原子力発電所の再稼働の動きが始まりました。
7月8日に施行された国が示した新しい規制基準について、安全審査の請求が五社から提出され、五原発十基の再稼働に向けた審査が始まる模様です。原子力発電所のある各自治体は反発を強めていますが、主力政党主導の再稼働に向けた動きが着々と進み出したようです。
時を同じくして福島第一原発の観測用井戸から、許容量の200倍もの放射能を含んだ水が取水されて問題になりました。その後東京電力側は、取水の際に放射能を含んだ土壌を一緒に採取したことが原因の異常としており、それらを除去した後の水の放射能レベルは通常値と変わらないとこの事実を否定しました。しかしこの発表にはどうも恣意的な印象がぬぐえず、国民の不安は去らないようです。地下水は海中に流れ込んでいる可能性があるため、この問題は慎重
に対策を講じなければなりません。ところが地下水は雨とともに水位を変化させますので、それらをコントロールすることはきわめて難しいでしょう。現在は漏水が疑われる箇所をせき止めるという消極的方法しか採れませんので、今後も推移を慎重に見守るしかないようです。とはいえたまった地下水はいつかはあふれ出します。セシウムやウランの減衰には最低10年低度はかかるでしょうから、こられの地下水の処理も今後大きな問題になりそうです。
このように福島の原子力発電所の後処理が十分でない中、各電力会社は性急に再稼働を進めようとしています。福島の津波は例外的事項であり、ある程度の対策さえ講じれば問題なく稼働できる、という考えがあるのでしょうが、日本の未来を考えると決して望ましい判断とは私には思えません。
私はエンジニアですので、未知のリスクを完全に発見し除去することはできない、という立場を取っています。有史以来起きえなかったことについて、その被害の状況やその後の影響を正確に考えられる人間はこの世には存在しないと思っています。新しい技術は常にそのリスクを背負いますし、注意を重ね十二分の対策を講じても、やはり何らかの問題は起きるのが事実です。さりとて危険を恐れて何もしなければ進化はありませんし、危険にチャレンジするからこそ生まれるものもあります。
ただしこれらは、未知のリスクに対する考え方であり、既知の問題にこの姿勢はあまりに危険です。大きな問題が生じても、その問題の原因や解決がなされないまま次のチャレンジが続けば、より大きなリスクを内包することは誰もとっても明らかなはずだからです。起きた問題は徹底的に検討し、原因を追及し、対策を講じなければなりません。さらに起きたことについては、その強度を変化したシミュレーションが可能になります。東日本大震災で発生した津波によって、それ以上の規模の地震があった場合のシミュレーションは可能になっています。知り得ないことではない以上、これまでの知識を総動員してその対策を講じる、それが不可能であれば、その問題が片付くまでその技術を利用を停止する。これが当たり前の事のように思えるのです。
となると、今回の原発再稼働に向けた動きには、二つの問題があることがわかります。まずは問題を徹底的に検証するための、材料の不足です。放射能で汚染されているから十分な情報が取れない、という理屈は解るのですが、それでも現実の対策が行われています。すなわち十分な情報がないのであれば、現在の対策はほとんど意味のないことになりますし、意味があることが行われているのであれば、検討に値する情報が集まっているということになります。となると、検討材料である各種情報を、電力会社が恣意的に隠していることになってしまいます。原発事故以来徐々に明らかになっていますが、自社に不利となる情報をひたすら隠そうとする電力会社の姿勢には、さすがに呆れてしまいます。そこまでして守るべき利権があるのでしょうし、それを推し進める主力政党の影響を強く感じます。一部の人間の利益のために、日本全体の危うくしてもしかたないという考えは私には理解できません。世界人類のことを考えるのであれば、利権を脇に置いてこの問題に関するすべての情報を公開し、世界の英知を集めてこの問題を解決すべきと私は考えます。
