大臣の発言が、波紋を呼んでいます。
事の発端は、厚生労働大臣の「たばこを700円まで増税」という発言を行ったことです。内閣としては、一員である大臣の私的な発言と済ませたいようですが、当の本人は厚生労働省を代表とする発言と明言し、早くも内閣が一枚板ではない印象が残っています。
この大臣、禁煙推進議員連盟の代表であり、喫煙に対してもともと相当な偏見をお持ちの方のようです。9割の人間がたばこをやめたがっているから、国が懲罰税を導入してやめさせてあげるという、国民の権利を気にしない民主主義国の閣僚としてあるまじき発言を平気で行うことは、さすがに常識を疑ってしまいます。
「たばこは健康に悪いからやめるべき」という主張は理解できますし、「受動喫煙の迷惑をなくすべき」という主張も非常に同意できます。しかし、だからといって国家が懲罰税を導入してたばこをやめさせるという考え方には、私は非常に危険性を感じてしまいます。たしかに喫煙によって肺や呼吸器に障害が起きる可能性が高まるのは、理解できます。それらが健康保険を圧迫することも、事実なのかもしれません。それでもこの考え方が危険といわざるを得ないのは、この論理が成立すると、ありとあらゆるものが国家によって統制される可能性があるためなのです。
たとえばアルコール。WHOのアルコール規制指針によれば、2004年には全世界で32万人もの方がアルコールが原因で亡くなっていますし、同時に全疾病の4%が、アルコールを原因とした疾病といわれています。たばこが害で、国家が責任を持ってやめさせる必要があるのであれば、次の標的は間違いなくアルコールです。「受動喫煙のような問題はないから、個人の問題では」と考えてしまうかもしれませんが、酒酔い運転による悲惨な事故がたびたび報道されるように、他者に対する甚大な影響という点ではアルコールのほうがはるかに問題です。さらに健康保険の観点からも、アルコール依存治療や急性アルコール中毒などで多くの医療行為が発生しているでしょうから、やはり保険財政を圧迫していることも間違いありません。
そしてたばこ、アルコールが懲罰の対象となった次は、間違いなく砂糖を使った菓子類になります。健康増進法が施行されたことからわかるように、メタボリックシンドロームが各種生活習慣病を引き起こしているとされており、肥満者は現在治療対象になっています。それらには間違いなく健康保険が利用されますので、保険財政を圧迫するでしょう。甘い物が原因といわれる虫歯も治療が必要ですし、ここでも保険が使われます。甘い物があればつい手が伸びる、という方も多いでしょうから、受動喫煙並に他者に対する影響も大きいといえます。となると、たばこ、アルコールの次は確実に砂糖を使った菓子類が対象となり、やはり国家が責任を持ってやめさせる必要が発生します。その結果、世の中のすべてのお菓子に懲罰税を課し、やがてはこの世から甘い物をなくす必要が出てくるのです。
このように嗜好品を標的として、国家がそれをコントロールしようとする考えは、間違いなくファシズムです。喫煙しない、あるいは嫌煙家にとってたばこの件はどうでもよく感じるかもしれませんが、これを許せば確実にその対象は広がり、間違いなく皆様一人一人に関わる大問題となっていくのです。
さらに租税の原則である「公平の原則」や「中立の原則」の観点からも、たばこの増税は問題があります。本来租税は公平である必要がありますので、特定の人間だけから課税する考えは不公平です。たばこは嗜好品であると考えると、嗜好品すべてに課税をしなければ、公平性は保てません。となると、現在課税されていない菓子類も間違いなく嗜好品ですので、それに課税するのは当然ということになります。今回の増税は復興財源にも使われるようなことがいわれていますので、それであればなおさら財源の観点でも公平性の観点からも菓子類にも課税を行い、復興に使われなければならないはずです。
このように、たばこの700円増税は、皆様の生活にとってもいろいろな問題を含んでいることをおわかりいただきたいと思います。
しかしそれ以上に、今回の増税によって、喫煙者だけではなくたばこに関わる多くの国民の生活を圧迫していることも理解して欲しいと思います。もともとたばこは専売公社が独占したように、国家事業として営まれた商売です。たばこの生産農家は国の奨励のもと米作や桑畑から転業した農家ですので、たばこが売れなければ廃業するしかなくなります。JTは多角化が進んでいるので問題はないとしても、関連する流通業者や街のたばこ屋は、存亡の危機です。前回の値上げで多くのたばこ店が廃業に追いやられたように、国民の生活にも大きな影響を与えることを国政を担う人間は忘れてはなりません。
被災地の老人達の何割かにとって、避難所や仮設住宅でささやかな幸せは、食後の一服と思います。その幸せさえ奪おうとする、正確にはそんなことを何も考えていない無神経な発言に、私はファシズムと嫌煙主義者の傲慢、そしてなにより似非(えせ)正義を感じてしまいます。これを許すことの怖さを感じると、国民として個人の権利の主張をしたいと思いますし、なによりファシズムの台頭の気配に対し、大声で異を唱えたいと思ってしまいます。
ちなみに... 指定席や飲食店では禁煙エリアを選ぶ私は、いつ吸ったか思い出せないぐらい昔にたばこを吸わなくなった、正真正銘の非喫煙者です。
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今週は、どんな一週間なのでしょうか。