2020年のオリンピック開催地が、東京に決まりました。投票前はスペインのマドリードが有利とされていましたが、第一回目の投票結果で東京が一位をとり、初のイスラム圏開催地であるトルコのイスタンブールとマドリードが同点二位で決選投票となりました。このときの報道が「二都市の決選投票」ということで「東京が落選したのでは?」という混乱も生じましたが、結局この段階でマドリードが負け、東京とイスタンブールで最終投票が行われ、圧倒的な得票数で東京が開催地に選ばれました。
東京が危ぶまれた理由は先日の汚染水漏れの報道であり、日本以外の各国での報道がシビアで今回の投票に大きな影響を与えると思われました。しかしそれ以上にスペインの財政不安とトルコの政情不安が勝ってしまったようであり、結果的に東京が選ばれたようです。その経済効果は3兆円とも言われますので、2020年に向けて日本全体が大きく変貌するきっかけになることは間違いないようです。
1964年に開催された東京オリンピックのおかげで、国立競技場や国立代々木競技場などのオリンピック関連施設が建設されましたし、東京モノレールや地下鉄の整備が行われました。さらに来訪者の利便性と日本の技術力を誇るべく新幹線が開通しましたし、主要ホテルの建築や整備が行われました。上下水道の整備も急速に進み、ゴミの収集も積極的に行われるなど、社会インフラが劇的に整備され都市化も進みました。まさに東京が急速に発展する素地を作ったのが東京オリンピックですし、その経済効果が日本全体に普及し、戦後の日本の国力を取り戻すきっかけになったといえます。
今回東京が打ち出したコンセプトは「コンパクトなオリンピック」であり、晴海を中心に競技場や選手村を整備し、30分以内で競技場まで到着できるというのがうたい文句のようです。さらに既存施設を積極利用することで財政的な負担を軽減し、今後の新しいオリンピックの姿をしめすことを宣言しています。過密都市東京がどのように2020年に向けた準備を行っていくのかが楽しみですし、無事に開催にこぎ着け、世界中の方が日本の素晴らしさを知っていただけることを心から願っています。
東京オリンピックの公式ホームページでは、招致の動機として「テクノロジーとホスピタリティによる感動体験」を挙げています。となると今後様々なテクノロジーが発展する可能性があり、IT技術者も存分にアイディアと実力を示す機会となります。日本が世界にスマートシティの原型を示す展示会と言うことも出来るでしょうし、そのために今後沢山のことを考えていかなければなりません。もちろんそれがIT業界に大きなビジネスチャンスをもたらすことを気付き、積極的な取り組みが要求されることも忘れてはなりません。それについてはまたこのホームページで考えを述べていきたいと思います。
しかし2020年の東京開催が現実になったことで、積極投資の前の大混乱を我々は覚悟しなければなりません。これを機会に晴海を中心に大きな工事が始まりますし、それによる渋滞や規制が数多く発生するでしょうし、規制にともなう事故や事件も避けられないでしょう。工事資材や労働者の不足も起きるでしょうし、各地の労働者や様々な国の外国人労働者の流入による混乱も避けられないでしょう。その上新しい詐欺や窃盗や暴力行為も予測できますし、社会インフラの見直しや既存習慣の大幅な修正など今後の日本のあり方そのものを考える必要も生じると思われます。最高のおもてなしを実現するために、大きな努力と犠牲が我々に求められることは事実ですし、それらをなしに2020年を迎えることは出来ないでしょう。さらにオリンピックという宴の後の現状回復や再整備にも大きな工事が伴うでしょうし、それを起因とする混乱も生じると思われます。
このようにオリンピックが日本経済に非常に大きな影響を与えることは間違いありませんが、それは同時に大きな混乱を生じる可能性が増したことも意味します。我々は明るい未来ばかりに焦点を当ててしまいますが、同時にその影が大きくなることも考えなければなりません。大切なことは、明るい未来を築くプロセスをきちんと想定しその中で起きうるリスクをきちんと想像することであり、さらにそれを上手にコントロールすることです。起きてからではなく、起きる前に対策を講じる。起きてもその影響を最小になるように考える。宴に浮かれるだけでなく、宴そのものを楽しむための準備を、我々は怠ってはなりません。
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先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
・患者のため オンリーワン 足の診療所:足特化の設備充実
神戸低侵襲がん医療センター:がん治療手術せず
・サイバー防衛「臨戦態勢」 米ロッキードやノースロップなど軍需大手 機密保護へ投資拡大
・米セールスフォース 5〜7月31%増収
・「サーバ仮想化」のさきへ 米ソフト大手ヴイエムウェア クラウド進出など挑む
・「海底の優等生」NEC強み ケーブル敷設 調査・生産セット アジア・中東・太平洋 開拓
・「日本版NIH(国立衛生研究所)」650億円 文科省、科技予算2割増 概算要求
・ペン型インスリン製剤 小さな力で注入可能 ノボノルディスク
・「闇」に潜む構造問題 ブラック企業 崩れる終身雇用、年功序列 企業固執、ひずみ生む
・施設利用者の避難行動予測 大成建設 模擬計算時間、8割減 設計時から安全性高める
・東大講義に3.8万人 米オンライン教育で登録
・無線LAN電波で発電 山口大が部品開発 スマホ電池長時間化へ
・驚きのピンククラウン トヨタ、期間限定半版 「ReBORN」改革の象徴
・MS再起へ ハード「移植手術」 ノキア携帯事業 7100億円で買収
・凸版、電子看板半額に ネット経由で広告配信
・米、軍出身者を積極活用 情報セキュリティ人材 自衛官、終身雇用制が壁
・若手研究者にビジネス塾 文科省、企業体験プログラム 自身のテーマで事業化志向促す
・日本でモバイル国際会議 中国GWC、米中に続き開催 企業トップら1000人規模交流
・当日配送 ヤマト旗艦 厚木ゲートウェイ
・日沈む「大英携帯帝国」 ボーダフォン 米ベライゾンと合併解消 買収・拡大が裏目に
・医療も変える 3Dプリンター 人工骨など製作、患者負担軽く 短時間・低コスト 課題は法整備
・スマホ向けコネクター 日本航空電子、供給素早く 内製化進め生産柔軟に
・EV充電ステーション事業 シーメンス照った宇 交通システム経営資源集中
・革新の連鎖、夢を実現 白熱米車四条 「機械の目」で自動運転
・緻密なシステム一括提供 JR東日本 欧州で運行受託狙う 社員育成や設備調達 国際標準目指す
・カメラ業界に波紋呼ぶ ソニー、概念変えるスマホ装着型 コンパクト市場狙う
・クアルコムが腕時計型 「ウエアラブル」開拓
・書籍の出版 紙と順序逆転 ベストセラー、電子生まれ 48時間以内に作品配信
・「革新のサムスン」演出 腕時計型モバイル端末公開 アップルに知財アピール
今週は、どんな一週間なのでしょうか。