こどもの城が、閉館されます。
この施設は昭和60年の国際児童年を記念して当時の厚生省が設立したものですが、27年目の今年、施設の老朽化と子供を取り巻く環境を勘案して廃止が決定しました。青山学院大学の前にそびえる象徴的な建物であっただけに、その目的とともに廃止されることは非常に残念です。
少子化のこの時代、子供を取り巻く環境は大きく変わっています。激烈な受験戦争が繰り広げられた昭和40年〜50年代は、経済も高度成長期のまっただ中でした。明日の繁栄のためには、競争社会を生き延びるしかない。そのためには、小中学生から競争環境を作り強い個人を作り出す必要がある、という信念の元、学校教育から家庭内まで子供たちは教育を強制されていました。落ちこぼれなどという言葉が生まれたのもこの時期ですし、受験に失敗すること=人生の失敗のようにとられた時代でした。
しかしバブルの崩壊とともに経済が低成長期に入り、それまでの強烈な競争社会に対する反省が反動のようにおきました。もっと子供の時期は子供らしくあるべき、子供も一人の人間として大切に育てるべき、という考えが広がり、ゆとり教育など受験競争とは対極となるような教育が推し進められた時期もありました。体罰やケンカを認めず、皆が仲良くし、もめ事も話し合いで解決するといった教育が学校の中心となっていったのです。また子供が減り、野原の宅地化による遊ぶ環境の縮小から、年齢の違うこと遊ぶといったような上下間のつながりも徐々に弱くなっていきました。
さらに情報技術の進化により、子供の生活にもどんどんそれらが浸透し、face to
faceのコミュニケーションではないネットを使った新しいコミュニケーションも生まれるようになりました。文字で気持ちを表現する絵文字なるものも生まれる反面、人間としての感情表現が苦手な子供も増えます。文字で感情や感覚を自由に表せても、人と話したり行動したりするのは苦手という子供が多くなり、表面的には素直でよい子が増えていきます。さらに興味のあることはネットで知ることができる、だから実際に体を動かしたり試してみたりが苦手になる、あるいは興味もわかないといったことが、今の多くの子供の状況なのでしょう。
こどもの城はそういった子供環境の変化に対し、さまざまな刺激を与えることで子供の感性を育てる大切な場所でした。子供の五感に訴え、体を動かし、感じたり考えたりする場所をあたえる。この重要さを表現していた施設のように、私には思えました。学校に入る前の自由で行動的な子供に戻れる、こういう場を提供する数少ない施設であったように思えます。
しかし時代の流れは、この施設の存続を許さなかったようです。老朽化が原因とされていますが、昭和末期の建物ですのでその保守やリニューアルはそんなに難しいことではないはずです。つまり廃止の主たる原因は施設の老朽化ではなく、おそらく予算削減が主たる目的なのでしょう。首都圏の少数の子供にサービスを提供するためだけにこんな施設はいらない、同じような施設はキッザニアのように民間が提供するものがたくさんある、どうせ税金をかけるのであれば、数多くの老人に対してさまざまな施設を作るべきだ、というのが本音のように私には思えます。
誤解を覚悟で申し上げますが、豊かな老人に十二分のサービスを提供している現状を考えると、この国はなにを理想とし実現しようとしているのか、私にはわからない時があります。やがて我々も老人になるのですから、便利で十分なサービスを国から与えてもらえるのはよいことなのかもしれません。しかしこの国の明日を考えると、限られた財源を老人に割り振るのはあまり望ましいことではないように私には思えます。高度成長期を築いた老人に敬意を表すことは重要ですが、しかし現在サポートやサービスを必要としているのは子供や若者のはずです。東京に来れば何か仕事ある時代と違い、今は若者に正規の仕事がない時代です。だからこそ子供の時から、この時代を乗り越えられる感性と技術を学ばせる必要があると私には思えるのです。
本当の意味で、夢中になって遊ぶこと。大人が作り上げたゲームやデバイスを使いこなすのではなく、もっと本質的に創造性を発揮して遊ぶこと。これが今の子供に求められているように私には思えるのです。さらにそういった施設を日本中に作り、子供の創造性を刺激し、それを競争して発表できる場を提供する。きちんと優劣がつくからこそ、自分の価値を見いだしていける。こういった施設を提供することが、この疲弊した日本の状況を変える第一歩のように私には思えます。
スピルバーグやジョブズのように、子供らしさを大切にした人間の作品や製品を、人は画期的と呼びます。画期的なものが世界を変えるのであるなら、まずは画期的な子供を育てることが大切なように私には思えますし、それが国の使命であるはずです。
2015年までに誰かが気づき、このような施設を存続させる意思決定をしてくれることを心から願っています。 ========================================
先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
・スマホカメラ 手のひら認証 KDDI研 ロック解除1秒 アプリ配信
・ドコモ、目標はAmazon 野菜・健康器具・・・スマホで通販 細る通信収入補う
・ソニーと提携 合意に3ヶ月 オリンパス、独立こだわる 内視鏡で新会社
・NEC、農家に提供 クラウドサービス ハウス内の情報把握
・電子看板 個人の好み反映 電通国際 再開発エリアや商業施設 商品や店情報 天候も即時に
・3D・4K技術 内視鏡に ソニー・オリンパス 提携発表 次世代の外科用開発
・フェイスブック内広告 ウェブ閲覧履歴基に表示 トーチライト 国内で初
・日産、無人で自動駐車 EV、CEATECに出典
・電力ムラ 攻め入る外資 東電ファミリーの2社統合 設備巡り競争白熱
・スマホが作る顧客満足 アップル直営店:レジ通さず支払い USJ:仮想世界から招待
・携帯型の燃料電池 ローム 樹脂で水素の反応緩和
・ゲームで集中 飽きない研修 座学はもうイヤ!サイバード:ナゾを解き密室脱出
・本気のハード 三度目の正直 グーグル タブレット日本で発売 ソフト・サービスと三位一体 アップル追撃
・ウィンドウズ用アプリ開発 アップル端末でOK マイクロソフトとGMO ク
ラウドで環境整備
・人気IT、5年で成熟 ガートナー日本を予測 「組み合わせ重要に」
・プログラマー育成奔走 個である社長 愛宕翔太氏 スマホ向け、1000万人目標
・新薬成功1/30000の苦悩 第一三共、治験中止で株急落 医療費膨張悩む 当局 高まる承認ハードル
・国産スマホアプリ 海外に売り込め アジア市場狙う
・ジャパン・リリーフ、スマホで車運行管理 GPSで速度・位置記録 安全運転診断、事故減らす
・「N BOX」用介護リフト開発 本田、モリトーと 1時間半で設置
・快走アップル 忍び寄る陰 ジョブスし死去1年 目玉サービスほころび露呈
今週は、どんな一週間なのでしょうか。