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 February Fourth week

 イギリスのサウサンプトン大学で、XboxのKinectを利用したリハビリ装置を開発中だそうです。KinectとはXboxというゲーム機の入力デバイスであり、人の動きや表情、声などをカメラで読み取り、体を使ったゲーム等に利用されます。同様の装置をWiiやPS3も搭載していますが、この機器自身に独自のプロセッサを搭載するなど、機能が高いのが特徴かもしれません。Xboxを販売するマイクロソフトはKinect用の開発ソフトも公開しているようであり、今後医療やビジネスなどさまざまな箇所で応用が期待されています。
 サウサンプトン大学のリハビリ装置もこの一環のようであり、ゲーム的なメニューで楽しみながら脳卒中患者のリハビリを行えるようにしたもののようです。調べてみると、同様の装置を九州大学大学院が開発しているようであり、こちらもKinectを利用した仕組みのようです。

 このように機能回復にゲームを用いる考え方は昔から私が提唱しているものであり、事実ゲーム会社を立ち上げた若者にもこの企画の検討をお願いしているところです。現在は、タブレットPCやスマートフォンを利用した動作訓練が有望と思っています。脳卒中で半身が不自由になった場合、日本では茶碗に入った豆を箸でつかんでもう一つの茶碗に移す、といったことが行われています。箸という手先の神経を細かく利用するデバイスを操作させることで、機能の回復を目指しているのでしょう。しかしこの行為自身、面白みはないと思われますし、下手をすると苦痛しか感じないかもしれません。事実私の友人の父親は、「俺は今後箸は使わずスプーンで生活するから、こんな訓練はやめる!」と宣言していたようであり、この訓練のつらさを物語っています。私も背骨を痛めたときにリハビリ訓練を行いましたが、単調で苦痛が伴うものでした。さらに周りがすべて老人の中、傍目にみても間抜けな運動を繰り返しているのは、恥ずかしい以外の何者でもありませんでした。これを考えると、楽しくリハビリを行えるようにし、訓練のモチベーションを高めることの重要性を痛感してしまいます。

 何らかの理由で体の動作が不自由となった場合、その機能の退化を防ぐ、あるいは積極的な回復を目指した訓練をする必要があることは理解できます。だからこそ「より不自由になる」と脅迫するのではなく、積極的に取り組みたくなるような工夫が必要と私は考えます。さらにリハビリ時間だけでなく、生活のあらゆるシチュエーションでリハビリにつながるような操作を要求する、それも楽しくチャレンジしたくなるような環境を作ることが一番大切だと思います。

 現在ではゲーミフィケーションといわれる、インターフェースや操作などにゲーム的な要素を取り組むことで、顧客との接点を強めたり再来訪をもとめるような仕組みがビジネスの中に取り入れられ始めています。ゲームの持つアミューズメント性と人間の射幸心をあおる仕組みは、知らず知らずのうちに取り組んだり操作を始めてしまう可能性を持っているからです。だからこそ、この考え方をもっともっとリハビリの現場などに取り入れる必要があるのではないか、と私は考えています。

 たとえば病院の入院病棟全体が、こういったゲーミフィケーションをベースに作られていたらどうでしょう。殺伐とした病室でただただ時間を過ぎるのを待つのではなく、ちょっとした行為がすべてリハビリや治療に生かされるようになっていたら、回復の時間は短くなるように思います。さらにそういった取り組みによって入院患者の生きること、行動することへのモチベーションが上がるように思われるのです。軽量のスマートデバイスで体調をモニタリングできるようなライフログの仕組みを充実させ、その機器が発信する信号をさまざまな機器や装置、デバイスが受け取って個別の反応をするなどといったことができれば、非常に面白くなります。

