中国で、列車事故がありました。
6月末には中国の車両メーカーが、ドイツと日本の技術を使った車両について米国で特許申請を行うと発言し物議を醸した矢先の事故です。事故は落雷による停電で停車していた車両に、後続列車が猛スピードで衝突したものであり、先頭から複数の車両が橋梁から落下するなど大事故となりました。事故後の救援活動は非常に迅速に行われたようですが、現実は十分な捜索と救出を行うことなく作業を打ち切り、脱線した車両を橋梁から落下させ復旧をはかるという乱暴な手法が使われました。さらに先頭車両は地面に穴を掘ってそこに落とし、重機で上から粉々に粉砕してうめるというように、事故原因の追及などを行わずひたすら事故を隠蔽しようとする姿が強烈に示されてしまいました。現に捜索打ち切り後に幼児が発見されたり、現在も数多くの行方不明者がいるなど、非常に大きな問題を残したままこの事故を隠蔽しようとしています。
中国政府は、事故の被害者に多大な補償金を払うことで幕引きを図ろうとしていますし、家族の弁護を引き受けないよう弁護士協会に圧力をかける、あるいは政府の対応を批判を行っている家族に脅しをかけるなどして、この事実が世間に広がらないよう必死の対策を行っています。その後補償金の額を多くする、あるいは国家主席が現地に弔問する、一旦埋めた車両を調査を行うという名目で掘り起こし、新たな場所に保管するなどの対策を講じていますが、どれもこの事件を一刻も早く収束させ、高速鉄道の優秀さを世界に広めようとする思惑が見えてしまいます。
事故原因を隠蔽しようとする姿勢は非常に問題を感じますが、それでも中国の変化を感じざるを得ないこの事件は、今後にさまざまな課題を投げかけてくれます。まずはこういった事件が、隠蔽できなくなったことです。多くのメディアに報道されたように、国がメディアを統制することが事実上難しくなっているのが見てわかります。天安門事件の際は、多くの国外メディアが退去を命ぜられましたが、今回の件は国内メディアさえもが批判的な報道を行っており、報道範囲の広さと深さを高めています。さらに国民も批判的発言を行うようになっていますし、その意味でもこれまでの状況とは大きな違いがあるように思われます。つまりインターネットによって世界中の事実を知ることが可能になった中国国民を、国がこれまでのように管理することが難しくなったと思われるのです。このことは、中国を大きく変えるきっかけになるかもしれません。
しかし中国の変化は、アジアのみならず世界経済に大きな変化をもたらす可能性があります。力と情報操作によって多くのエリアを統治している中国は、その力が低下すれば分裂の可能性が高まります。かつての東欧諸国同様、エリア毎に新しい国家が誕生し、旧の政治勢力と争いを持ったり、場合によっては武力闘争が起きる可能性もあります。もちろんこれまで以上に経済が活気を持ち、世界の消費市場として急伸する可能性もありますが、その反面武力闘争が様々な飛び火をする、あるいは自然資源などが生産・加工できなくなる可能性もあります。そうなると、これは中国国内の問題だけではなく、世界の問題となってしまいます。
変化の予兆は続いている以上、いつかは大きな変化が訪れることは間違いありません。しかし急速な変化は世界や経済に大きな影響を与えますし、国内政治にも多大な影響が生じるでしょう。大きな混乱を生ぜずに、世界と足並みを合わせた変化が起きることを願っていますが、実際にはかなり難しそうです。となると、この変化をある程度予測し、それによって我々にどのような影響があり、そのために何をすべきかを考えることは、現在非常に大切なことになっていると思うのです。
現在の日本のみならず、世界の多くの国々が中国の製品なしに生活することは難しいといえます。つまり、生産市場として中国は世界の大きな要になっているのです。さらに消費市場としての中国も大きな存在であり、その市場が無くなれば世界の投資や企業が行き場を失う結果にもなりかねません。不安定だからこそ安定を願うことは大切ですが、それ以上にこの大きな問題に対する危機管理を、今まさに始める時期なのかもしれません。
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先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
・OKI、決裁予備システム 地銀向け、災害に備え クラウドで低コスト
・紙幣環流ATM 世界戦略を強化 富士通系:韓国に識別部品供給 OKI:128種類対応機を投入
・ハードやOS、クラウドで提供 富士通 農業分野など開拓狙う
・サンゴ 期限は5億年前 「白化」原因解明
・検索サイトから診察予約 eヘルスケア「病院ナビ」 中小病院・診療所向け 月6800円で新サービス
・時速80kmでに障害物回避 トヨタ、最新の安全技術公開 安心との両立課題に
・PC各社、体力勝負 地デジ化後目玉無く 低価格競争
・代替システム利用安く 日本IBM、災害時の企業支援 1時間10円から従量課金
・クラウド導入2割超 国内企業 日経BP調査 スマホ利用も拡大
・寄せ集め技術 限界露呈 中国高速鉄道事故 「速度重視」の産業育成転機
・ICタグ内蔵 軸受け 来年から量産 製品情報を記録
・「王座」奪還へ挑戦再び マイクロソフトの逆襲 ネット企業の興亡 グーグル包囲網じわり
・ブラックベリー苦境 加RIM、2000人削減 スマホ特需のれず
・病院の国際認証取得支援 NTTグループ システム外販まず文書管理
・過密中国 日産の台勝負 生産能力200万台に倍増計画 「3強」照準、規模を追求
・ペルチェ式冷蔵庫 家庭用40リットル型発売 三菱電機エンジ
・データ拠点運用ほぼ100% 米Amazonのクラウド事業 薄利多売 競争できるのは数社
・こだわり社食で一息 東京エレクトロン アートも展示 四季演出
・技術の優位 市場に届かず マイクロソフトの逆襲 ポストPC役割探る
・TV苦戦で低迷 電機大手4社家電の業績 4〜6月 パナソニック赤字に
・経営透明化へ反応上々 三菱商、議決権行使集計システム導入 当日出席者の散歩を開示
・患者の同意書紙使わず 永和システムマネジメント 発行から管理電子化
・クラウド専門部署 新設 EMCジャパン 需要取り込み狙う
・三洋・ハイアール 渡りに舟 「伝統」の白物家電 買収へ 実り少なき提携、最後に"成果"
・岩田社長、10年目の正念場 任天堂、初の四半期営業赤字 「3DS」異例の値下げ
今週は、どんな一週間なのでしょうか。