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 July Fourth week

 アメリカのデトロイト市が破綻しました。かつて自動車王国のアメリカを支えたデトロイト市ですが、アメリカの自動車産業の衰退とともに市も徐々に衰退し、今回の状況になったようです。負債総額は1兆8000億円と膨大なものであり、これ以上行政や公共サービスが継続できないことから破綻となったようです。

 現在の人口は70万人と、ピーク時の180万人から考えると1/3程に減ってしまったようです。原因はもちろん自動車産業の衰退です。自動車製造工場が無くなれば、関連の部品メーカや鉄鋼メーカーなどもその地で事業が継続できなくなります。それらをはこぶ運輸や、さまざまな資材や車を保管する運輸・倉庫業も成り立たなくなるでしょう。それらはそこで働いていた人々の仕事を奪いますので、仕事を求めて市民が市から流出することになります。住民が激減すれば、さまざまな商業や飲食業も衰退するでしょうし、病院や医療機関なども継続が出来なくなります。残っているのは移動すらままならぬ低所得層や老人ばかりになるでしょうから、税収も上がらず、逆に福祉コストは高騰の一途となるでしょう。企業や市民からの税収がなくなれば、警察や消防と行った行政サービスも提供出来ませんから、その人員が削減されます。結果としてますます住みにくくなり、住民はさらに流出してしまう、という悪循環から抜けられなかったようです。

 今後は国が主導でさまざまな債務処理を行いデトロイト市の再生を図るようですが、基幹の産業がない以上劇的な回復は望めませんし、ぎりぎりの状態が続く景気と治安の悪い都市で働こうという方は少ないはずですから、前途は厳しいとしかいいようがありません。さらにこの事態はアメリカ全土で広がっており、今後破綻が予想される都市がいくつもあるようです。

 かつて日本でも、炭鉱で栄えた夕張市が破綻しました。12万人ほどの市民を有したこの市も、炭鉱の閉鎖によって地場産業が無くなり、300億円以上の負債を抱えて破綻せざるを得ませんでした。その後は容赦のない公務員の削減と公共事業 などの廃止を行い、さらに税額を高めるという住民の負担増加によって負債の返済を図っていますが、肝心の住民の流出が激しくなかなか厳しい状況のようです。現在は1万人前後の住民が暮らしていますが、映画祭やメロンによる観光誘致を図っているのものの、 街を立て直すほどの産業ではなく成果は発揮できていないようです。

 このように、かつて反映を極めた街でも、基幹の産業が抜ければあっという間に衰退が訪れる事実があります。今後の世界競争を考えると、付加価値が高くない製造業は先進国の主要都市から撤退することが進んでいきます。逆にこれまで産業の無かった発展途上国に新規工場が作られ、そこで新たな雇用を生み、新しい都市を造り出していくのでしょう。これが世界の流れであり、歴史的な必然のように私には思えます。

 となると大切なことは、この流れを事実として受け入れ先を考えていくことになります。慣れ親しんだ基幹産業の継続を誰もが望むのでしょうけれど、こうして時代の変化を考えると難しいといわざるを得ません。そうだとすれば、まだ余力のあるうちに次の基幹産業を創出し、その受け皿を街に作っていくしか方法がないように私には思えるのです。

 東京に生まれ神奈川で育った私は、これまで本当の意味の田舎の生活を知りませんでした。しかし昨年伊豆に拠点を構えたおかげで、自然の大切さを身をもって知りました。 さらに若い時米国を見てから自由な発想は自然が豊かでのびのびとした環境でしか生まれないことを痛感していましたし、日本の地方にはまだまだ そういう豊かな環境が存在していることも知っていました。こうやって考えてみると、やはり大胆な手法を使って都会の知的産業を田舎に移転し、そこで付加価値と創造性の高いビジネスを行うことが大切なように思えます。

