先日NTTグループの社長人事が発表されました。
5月に入って日経が新人事を報道しましたが、NTTが発表したものではないと打ち消されておりました。しかし結果は日経の報道通りであり、NTTの新体制が決まったようです。
私自身グループの中で一番興味を持っていたのは、NTTデータの社長でした。この5年ほど、社長を引き継いだ山下徹氏が辣腕をふるっており、世界と戦う日本のSIerのロールモデルとなっていました。現実に社長になられた当初は156億円、全体の売上比1.5%ぐらいであった国際ビジネスを、昨年度は2083億円、売上比率で16.6%にまで引き上げてきました。国内外の有力SIerの買収にも積極的であり、足りない資源を買収によって短期間に入手し、積極的に活用するビジネス感覚は秀逸なものであったように思われます。
しかし今回の株主総会を持って、山下氏は取締役相談役に身をひき、後任の岩本元副社長に社長の責務を引き継ぐようです。新社長の岩本氏は現在の路線踏襲を宣言していますが、果たしてその通りになるかは興味深いところではあります。というのもこの岩本氏、NTTデータの中心である金融出身であり、産業出身の山下氏とは経営感覚が違う可能性が高いためです。NTTデータの本筋は公共と金融ですから、その出身でない山下氏は、ある意味社内のしがらみにとらわれず自由に経営手腕を発揮できていたように思われるのです。今回は主流の公共と金融出身の社長なのですが、そこで実力を醸成したところを見るとこれまでのようにしがらみを無視した新しいことはしにくいのではないか、という疑問が残ります。さらにNTTデータの収益源である金融業界そのものは、この経済不安定で積極的な投資もしにくい状況となっていますので、金融に回帰しても現在の収益を維持できるか疑問です。公共も政権交代以降目立った投資はしにくい状況ですので、強引に新規ビジネスを行ってきたNTTデータの今後の業績に不安が出てきたように思えます。
こうしたロールモデルである企業が勢いを失うことは、それに引き続く2位以下のSIerに大きな影響を与えます。業界大手のITホールディングスはNTTデータに追従して合併拡大路線を敷いてきましたが、その効果はいまだに発揮できていないように思われます。同様の合併に走ったのがSCSKですが、ここもいまだにシナジー効果を発揮できたという評判は聞きません。コンピュータメーカ、並びに金融系のSIerも、親会社の不況もあって苦戦が続いているようですから、目標となるべきNTTデータが勢いを失うと、こういった企業もどのような舵取りをすべきか地力で判断せざるを得ない状況になってきています。
このように日本のSIerはかつての御用聞き産業のまま構造的な変化をしてこなかったため、時代の変化に取り残される前近代型ビジネスになろうとしています。現実的にいまだに多くのSEが、ニーズの聴取という形でお客様の問題を尋ねてしまうという御用聞き体質がぬけず、ボトムアップ型の設計業務から離れられません。しかし時代の大変革を乗り切るために、多くの日本企業はトップダウンの画期的なアイディアを望んでいます。となると、現状の日本のSIerにこれができる実力を持った企業は皆無に近いといわざるを得ません。それが出来るのは海外のSIerであり、実際強引ともいえる手法でビジネス構造を変革させています。それがオラクルであり、セールスフォースドットコムであることは、皆様がよくご存じの所だと思います。
NTTデータは、そういったトップダウンの変革を起こせる可能性を持った数少ないSIerでした。しかしこの変化の旗手であったNTTデータのトップが変わることは、日本のSIerが変革を実現できるかという点に疑問を投げかける結果となったように思われます。
このトップの交代は、今後の日本のすべてのSIerを占う上で、非常に興味深い一年となりそうです。
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先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
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・日本IBM、クラウドサービス 中小向けを充実 基幹業務やバックアップ
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今週は、どんな一週間なのでしょうか。