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 May Fourth week

 3Dプリンターが発展を続けています。

 もともと製造業で部品の試作等に利用される目的で開発されたもののようですが、製品の発達とともに価格が下がり、現在では安い機種が数十万円で購入できるなど個人でも所有できるようになってきました。工作好きの方にはたまらない機械でしょうし、実際のビジネスでも試作をするのが難しかった、あるいは 試作を行うために非常にコストがかかっていた部品を簡単に作ることができるようになりました。

 3Dプリンターの普及に伴い、現在は機器の低価格化と高機能化が競争の焦点となっているようです。海外では10万円程の機器も販売されているようですし、機能としては白一色の樹脂からカラー の樹脂を扱えるように開発が進んでいるようです。さらに今後は、さらなる大型化の期待もかかります。樹脂の性能も上がれば強度が増し、モックアップ等の試作から一品生産の完成品も作れるようになり、ビジネス、個人ともその利便性はより高まっていくでしょう。

 3DプリンターのメリットはまさにDTM(Desk Top Manufacturing)であり、様々な工作機器を活用しなくても製品がつくれるところにあります。プラスチックを使ってボルトとナットを作る場合、旋盤やフライス盤などの 特有の機能を持った工作機器を利用する必要があります。それぞれの機器は基本的に大型で高価であり、利用には技術が必要となります。さらに騒音もそれなりに発生しますので、家庭内でそれらを利用することはかなり難しいでしょう。その上複雑な形状になると、特殊治具を作ったり何回も機器を設定し直すなどのさまざまな工夫が必要となりま すし、場合によってはレーザーカッターなどの特殊な機器を用いないと加工できない場合もありました。

 しかし3Dプリンターは立体的に加工を行うため、部品の形状さえ明確になっていれば複雑な部品でも難なく作成できてしまいます。CADデータを3Dプリンターに流しこめば完了のため、工作の細かい技術が無くても、部品設計の技術さえあれば試作部品が作れるようになったのです。これは多くの製造業にとって 素晴らしい朗報でしょうし、その機器が普及すれば工作好きの方にも多大なメリットを提供します。さまざまな図面を元に試作品を作って相互比較することも可能になりましたし、製造中止の部品も自分で作って 機器を直せるようなるのです。さらに独自の工夫をもった部品を組み付け、製品の完成度をより高めることも可能になります。このように3Dプリンターは 、これまでの製造現場を変える可能性がありますし、個人の創作活動も飛躍的に高める可能性をも持っているのです。

 一方3Dプリンターは、新しい問題も提起しています。米国のコーディー・ウィルソン氏は自らのプロジェクトにおいて、CADで設計した銃器の部品を3Dプリンターで印刷し発射実験を行っています。当初は小銃の部品の一部を作って実験していましたが、最終的には独自設計の3Dプリンター部品のみで作成した拳銃を完成させ、試射まで行っています。ファイアリングピンという硬度を要求する部品だけは今は難しいようですが、それ以外はすべて3Dプリンターの樹脂で製造し、発射が可能だったようです。 この設計データをインターネットで配信したため、さすがに米国政府もまったをかけたぐらい、誰でもデータさえあれば拳銃を作ることが可能になったともいえます。もっとも現代の拳銃や小銃の多くが主要部品に樹脂を利用している時代ですので、素材の技術が進めば現状と同じ拳銃を3Dプリンターで作ること自身不可能でないことは自明の理です。それでも今回 の実験が問題になっているのは、ネットにアップされているCADデータさえ入手できれば誰でも拳銃の製造が出来るということであり、その危険性と犯罪に使われた際の証拠隠滅の可能性 が高いということなのでしょう。

 このように3Dプリンターは、いままで出来なかったことを可能にする反面、人類が体験してこなかった新しいリスクを生み出します。これが最新情報技術がもたらす一つの未来であることを 、我々は忘れてはなりません。利便性が向上したり人類の英知を実現する道具の進化を止めてはいけませんが、必ず新しい道具は新しいリスクをもたらします。しかしリスクを恐れれば今と何ら変わらないことになりますし、恐れたところで技術の進歩を止められるわけもありません。

 大切なことはきちんとリスクを明確にし、それに対してどのような方策を講じていくかを考えることです。その技術を犯罪などで使われて始めて対策を考え始めるのではなく、将来起こりうるであろうリスクを最初から明確にし、その対策を皆で考え、その上で正しい使い方をする。こういった新しい技術に対する新しいルールを、我々は考え始める時期が来ているのです。

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 先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。

・世界最速 600万色対応 3Dプリンター 野球ボール大で三時間半
・社内システム構造 一目で 富士通が外販 保守、投資の判断に
・社員の導線 見える化 腰にセンサー 杉原エス・イー・アイ 工場など効率改善
・教育向け電子書籍端末 ソニー、早大などと実験
・ネット証券、一時売買停止 NRIでシステム不具合
・IT分野に障害者採用 アイエスエフネット 生活保護者で川崎市と協定
・タイ、3Gサービス開始 大手携帯3者、4100億円投資 日本勢、アプリに勝機
・全乗務員にタブレット JR東日本 障害発生時に活用
・記事・ブログも電子書籍で 定額配信で裾野拡大 オールアバウトやドワンゴ参入
・シャープ、赤字最大5453億円 前期最終 液晶TVなど不振
・腕時計軸に収益拡大 セイコーHD 営業益200億円目標 3カ年計画
・格安へ 配管むきだし 成田LCC用暫定施設
・「片山の変」 シャープ救えるか 奥田体制1年で終了 財務改善など課題山積
・内々定獲得4割強 本社など調査 来春新卒 採用活動ピーク 5月中旬時点
・オリンパス、医療重視鮮明 17年3月 デジカメ、計画比4割縮小 内視鏡拡大カギ
・「本命iPhone」ドコモが布石 「エクスペリア」5000円 「ギャラクシー」1.5万円
・グーグル、未来図描く 音声検索:PCと会話操作 マップ:日食の影を再現
・営業利益率7%超 日立の中計、重電とITで
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 今週は、どんな一週間なのでしょうか。