企業の不祥事が続いています。
大王製紙では会長が個人で巨額の会社資金を借り受け、カジノで浪費していたことが発覚しました。一方オリンパスは負債隠しのために、会社買収を装って不当なコンサルティング費用を支払っていたことが外国人社長によって明かにされ、それでもその事実を隠し続けようとした経営陣の姿勢に批判が集まっています。いずれも上場企業であり、財務諸表は外部機関である監査法人のチェックを受けたうえで発表しています。しかしその裏に様々な不正が隠されていたことは事実であり、企業の姿勢と監査法人の存在に疑問が投げかけられる結果となってしまいました。
企業は自らの姿勢を律して財務の透明性を揚げ、さらに外部の専門家の綿密なチェックを受けつづけることにより株式市場に上場できます。その上で企業は市場から資金を調達し、適正な企業活動によって利益をあげて投資家に配当を支払ってきたのです。逆に投資家は、その成績表である財務諸表を綿密にチェックすることで収益性や将来性などを判断し、有望な企業に投資を行うことでより高い配当を得てきました。
今回の件は、このメカニズムそのものを否定しかねない大事件といえます。企業の透明性が偽りであり、さらに外部の専門家のチェックが万全ではないとすると、企業に投資をすることは非常に危険な行為になってしまうからです。偽りの利益を信じて投資を行えば、いつの日か必ず企業成績は大きく落ち込み、投資したお金があっという間に紙くずに変わる可能性があります。もしそのような可能性が日本中の企業に存在するとなると、日本企業に投資をする投資家がいなくなり、企業は存続できなくなります。となれば多くの雇用が失われ、日本経済は壊滅的な被害を被ることになるのです。
こういった問題を防ぐため、監査法人という外部機関が企業の財務状況を監査し、その成績表である財務諸表の適正性を担保してきました。しかし今回のように監査法人の監査が事実上意味をなしていないことが明らかになると、投資家は日本企業の財務諸表全体を信じられない状況になってしまいます。
今回監査を担当したのは、日本の超大手監査法人であるあずさ監査法人と、監査法人トーマツです。現在オリンパスの監査を担当している新日本有限責任監査法人とあわせたこの三監査法人で、日本の上場企業の大半の監査を実施しています。そういった大手監査法人がその責任を果たしていないということは、日本の証券市場に大きな問題が潜在していると思われてもしかたがないかもしれません。
かつてこの三監査法人と同規模の、みすず監査法人(旧中央青山監査法人)という監査法人が存在しました。上記の三監査法人と併せた四監査法人が、日本の大手企業の監査を担当していたのです。しかしみすず監査法人は、カネボウや日興証券などの粉飾行為に関わるなどしたため、その他すべての監査行為について信頼性が疑問視されることになり、結果的に金融庁によって解体されることになりました。となると、今回の件については、あずさ監査法人や監査法人トーマツも同様の責任を負うべきということになります。さらにこの事態を重くみるのであれば、みすず監査法人同様解体もありえるということになります。
しかしながらそのような事態になると、これもまた日本の証券市場に大混乱を生じさせることになります。なぜならば監査法人の監査を受けることが上場を続ける条件ですので、監査法人がなくなれば自動的に監査をうけられない企業が生じ、上場が維持できなくなるからです。事実みすず監査法人解体の際には、財務的に怪しいといわれる企業について、監査を引き受ける監査法人がいない事態も生じました。
今回の不祥事は、あくまでも特殊な事例と考えたいと思うのですが、事実は残念ながら違うと思います。となると、日本企業のコンプライアンスや企業統治のあり方を抜本的に見直す機会と思いますし、同時に監査法人のあり方も問われる時だと思います。景気が悪化するということは、粉飾のリスクが高まることを意味しますし、その中でこのような事件によって破綻する企業が発生すれば、さらに景気を悪化させる要因となってしまいます。
日本企業のあり方と監査法人のあり方を、我々は真剣に論じる時期になったと思わざるを得ません。
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今週は、どんな一週間なのでしょうか。