消費税の引き上げが決定しました。予定どおりこれまでの5%から、8%に引き上げられる予定です。
政権交代前から、消費税の引き上げは議論されており、民主党の最後の置き土産が消費税の引き上げでした。安倍政権はそれを引き継ぎ、財政状況の改善のために消費税の引き上げを検討しており、この半年の景気状況の改善から引き上げに踏み切るようです。
確かに為替を考えると、民主党政権時の2011年〜2012年は1j80円前後を推移していましたが、自民党に政権交代後は1j100円前後と20%以上の円安を実現しています。日本は輸出大国であるため20%の為替改善は自動車や電機などの大手企業の業績を大幅に改善しており、昨年度末決算も上向いていますので、今年度末の決算はこれまで以上に業績が改善することが予想されます。今後は2020年の東京オリンピックに向けた積極投資が期待できますし、原発対策の安定から海外旅行客も見込めます。オリンピックには間に合わないもののリニア新幹線の計画もいよいよ現実になってきましたので、各地で積極的な投資が見込まれます。となると、日本の中期的な経済状況は改善することが期待できるとは思います。
しかしながら失われた20年を振り返っても、実は2000年前後は戦後三番目の好景気であったのですが、国民の生活にはなんら影響を与えなかった過去があります。政府はさまざまな景気対策を今後も実施していくことを明言していますが、それが本当に国民の所得向上につながるかは疑問が残ります。また大手企業がこれまで以上に下請企業など弱い立場の企業に消費税増税分の価格引き下げについて圧力を掛けてくる可能性も高いため、それらの企業の業績が上がる保証はありません。事実私が取引をしている大手研修会社も、先日ほぼ強制的に一律の報酬の引き下げを実施してきましたし、これは明らかに消費税増税に向けた脱法的対応(違法ではないが、明らかに増税後の利益確保のための法律の目をくぐる行為)と思わざるをえません。
日本の企業構成を考えると、大企業は50%程であり、その他は中小企業となります。大手企業に依存する中小企業も多い以上、このように消費税増税にかこつけた下請代金の引き下げは間違いなく行われるでしょう。さらに大手企業に勤めるサラリーマンも、さまざまな形で業務効率化の名目で削減されている状況ですし、相変わらずの雇い止めや非正規雇用者への不当な扱いは減る様子はありません。あらゆる企業で海外企業が代替できる業務が多いのは事実ですし、いくら景気がよくなっても経費削減の名目からそれらへ仕事が移行されることは間違いありませんので、今後も雇用者の所得が改善される見込みは低いと言えます。これらの原因は無責任に育った団塊の世代の経営者が中心になっていることであり、彼らのモラリティの低さと創造力のなさは改善される見込みは低いですから、この状況は残念ながら当面続くと思われます。
ところがこういった見かけの経済状況から増税をすれば、所得の改善されない国民の消費意欲はますます下がるでしょうし、それは結局すべての企業の成績にも長期的には響いてくるはずです。消費が起きなければ税収は上がりませんし、企業の業績も上がらなければ事業税の税収も上がらないでしょう。
さらに恐ろしいのは、消費税増税前の駆け込み需要が発生することです。地デジのときもそうであったように、家電業界や販売店は、地デジ移行に伴う需要の先食いを行ってしまい、その後数年テレビの販売状況が回復することはありませんでした。となると、今年度の景気はよくなるかもしれませんが、消費税増税後の来年の景気はより悪化する可能性も低くないように思われるのです。
日本の財政状況が悪化しているのは、今に始まったことではありません。しかしこの中身を考えると、明らかに無駄な投資と過剰な人員を抱える省庁の経費が問題です。なにより当の国会議員そのものも数が多すぎますし、その経費のあり方も非常に不透明です。今後はオリンピックの名目でさらに無駄な投資が予測されますし、東北と関係のない無駄な復興支援にも投資が続くのでしょう。こういった状況を改善せずに増税を行っても、財政状況が改善しないだけでなく国民の経済的な体力が疲弊してしまいます。
