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 May Fifth week

  マイナンバー制度が、国会を通過しました。これにより2016年から、この制度に基づいたマイナンバーが国民に付与される模様になりました。

 マイナンバー制度とは、国民一人一人に固有の番号を付与することで、様々な行政サービス等を円滑に進めるための制度です。税や福祉、社会保障などすべての行政サービスがこの番号を元に行われると、各省庁での名寄せが簡単になるだけでなく、相互サービスのムダや矛盾を省くことが出来ます。逆にこの番号を元に個人情報や保有する資産もすべてが名寄せされるため、国庫破綻の際などに国が預金凍結などを行ってくる可能性もあるので、国民の理解と慎重な審議が必要といわれていました。

 世界的には、この制度を利用していない先進国のほうが少ないので、日本独特の制度ではありません。ある意味世界の定評のある仕組みを、やっと日本も導入したということになります。もちろん自動車の免許証取得者は事実上個人番号といえるものが存在するので、個人のプライバシーを国家が事実上把握出来ることは知っています。マイナンバーはこれに近いものですから、私自身は合理性や利便性の観点からこの制度自身を批判する気はありません。しかし今回の件で気になったのは、マスコミの報道の姿勢です。

 これまでも国民に個別な番号を付与する制度を導入すべく、政府が何度かチャレンジをした経緯がありますが、その都度マスコミを中心に大反対が叫ばれ頓挫した歴史があります。古くは佐藤内閣の国民総背番号制がそうですし、住基ネットもそうでした。特に近年の住基ネットは「国民総背番号」につながり個人のプライバシーを国家が統制する可能性があること、ならびに住基ネット上のデータベースにハッキングされることで、個人情報が漏洩されることなどを理由に、相当な反対が起きました。

 しかし今回のマイナンバー制度は、「社会保障と税の一体改革」という名目のもと、ほとんど反対なしに議会を通過しましたし、その事実をきちんと報じたマスコミも少なかったように思います。もちろん今回の法律が国会を通過した背景には、この制度を起案したのが民主党であること、そして政権交代によって与党となった自民党が民主党案をそのまま今国会に掛けたため、議会で反対がでにくかったという事実があります。それでも国民に背番号をつけることが国家による個人統制の危険性があることや、国民のプライバシー情報の漏洩につながることをなぜマスコミは批判しなかったのかが、私には理解しにくいところです。

 以前導入された住基ネットは、今回のマイナンバー制度よりもずっと利用範囲が狭かったにもかかわらず、多くの弁護士や市民団体、場合によっては自治体首長さえもが反対を表明しました。しかし今回のマイナンバー制度の反対意見は聞いた記憶がありませんでしたし、その法案の存在や法案審議の過程も積極的には報道されなかったように思います。さらに国会の審議で議決された事実の報道もそれほどあったとは思えませんし、メディアが批判的な報道を行った形跡もありません。邪推をすれば何らかの圧力があったように思えてしまいますし、国が国民に隠したい何かが存在している可能性すら疑ってしまいます。本来マスコミは中立の立場で、政府や官庁の疑問点や不正の可能性を指摘し、国家による個人統制などの偏りを正す立場にあるはずです。しかし今回の件を見る限り、これまでいわれてきたように「日本のマスコミは国家寄りのご用組織」と思わざるを得ません。

 私の意見はともかく、マイナンバー制度が今後我々のプライバシーに影響を与えることは事実ですし、事実導入した国々でも個人を統制するために利用している国もあります。日本でも法案が国会審議を通過しこの制度が実施されることは事実になった以上、もう一度国民すべてがこの制度の危険性を認識したうえで、この制度をどのように利用していくか、さらにその情報を国民主導でどのように監視・コントロールしていくかを、もっともっと論ずるべきと私は考えます。さもないと結局権力者にとってのみ都合の良い仕組みになり、個人の多くの権利が毀損・蹂躙される可能性があると考えてしまいます。

 一方この制度により、IT企業の新たな利権が発生する事になりました。マイナンバー制度を運営するシステムの開発に2,000億円〜4、000億円が必要といわれていますし、システムの運用費も年間で数百億円といわれています。さらにこのシステムを調達・管理するCIOを民間から登用することを発表していますので、その座と受託を巡った大手コンピュータベンダーやSIerの新たな争いが始まっているようです。消費税にならぶ新たな特需がまたもや生まれ、日本のSIerが安易に延命してしまうことを、私は危惧しています。

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 先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。

・女性向けストーカー対策 ALSOK GPS利用 半年契約、月5,250円から
・ソフトの欠陥突かれる ヤフー、ID2200万件流出か 国内最大級の恐れ
・米デル、純利益8割減 2〜4月
・踏切、クラウドで遠隔監視 日本ユニシス カメラのみ、費用安く
・橋、洪水・津波に強く 広島大、航空機の翼参考に 流れで下向きの力発生
・海外挑む特撮ヒーロー 伊藤忠・石森プロ インドネシアで製作・放映 グッズ販売50億円目指す
・サイバー工場 世界展開 ヤマザキマザック 「神経系統」備え変化に即納
・月額読み放題、割安設定 人気雑誌、電子書籍で配信 紙媒体の販売増狙う
・稼ぎ頭 薄利が課題 豊田、1000万台超えへ 小型・HVの収益化進める
・機内食に「一風堂ラーメン」 全日空、来月から提供
・新鮮なネタ買います 釣り人から地元・新潟産 回転すし 堀口商店
・台湾EMS 偏重 受託製造 パソコン2ケタ受注減 製品の多角化急ぐ
・「ミラーレス4割に」 オリンパス社長 デジカメ立て直し
・3つの成功取り込む 米ヤフー、タンブラー買収 モバイル対応
・パナ、投資1/4に抑制 リチウムイオン電池不振 正社員も削減 中韓勢に防戦
・複合機に中国的発想 富士ゼロックスや東芝テック 新興国攻略へ開発陣増強
・金融機関の事務代行 日本版ISA ベース クラウドで割安に
・家族の娯楽 1台で担う 新型Xbox ゲームx映像の視聴xネット MS、対スマホで攻勢
・楽天、書店に利益還元 電子書籍の端末経由販売分
・作り手より乗り手目線で 日産 保険など異業種と新商品
・訪日客に無線LAN JR西 改札口・待合室で無料
・KDDI「スマート」空回り エリア過大表示など次々問題化 体制追いつかず
・スマホ決済「元祖」上陸 小型店舗や個人に攻勢 ネクスエア カード読み取り機
・日本にクラウド拠点 MS、アマゾンを追撃
・PC売上高が20%減 米HP、再建計画に影
・ワタミ、全国650店舗の電力使用監視 格安M2M回線を活用
・「沈黙の艦隊」紙と電子で 人気コミック新装版 講談社と凸版系
・1つのゲーム 端末自在 PC・携帯機・スマホ連携 セガ:人気作で展開 バンダイナムコ:ワンピース好調
・瀬戸内「水軍」に第三の嵐 造船大手 建造消える14年危機 今治と三菱提携に活路探る

 今週は、どんな一週間なのでしょうか。