 IT関連、特にネットビジネス関連に従事する人間は、年齢的に20〜30代が多いと思われます。顧客との頻繁な折衝がなければ、都会でも地方でも仕事は可能です。ましてや住環境や育児環境が整っていれば、男女を問わず本当の意味の裁量労働を行って付加価値の高い仕事をすることがでるはずです。長い通勤と狭いオフィス空間から解放され、自然豊かな のびのびとした環境で自由な発想を浮かべ、集中して働ければ、きっと高い付加価値を生むことが出来るはずです。さらに仕事の後は 、子供と一緒に自然の中で生活を楽しめるとすれば、そこへの移住を真剣に考える若手の夫婦も少なくないはずです。さらに地方であれば都会より相対物価は安いはずですから、企業も人件費を下げることが出来ますし、安い賃金でも住みやすい環境であれば、若い労働者は定着することは十分に考えられます。

 こうして若い人間が流入することで税収は安定し、人口が増えることから公共サービスも手厚くなります。住民税は安く公共サービスのレベルが高ければ、そこ に永住を希望する人間が数多くなります。さらに高いレベルの医療機関を呼び込めば、働いている人間、老人ともに大きなメリットがうまれます。そこに住めば潤沢な公共サービス、高いレベルの医療機関が保証されますので、高齢の企業経営者にもメリットがあることになります。さらに手の余っている元気な老人が多ければ、育児保育施設の労働者も確保できるはずです。相対的世帯数が増えれば商業も栄えますし、ネット社会を支える運輸業もサービスレベルが高められます。ネットを使えば都会と同じような商品を手に入れられる時代ですから、足りないのは巨大商業施設と歓楽街だけ、ということになります。 となれば、行政や企業が協力して半年に一度程度近隣の大都市への往復旅費を支給するようにすれば、都会でのレジャーも楽しめ若者のフラストレーションはさらに下がるように思われます。

 このように衰退する地方都市でもIT業界のように付加価値を生める作業を呼び込めば、再び復興することは可能です。さらに国を利用してスマートシティのモデルとしてインフラを整える実験都市にすれば、その奥行きは無限と行っても良いでしょう。

 大切なことは破綻した街を作ることでもなく、破綻した街を負担の高い住みにくい街として消極的に再生することでもありません。だれもが住みたいと願う、そして誰もががんばれる労働と生活が充実した街をつくることが大切なのです。それを出来ないと信じるのではなく、出来る方法を考えていく。これが我々に求められることですし、日本でも多くの都市がデトロイト市のように破綻しない唯一の方法のように私は思っています。

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 先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。

・忍び寄るハッキング つながる車革命 ボッシュ、安全の専門家買収
・2020年、40ゼタバイトに膨張 ビッグデータ
・ネスレ、若者2万人雇用 欧州の失業問題に対応
・ICタグ導入広がる 衣料品業界 棚卸し・精算に活用 初期投資の高さ、課題に
・「ジョブズ」になれるか MSバルマーCEO 権限集中へ事業部門解体 ポストPC最後の賭け
・「データの達人」育成 IT企業など協会立ち上げ 人材像、詰め急ぐ データサイエンティスト
・自動運転 規格奪い合い つながる車革命 トヨタ、静岡に実験施設
・IT、海外展開で17.5兆円 総務書13年版白書 潜在市場を指摘
・渋滞など事前に確認 カーナビに道路画像配信 パイオニア
・「大証単独銘柄」泣き笑い 東証と市場統合 東日本主点「追い風」 上場維持 10億円の壁
・メイヤー氏 2年目の試練 米ヤフーCEO ネット広告、環境激変
・会計データ集計 手軽に スマホ決済端末 スクエアなど POS情報争奪戦へ
・変異でタミフル耐性懸念 鳥インフルH7N9、新たな特徴 実用化には時間
・スイスブランド薬波紋 ノバルティス高血圧症薬 論文データ改ざん問題深刻化
・ソーシャル事業に新風 子がくれた天職 米で構想、日本で企業
・楽天、販売5割超へ スマホ・タブレット経由 拡大加速へアプリ投入
・電子レシート、開発に力 東芝テック、今週にも実証実験 販促向け提供 新たな収益モデルに
・大学の臨床研究でデータ操作 再発防止へ制度整備急務
・スズキ、主力系に搭載 衝突防止装置 まず「ワゴンR」女性を取り込み
・超小型車 未来の足なるか 横浜で初の公道走行 高齢者や観光用に コスト・法整備が課題
・欧州危機でもシマノ快走 ツール・ド・フランスチーム 6割が部品採用 精密な金属加工強み

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