いよいよ日本も、経済的なモラリティを取り戻す時代になったと私は思います。現在の世界状況を作ったのは、米国のエリートが都合良く作り上げた金融システムのせいです。日本も右にならってきましたが、欧州はこの状況に警鐘を鳴らしています。当の米国も財政問題から一部政府機関の閉鎖が行われているように、経済的なモラリティの欠如は国家存続すら難しくするのです。日本もこの状況に気付き、増税の前にもう一度すべきことがあるように私には思えます。
たとえば大企業に対して利益と同等の社会還元を義務づければ、ブラック企業のように節操なく稼ぐ大企があっても結果として社会システムは充実します。利益を株主だけに還元するのではなく、社会に還元させるようにすればよいのです。そしてその社会還元分で公園を整備したり図書館を運営すれば、住民の生活は豊かになります。医療機関に還元すれば医療体制はこれまでより充実しますし、場合によっては医療費の軽減にもつながるかもしれません。市町村が運営するバスなどの交通機関に還元すれば、住民の交通費を半減することも可能です。このように企業が社会還元を行えば、国や自治体の負担を軽減しますから、財政状況は間違いなく改善できるのです。さらに社会システムが充実すれば公共投資が減りますので増税の必要性は下がり、国民の相対的負担は軽減されます。さらに給与が上がらなくても社会システムが充実することで一人一人の公的な支出が軽減できるため、収入は変わらなくても家計は豊かになります。逆に企業は社会還元を減らすためには適正な利益追求に目的が変わるでしょうし、サービス残業が減り人件費を高めるなど正しいコストの使い方を考えるようなるかもしれません。
このようにこれまでの経済理論や財政理論を振り回しても、時代の変化とともにそれらは効果がなくなっていきます。こういった常識を捨て、新しい時代の新しい経済ルールや財政ルールを考えること、なにより国民が充実した働きを取り戻すために、我々一人一人がアイディアをだし検討していなければならないと私は考えています。
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先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
・深海水温、上昇の可能性 IPCC報告書 気温上昇と比例
・ゲーセン、ネットで新機軸 SEGAやタイトー 配信で常に最新 機器を低価格化
・IT大手、教育市場構成 NEC:模擬授業年50回 富士通:タブレット海外視察
・ICタグ認識アンテナ かざすだけ連続読み取り ミカサ商事が装置 棚卸し負担減
・三木谷流 広告塔許さず 楽天V 球団黒字追求「強い」+「儲かる」まずファン固め好循環の起点
・未来の予測、私にできる? IT社員と混じり講習 情報の数値化あたふた
・エバーノート、物販で新風 自動分類するスキャナー 撮影でデータ化できる付箋
・山形カシオ 水中無線機 警察・消防を開拓
・スマホよりロボカー 次世代車は宝の山 村田製やアルプス 電子部品、開発にしのぎ
・スマホ着信、香りで通知 シフト 機器装着で成分噴射 企業の販促後押し
・ウェアラブル部品の晴れ舞台 アルプス:曲げられるセンサー 村田製:超小型の水晶発振器
・ミクシィ、初の最終赤字 今期、スマホゲーム伸びず
・マツダ出身の異色医師 電子カルテ開発、シェア2位 利用者が作り・育てる
・左党に農政のツケ 日本酒19年ぶり値上げ 原料米不足し高騰 電気・ガスもコスト増
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・ヤフーEC足場固め 楽天・アマゾンを追う 年内に通販サイト改良
・業務手順書、スマホで ソフトバンク系、スタディストと提携
・ガンプラ再起動 親子効力線 アニメ・ゲームと同時展開 改造する楽しさ提案
・「アイサイト」全面刷新 富士重 認識距離4割向上
・自民、ANA蜜月建材 羽田国際線枠 日航に干渉 阿部・稲盛会談実現せず
・「雇い兵」日中韓で暗躍 標的型サイバー攻撃 企業など被害
・アイティフォー一括受託 スーパーの音声放送・BGM配信 業務通信網使いコスト3割安く
・双腕で器用に複雑作業 日立建機 油圧ショベル「アスタコ」 傾き・回転で4操作
・俊敏クロネコ アジア攻勢 ヤマト・羽田に最大級拠点 止めない物流毎時4万8000個
今週は、どんな一週間なのでしょうか。