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 October First week
 10月に入って、最初のWeekly reportです。

 先日「ニコニコ学会βを研究してみた」という書籍を読みましたが、その中の江渡浩一郎氏の一文が私に大きなテーマを投げかけてきました。ちょっと長いですが、以下に引用します。

 従来プロが作るものとされてきたコンテンツをユーザが作成し、公開する。それがプロのコンテンツを凌駕するような存在へ成長した。これはITの進化によってプロとユーザの機材の差があまりなくなったことと、ユーザの知的レベルの向上が主な理由である。この二つの条件変化は、ITの研究にも同じように当てはまる。ITの研究者が使う機材とユーザが使う機材にはあまり差がない。ソフトウェア開発においても、オープンソフトウェアに見られるように、ユーザが作るソフトウェアは高品質である。ではIT研究者の独自性はどこにあるのか?

 「あまり差がない」ことを自覚した場合、とるべき道は二つある。一つは、独自性を保つために参入障壁を高くし、新たな参入を拒むことである。もう一つは、独自性がないことを自覚し,逆にユーザの参入を歓迎することである。

   
ニコニコ学会βを研究してみた 河出書房新社 「ニコニコ学会β」とはなにか 江渡浩一郎

 この文章を読んだとき、まさに今のSIerやIT技術者が突きつけられている根本テーマのように私には思えました。ITのコモディティ化は、ユーザでもシステム開発ができる環境を提供しているといえます。実際Excelを使って仕事をしないユーザはもはやビジネスの世界ではほとんど存在しないでしょうし、逆にExcelに高度なマクロを組み込んだり、SQLで基幹システムのデータを引用・活用しているビジネスパーソンも少なくはありません。

 また情報技術の進化により、ユーザでも簡単にプログラムが組めるようになっていますし、さまざまな公開部品の存在を考えると、時間さえあればIT技術者でなくてもほとんどのことをプログラム化して動かすことは可能になってきています。まさに我々が使う機器や環境とユーザのそれが一緒になってきていますし、さまざまな製品やサービスが、個人であっても無限のコンピュータ環境を利用することを可能にしているのです。

 となると、我々SIerやIT技術者の存在価値は何か? 今後のSIerやIT技術者はどのように生き延びるべきか? これを真剣に考えざるを得ない状況のように思えてきます。

 「素人のやることなんか、たいしたことはない」と高を括っていると、かつてその職を失った多くの職人のようになってしまう可能性があります。専門性と参入障壁は、時代によって変わります。ITがコモディティ化するということは、専門性と参入障壁を下げるということです。事実PCの世界でも、かつてのDOSの時代は機器の増設はある程度の知識がない限り不可能といえるものでした。CONFIG.SYSを切ってドライバーを組み込み、物理的結線をした上でテストをして動かすことは、技術者しか不可能だったのです。しかしPCMCIAやUSBの登場により、いまや小学生でも機器の接続は簡単に行えますし、コンピュータ機器の増設はプラグをコンセントにさすこととほぼ同じような意味合いになってきています。

 企業のシステム開発も、同様の状況になる可能性が高いと私には思えるのです。つまり江渡氏が述べる「独自性を保つために参入障壁を高くする」ことは、IT業界とっても非常に難しいことになっているように私には思えてしまうのです。となると、我々が選べるのは、「独自性がないことを自覚し、ユーザの参入を歓迎」することしかないように思えてしまいます。SIerが自ら独自性のなさを自覚し、多くのユーザを歓迎する。つまり誰でもコンピュータシステムを作れる状態を生み出し、逆にそこで素人となんらかの差別化を図っていくしか、我々が生き延びる道はないように思えます。

