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Weekly report
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 June Third week

 総選挙が行われました。

 とはいっても永田町ではなく、AKB48です。私にはまったく理解できないイベントですが、この混乱した社会状況の中でこういったイベントがメディアの注目を集めるのが現在の日本の状況なのでしょうし、その総選挙を日本国内の映画館でパブリックビューができるようにしたり、世界に配信したりするところがこの現象のすごさを物語っています。

 これまでのアイドルは、テレビやラジオ、雑誌などの単方向メディアを利用し、プロダクション側がさまざまな情報を提要・管理することで人気を作りだしてきました。各種のメディアにいかに多く露出するかがアイドルの人気の源泉となり、その視聴率やCDの売上、リクエストなどがファンの支持を示す指標となっていました。逆にファンはさまざまな方法で情報をつかみ、その情報をより早く的確につかむことがアイドルの 姿や生の声をより多く得る秘訣となっていたのです。雑誌に掲載された情報を得るために、書店で多くの雑誌を立ち読みをする、テレビの出演を知るために、新聞やテレビ雑誌をチェックする。これが一般的なファンの情報収集の方法でした。ところがファンクラブに入るようなコアなファンになると、会報などによっていつどのような番組に登場するかがわかります。さらに積極的な活動をするファンには、スタッフが番組の収録時間や収録場所をリークすることによって、実際にそのアイドルを待ち受け、実物を見ることができるようにすらなったのです。こうやってプロダクション側の情報の操作によってファンを獲得するのが、一般的な手法といえました。

 ところが今回のAKB48は、まったく逆の方法をとっています。メディアの露出が先ではなく専用劇場を作り、「会いに行けるアイドル」として出発します。メディアに露出しないアイドルの卵を、 ファンが自分の力で世に送り出す。ビデオゲームの育成ゲームと同じアプローチによって、コアなファンを作り出します。さらに思い入れを深めるために、ゲーム同様 数多くの女の子を登場させ、自分好みのアイドルを捜させます、その自分だけのアイドルの卵を応援することによって有名にし、満足感を得る。これがAKBのスタートです。 さらにネットを利用してコアなファンがクチコミでより多くのファンを広げる。 暇さえあれば、間近でそのアイドルに会える。まさに新しいアイドルの登場です。

 ある程度のファンができると、今度は投票によるランキングです。プロスポーツのようにいくつかのランクによるグループを作り、多くの得票を集めた上位グループほどメディア露出度を高めるように仕組みます。そこで過去の日本人メジャーリーガーが組織票によってオールスターゲームに登場したような組織票による不正を回避するため、実際にCDを買った人間のみが投票をできる方法を生み出します。もちろん昔の仮面ライダースナックやビックリマンチョコのように、投票券の入手のために複数のCDを購入するといった新たな問題も引き起こしますが、CDの価格が価格なため極端な組織票を作り出せないようになっています。その投票によってグループを作ることで、より思い入れを強くする。さらに自分の応援によって、そのアイドルをより有名にすることができる実感を持たせるのです。

 同時にアイドル側も、自分に対するファンの支持状況も把握できます。より多くのファンに受け入れられるように努力をすれば、自分自身も有名になれる。つまりアイドルとファンの双方向的な働きによって、AKBという事象を作り出していると思われます。ここまできちんと戦略化されたアイドルのプロモーションは、AKBが初めてのように思われます。さらに驚くのは、アイドル一人一人は異なるプロダクションに所属していることであり、これまでのプロダクション主導のプロモーションが行われているわけではないという点かもしれません。

 そして今回、3回目の総選挙が行われました。正直結果の内容はよくわからないのですが、AKB一人一人の人間模様が少しだけ垣間見えた気がします。さらに東京のAKBだけでなく、名古屋のSKEや大阪のNMBなどのグループも一緒に投票されるところを見ると、実際の政治の世界と同じように思えてしまいます。まずは地方で議員活動を行い、そこから徐々に政界の中核に登っていく。そのためにあらゆる努力が要求され、中核になれば様々な利権と責任が発生する。まさに政治の世界と一緒ですね。

 逆に政治の世界に欠けるのは、この双方向性とスピード感なのかもしれません。完全に投票によって選ばれるということは、支持されなければ消えるしかないのです。ところが永田町では、AKB同様議会に入るまでは投票があっても、それ以降は内部の投票だけで代表が選ばれます。それが政治の不透明さを生んでいる原因であると同時に、国民の支持を失う結果ともなっています。そしてファンのために努力をする姿を見せる、その生き方そのものに共感させるような仕組みをAKBはつくりますが、政治家のほうは昔ながらの先生であり、選挙以降は不透明 であり、その活動も本当にのんびり見せてしまいます。日本の有事に権力闘争を行っているようなおじさんに、国民は共感を持てるわけがありません。どうして20代前後の若者でさえ実現できることを、永田町の年寄りは実現しようとしないのか。ここに政治の問題が大きく横たわっているように思えてしまいます。

 とはいえ今回のAKB総選挙、アイドルとファンの双方向性や、映画館でパブリックビューができるようにしたり、リアルタイムで世界に配信したりするところにITの活躍を感じます。ここでも私の主張するポストITのビジネスモデルが生まれているのであり、こういったスマートなIT活用が多くのシチュエーションで求められている気がしてなりません。

 となれば...AKBをテーマに、スマートフォンやAR(拡張現実)、デジタルサイネージなどのテクノロジの利用方法を考えてみるのも、次の世界を予測させるきっかけになるかもしれません。良いアイディアが浮かべば秋元康氏は確実に採用してくれるでしょうし、結果として皆様が一躍時代の寵児となれるかもしれません。

 そういったとんがった技術者の登場を、私は願っています。

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 先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。

・グルーポンに”列強”挑戦状 アマゾンやグーグル参入 競争激化、再編も
・EVの骨格に炭素繊維 帝人の複合材料開発センター
・「テロとの戦い」ネットへ 情報流出、米軍・FBI・企業が共闘
・小型電子機器から金属資源 都市鉱山採掘に知恵 自治体 割だかな分別・搬送課題
・楽天、米子会社と連携強化 海外ネット通販企業、相次ぎ買収 販促に動画活用
・海外IT企業への業務委託 451億円規模に拡大 15年民間予想
・「端末事業 提携は複層的に」 インテル 日本企業と成長領域開拓
・直下地震 2秒で検知 jt倒壊 即時停車システム 新幹線沿線に実験機 来春までに
・MSクラウドで海外攻勢 富士通 8月からサーバ貸出 データセンター増強
・端末置くだけ住専充電 スマートフォン2台もOK 「Qi」規格、各社が製品
・イスラエル社の監視システム 中国、地下鉄・空港で導入 治安対策で注目
・川重、造船にiPad活用 香川の工場、生産性改善 動画で熟練の技学ぶ
・ジョブス・マジック 舞台はクラウド アップル、今秋にサービス アマゾンなどに対抗
・事業継続へシステム刷新 日本精工 震災受け移行加速
・新興国 未踏のステージ 任天堂「Wii U」を発表 日米欧重視崩さず 収益性に懸念も
・中小企業「復興」手探り 震災明日3ヶ月 熟練工や技術維持に苦心
・データ拠点 横浜4棟目 アイネット、収容力7割増 40億円投資、13年稼働

 今週は、どんな一週間なのでしょうか。