二つ目の問題は、有効な対策の不足です。十分な情報が公開されていなくても、出来るべきことはもっと考えられるはずです。汚染された水をどうしたら除染できるのか、どうすれば汚染した水を増やさず冷却を行えるのかを、もっともっと考えなければなりません。さらにメルトダウンで底が抜けたかもしれない原子炉内部に侵入するロボット技術や、原子炉の確実な状況を把握する遠隔映像監視技術を生み出さなければなりません。これらは事故が起きた原発で利用されるだけでなく、安全な原発でも危険場所の監視に利用できるものになります。となると、核を保有する、あるいは原子力発電所を保有する国が基金を拠出し、世界レベルでその開発に取り組むべきことのように私には思えるのです。もちろん相変わらずくだらない道を作ったり役にも立たない仕事を生み出して震災復旧補助金を食いつぶすのではなく、それらを複数の日本有数の企業に提供し、確実な成果を要求することも一つのやり方かもしれません。しかし、こういった有効な対策を取りたがらないのが、現在の日本政府であり、この姿勢そのものが問題なのかもしれません。
いずれにせよ、こういった問題の積極的な解決姿勢が見えない中で、なし崩し的に原発を再稼働させることは発想と思考の放棄のように私には思えます。国民全員がこの事態を静観するのではなく、直接大きな声を上げる必要がありますし、その意味でも来週の参議院議員選挙は重要になるように思えます。
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先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
・「誰でも作り手」時代に 少量・低価格部品が先導
・地銀・信金と事業考案 日本ユニシス ITシステム提供
・トヨタ流直伝で復活 米老舗家具のハーマンミラー M&A連発 生産現場のムダ削減
・視聴率3位転落 テレ朝と逆転 「踊る」仕掛け人 フジの現場改革 亀山社長、部長権限強める
・身振りや脳波へ 操作解放 身にまとうデジタル 「キネクト」など中継役
・「防げぬ脅威」に備えよ 人の弱点付き情報不正入手 ソーシャルエンジニアリング 対策サービス続々
・スマートTV 意外な壁 パナソニックCM 民放各社拒否 動画サイト台頭懸念か
・使い手新発想 市場生む ゆりかごは「109」「サッカー場」
・「タイゼン」アプリ開発急げ サムスン・インテル:開発コンテスト主催 ドコモ:国内で作成呼びかけ
・緊急通報にセンサー美術 アズビル 終日定額の介護事業
・指を触れずに衛生的に コンタクトレンズ脱着具メディトレック つけ爪の女性など想定
・虫捕まえるシャッター 竹中と日本エアーテック 医療・食品工場向け 効果、粘着テープの10倍
・MS vs アップル 嵯峨野陣 OS「8」が一矢 県立全高校に 1500万人市場教室白熱
・孫氏、シリコンバレー凱旋 ソフトバンク、米社買収完勝 挑戦の原点 住居構え勝負
・GM復権 ITと走る 運転者との対話 未来の「秘書」
・3Dプリンター 20万円着る卓上型 中国デルタ・マイクロ 重さは5`
・グループウェアの盲点 「グーグルグループ」公開状態 初期状態:誰でも閲覧 安全指針:毎年更新を
・ペースメーカー MRI対応続々 米セント・ジュードなど 電子回路の磁力干渉防ぐ
・スマホ連動の電動バイク テラモーターズ 走行データ確認OK
・「中年」マリオ 再び跳べるか 任天堂 脱集団指導 岩田流でスピード経営 黒字1000億円回復狙う
・車載ソフト、新たな金山 グーグル、覇権狙う
・個性はタブレット台頭 山田、自社ブランド 手書き対応強化や1万円台も
・医療・介護向けSNS ソフトバンクテレコム 患者の情報共有
・電通、4500点の購買情報活用 小売り販促支援サービス CM効果を検証
・健康・介護福祉のIT市場 17年に619億円 国内、民間見通し
・新聞・出版の分離相次ぐ 米メディア、テレビに集中
・写真プリント逆襲 富士フイルム カメラ「チェキ」世界で200万台 アジアで人気点火
今週は、どんな一週間なのでしょうか。