落としたから、武装していない犯人も殺害はやむなし、という論理になっており、法治という観点ではきわめて問題があるように思われます。拘束が可能な状況であれば、やはり拘束後裁判等でその罪を明らかにすべきでしょうし、その後の措置もその法に則って合理的尺度で実施されるべきと思います。また戦争行為としても、実際無実の人間が巻き込まれている以上、戦勝者のみがあらゆる責任を免れるという論理も成り立ちません。また国家の主権という観点では、テロリストがいれば無断で他国の領土を侵害してもよいということになってしまいますし、これが一つの国だけの判断だとすると、やはり国際法上も問題があるように思います。
実は私は、学生時代は国際的な法律を専門として勉強をしてきました。その中で学んだことは、世界にはいろいろなルールや考え方があるからこそ、徹底的にそれを研究し、極力矛盾のない合理的尺度でルールに基づいた判断を行うことが大切ということでした。今回のように、一方の正義で強制力を行使した場合、行使されたほうの権利や考え方を無視することになるため、より大きな問題に発展しかねません。正しさは勝者によって証明されるからこそ、勝敗がつく前に徹底的な論議が必要となります。その意味で今回の問題は、より大きな問題に発展しかねません。
しかし残念なことに、上記は世界のテロに関する常識となっているようです。すべての責任はテロリストにある、テロを行った者は無条件で抹殺できるという論理なのでしょうが、それでも私は疑問を感じます。なぜなら強国が弱者の反撃をテロと認定すれば、強国による侵略がすべて正当化されてしまうからです。無差別テロは許されるべきではありませんが、それを口実に強国の強欲を防げないことも危険です。世界の平和を追求するために核の拡散を認めるのではなく、国家の利害を超えた賢人会議を開くことを我々は考えていかなければならないように私は思います。
誤解がないよう繰り返しますが、テロ行為は許されるべきではありません。しかしその背景にあるものを無視することも、非常に危険といえます。一方の正義は他方にとっては悪となる可能性があるからこそ、両者が折り合える合理的な尺度を追求し、第三者によって合理的な判断が下されるべきと私は考えます。数年前に「ミュンヘン」という映画がありましたが、両者の主張が折り合えないからこそ、報復はより多くの報復しか生まないという基本を人間は理解すべきです。だからこそ人間には、その英知を尽くして徹底的な話し合いをする以外に解決は生まれないという原則が、私には大切なように思えます。
これ以上の報復が生まれることなく、賢人の努力によって世界が平和に向かうことを心から祈りたいと思います。
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先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
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今週は、どんな一週間なのでしょうか。