 たとえば握力の弱った老人が蛇口を開こうとすると、モーターの力で通常よりやや軽めに開けるようにします。しかし回復に伴って徐々に重くしていけば毎日の歯磨きや洗顔を通して握力を鍛えられるようにします。さらにその都度機器が「頑張って」「昨日より力がつよくなりましたね。」と反応してくれ、さらにその結果をスマートデバイスがすべて記録してくれれば、蛇口を開くことだけでリハビリができるようになります。階段を一歩上がるごとに点数が上がり、一定の点を超えればおかずが一品豪華になる、正しく言葉を発音できるようになれば、美人やイケメンの看護師さんとの会話時間が増える、などの見返りを与えれば、入院患者が普段から楽しく積極的に生活できるようになると思うのです。痴呆状態の老人であっても、スマートデバイスが身近な人となって話しかけてくれれば、確実に反応は上がると思われます。iPadなどのタブレットPCを通してでも、論理的な会話を誘導すれば痴呆状態の軽減や回復の可能性は高まるはずです。このようにより早く高度な回復が期待できるのであれば、医療コストが相対的に軽減できますから厚生労働省が医療改革として取り組んでもよいテーマに思えます。もちろんメタボ対策など生活習慣病を軽減する、あるいは老人の体調や機能を維持できるように住環境に転用すれば、医療コストや介護コストが劇的に軽減できる可能性を持っています。

 このようにITの進化は、今まであり得なかったことをできるようにする点があります。昔の延長線で考えるのではなく、人間誰もが望む楽しい生活を実現できるよう、ゲームなどの新しいサービスや機器を利用した新しい取り組みを我々は考えていく必要があるように思われます。サウサンプトン大学や九州大学の取り組みが広まることを心から願っていますし、こういったことを進んで研究し実践してくれる若者やベンチャーの出現を、世界が待っています。
 

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 先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。

・EV充電できぬ集合住宅 機器設置 管理組合の同意難しく 国の補助可能 自前も可能
・電子雑誌で販促支援 大日印 複数企業、テーマに沿い
・会津大、IT集積の軸に 大学VB25社 大手とも連携 産業規模40億円狙う
・宮城で訪問リハビリ セントケア 石巻に事業所 復興特区活用 介護大手で初
・太平洋セメント 復興需要へ迅速対応
・GSユアサ背水 リチウムイオン電池 787トラブル 究明に時間 HV用で履き替えし急ぐ
・私物端末でも社内文書安全 コアが共有システム データ分割・暗号化 閲覧も楽に
・中国勢、日本に攻勢 システム開発 技術者を増員・日本式の開発学ぶ 企業の投資意欲先取り
・小田急、3駅地下化 下北沢など、来月23日に
・KDDIが国内最速 法人向け仮想私設網 要領10倍、毎秒10ギガ コストも3割減
・中小争奪、武器はIT支援 NTT東:MSと提携「8」売る KDDI:1500人体制、全国に拠点
・日産がIT研究拠点 シリコンバレーに 「賢い車」づくり
・クラウド普及 需要変化 サーバー台数 前年比減 性能向上なども一因
・クラウド普及には余地 企業のIT投資意欲に薄日
・つま先持ち上げ 転倒防ぐ 補講支援シューズ 岡山大、高齢者向け 電機使わず安く
・異業種参入 ALSOK 訪問介護 過程警備と相乗効果狙う
・空間新景 関空第2ターミナル LCC専用、ムダそぐ
・奥だけで充電 日本から世界へ 規格「Qi」 対応機器、スマホから広がる パナソニック主導
・サイバー攻撃「中国軍か」 米企業被害、関与の報告書 セキュリティー会社
・地震・強風対策で競う 高層ビルのエレベータ技術
・テレビゲームで脳卒中患者のリハビリを補完する技術を開発中
・生態系の頂点にスマホ 次はソフト サムスン電子 覇者へ足固め
・PS4、対スマホへ背水 ソニー、ネットに活路 7年ぶり刷新
・従業員募集を停止 鴻海の中国工場 iPhone不振
・CTC、東南アIT2社買収 海外売上高400億円へ 3年以内に
・コジマ、接客にタブレット IT×経営フロンティア 効率向上、素早く返答
・ホンダ・東芝、超小型車実験 沖縄・宮古島で 電気で走行

 今週は、どんな一週間なのでしょうか。