 素人でもできる世界で、プロが生き延びるためには、二つの方法があります。クリーニング店や大衆食堂のように、手間がかかることを委託される業者として生き延びる道と、高級レストランのように、高次元のアイディアとサービスを提供することで生き延びる道です。すなわち安価で付加価値の低い物やサービスを短期に大量に提供する方法と、値段が高くても付加価値が高く素人ではマネできない物やサービスを提供する方法です。少なくとも私は、後者の道を選びたいと思っています。似て非なる物を考え、設計し、実装する。振り返れば誰でも思いつきそうなものであっても、誰も実現しなかったことを行う。また真似ようとしても、本質は真似られない高い技術力が要求される。この道を選ぶこと以外、我々が生き残ることは難しいように思えるのです。

 しかし現在のSIerは、残念ながら二つの道を選ぶのではなく、そういった事実そのものから目を背けようとしているように私には思えます。我々のやっていることは独自で、高度なものである。決して素人は入って来れない世界である、と思い込んでいるように思われるのです。その高慢さが中国やインドなどの海外企業の直接参入や、Amazonなどの異業種の参入をもたらしたにもかかわらず、その事実に目を背けているとしか思えないのです。

 茹で蛙のたとえではありませんが、危機意識が薄ければ死滅の道をたどるしかないことに、SIerとIT技術者は気付かなければなりません。今まさに二つの道のいずれを選ぶかを、真剣に考えるタイミングが来ていると私は考えています。

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 先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。

・iPhone5、滑り出し好調 部品メーカ−、業績底上げ 液晶など供給遅れ懸念
・据置型に危機感 任天堂 ネットワーク機能活路
・ネットで資金調達 広がる クラウドファンディング 法対応・身元確認に課題
・冷え込む海運 どう対応 欧州で輸送能力15%減
・スーパー雑草、米国覆う 組み替え全盛、突然変異の影 除草剤、一種集中使用で耐性
・最高益の秘密 334社、絵隠田か・耐震耐え飛躍
・iPhone5 供給滞る懸念 中国暴動、暴動で停止 関西で盗難200台超
・プリンター2強に挑戦状 ブラウザー 新ブランド性能磨く
・アジアで無料配信アニメ次々 関連商品誘導に軸足 各社、露出増で収益化狙う
・クラウド時代、下がるハードル IT企業イベント活況 VC旗振り、予備軍・大手つなぐスマホ・SNSに商機
・ALSOKベトナム アジアの開拓のモデルに
・東京駅、開業時の姿再現 JR東、5年越しの工事終了 ステーションホテル 最高価格80万円
・根深い反日、緊張の現場 中国進出企業ルポ 車販売:日本ブランド隠す 電機工場:便乗スト警戒
・寝たきりでも家電操作楽に スマホで入力、タブレットで表示 テックフォーム 意思表示も可能
・タブレット、サービス勝負 グーグル「ネクサス7」1万9800円 クラウド活用、収益源に
・人気支える開発者争奪 グリーやDeNA 高年俸で囲い込み
・異業種参入 NEC 戦略と勝機 地域医療連携システム 中小病院、利用しやすく
・グローバルエージェンツ シェアハウス 3倍2500室に 3年後メド 防音室や娯楽室用意
・ベトナムやミャンマー・・・ アパレル業界生産移管急ぐ 高い中国依存に不安感
・日航、全日空 キャンセル5万席超 寒風中国 旅行業に痛手 九州や山梨 訪日客も大幅減
・スマホ 業務利用安全に CEC アプリで別モード 仕様と互換断つ
・カード不要、手のひら認証ATM 富士通・OKI開発 大垣共立銀導入
・米テスラ、業績予想下げ 今期 モデルSの生産遅れ響く
・東電 消えゆく人材 今年度、はや300人超退職 士気・改革、両立に難題
・客のツボ ITでつかめ 北海道日本ハム:観戦の興奮 音響で促す ローソン:カツ丼ヒット
・グリーとDeNA ドコモ参入受け急落 株式市場発
・新型レグザ、来月下旬発売 東芝、クラウドで機能充実 タブレット対応場面抽出
・キャノンMJ、3000人にiPhone SNSで営業の質向上 社内で瞬時に情報共有・支援

 今週は、どんな一週間なのでしょうか。