Onomura System Consulting Office       

osco top


.
Weekly report
next

back

 

 

 

 

osco top

 September Fourth week

 今年になって二度目の、帰宅難民が発生しました。

 原因はもちろん、台風15号です。きわめて異例な進路をたどったこの台風は、勢力を維持しながら西日本に上陸、昼過ぎには関東に接近し、都心に大きな混乱と影響を与えて夜半に東に抜けていきました。当日私は川崎の企業で講座を行っていました。予報を見る限り午後には関東を直撃する可能性が高かったため、帰宅は相当に混乱するだろうという予想はしていましたし、帰宅のルートもいくつか検討はしておりました。

 いつものように講座冒頭の雑談で、こういった自然災害において、企業の意思決定速度が遅れる原因を話し、それがどのような影響を生じるかを受講者に説明していました。この説明を聞いていた訳ではありませんが、その企業のトップはきわめて迅速かつ効果的な意思決定を行い、12時過ぎには全社員に退社勧告が出ました。講座はその時点で終了となり、私も早めに帰宅することができ、幸い帰宅難民となることなく自宅に到着することができました。本当に素晴らしい意思決定だったと、その企業を称賛しています。

 今回の帰宅難民の原因は、ひとえに企業の意思決定の遅さです。それではなぜ、企業の意思決定は遅くなるのでしょうか?

 その理由は、帰宅指示を出したものの、実際には何も影響が発生した時に責任を問われるのではないか、と意思決定者が考えてしまうためです。つまり意思決定結果の空振りを恐れるのです。実際空振ったところで責任を問われることはなく、せいぜいが笑い話になるだけのはずなのですが、万が一の責任を回避したいがために意思決定が遅らせてしまうのです。結果として、意思決定の遅れが今回のように大きな影響を生じさせてしまいますし、さらには社会的な混乱を助長することにもなります。これこそ、意思決定者の責任を問うべき事であるにもかかわらず、「しかし電車が止まる前には帰宅指示を出した」とその責任をごまかしてしまうのです。

 今回の台風を例に取ってみても、帰宅難民を出した企業は15時前後に帰宅命令を出しています。JRや私鉄が停止を始めたのは15時半頃ですので、15時前後に帰宅命令を出してもまったく意味をなしません。西日本に向かう東海道新幹線は13時半頃に運休しましたから、その時点でその後関東の鉄道にも大きな影響が発生することはわかったはずです。社員の平均通勤時間を一時間とすると、15時ごろ帰着させるのであれば14時には帰宅指示を出す必要がありますし、その時点の事実として新幹線が止まっているのですから、そこに疑いも責任も発生しなかったはずです。それにもかかわらず多くの企業が15時前後に帰宅命令を下したのは、明らかに意思決定が遅すぎます。結果として大量の帰宅難民を生んだだけでなく、駅に殺到した人間が駅構内や改札で混乱を来すことになりますから、企業としての社会責任も放棄しているしかいいようがありません。

 こうした自然災害を含めた有事の際の原則は、社員の生命を守ることが第一のはずです。たとえ電車が止まらなくても、強い風によって生じた飛来物でケガをする、倒木や電線でケガをする、濡れた路面と強風で転倒しケガをするなど、社員の安全を守れないことは容易に想像できるはずです。さらに業務の生産性を考えても、半日休業したところで大きな問題が生じることはほぼないと思われます。さらに企業に残ったところで、停電などが発生すればいずれにせよ仕事にはならないのですから、早めに帰宅させても問題はありません。本当に納期が迫っているのであれば、最終的には自己判断をさせれば良いだけのことです。となると企業全体としては、やはり多くの社員の生命を守る観点から、帰宅命令を早めに出すべきだったと思うのです。

 今回の件が怖いのは、この意思決定者の心理が地震の際にも発生してしまう可能性が高いことです。さまざまな帰還の予測から巨大地震の可能性が示されても、「実際は起きないんじゃないか」「ひょっとすると、たいしたことないかもしれないのでは」という迷いから意思決定が遅れ、より重篤な問題を引き起こしてしまう可能性があるのです。

 一年に二回もこういったことが起きるのは、異例のことかもしれません。しかしだからといって、今後は起きないということはなく、さまざまな理由から起きる可能性のほうが高まっています。となると、今回の件を反省し、もう一度意思決定の仕組みを見直すと同時に、社会全体としてこのような事態が発生しないようなルールや仕組み作りをする必要があると私は考えています。

 ========================================

 先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。

・8億のつぶやき 宝の山 売る側・買う側の交差点 つながる力、リスクも混在
・三菱重工がウィルス感染防衛・開発拠点で サイバー攻撃の可能性
・富士通 海外ソフト事業拡大 企業内クラウドを軸に
・大王製紙 創業家3代目会長辞任 「個人商店」統治に甘さ 80億円を個人流用
・米、特許先願主義に転換 訴訟乱発、対策しやすく
・全客室乗務員にiPad 全日空、6000台導入 業務マニュアルを電子化
・インド社の事業買収 NEC 通信会社向け ソフト開発・販売
・薬局網生かし手厚くケア 総合メディカル 生活支援高齢者住宅
・酒造分野に参入 レノボ親会社の聯想集團 IT成長鈍化で収益基盤拡大へ
・ITで省エネ運転支援 JXエネ 愛知・福岡で スタンドに燃費情報
・iPad独走、背中遠く タブレット端末 ソニー、配信連携強化に活路
・客撮影の動画と製品を3D合成 アララ、ARで販促システム 車や住宅街者向けスマホで手軽に
・クラウド、中堅企業開拓 日立電子・日立情報 来月合併で専任組織
・大阪産EV 産学官で発信 府・府立大、中小を支援 三輪車などを試作
・挑戦者グーグル3度目の正直? SNS本格参入 フェイスブックの牙城へ ビデオ通話で差異化

 今週は、どんな一週間なのでしょうか。