アマゾンの宅配業務から、佐川急便が離脱しました。これまでは日々増えゆく取扱量をヤマト運輸、佐川急便、日本郵便などが分担して宅配を行ってきました。しかし取扱量の増加は、佐川急便の配達コストを押し上げてしまったようです。
もともと佐川急便ではヤマト運輸と異なり、業務を委託された個人事業のセールスドライバーが、一個あたりいくらという料金で宅配を行っていました。この仕組みですと取扱量が増加すればセールスドライバーを増やせばいい訳ですし、セールスドライバーが深夜まで頑張って配達すれば、セールスドライバーの取り分は増えます。取り扱いが減れば一人あたりの取り分は減りますので、腕の悪いセールスドライバーは廃業してドライバー数が調整され、質も維持できる仕組みです。
しかしながら取扱量の増加に伴って、Amazonは大量に業務を委託していることを理由に、荷物一つあたりの宅配料金の値下げを要求することになります。こうなると佐川急便側の負担は、相対的に増えてしまいます。なぜなら物流量の増加でトータルの運賃収入は上がりますが、値下げした分をセールスドライバーに委託する費用に反映することは難しいため、比例的にセールスドライバーへの委託料が相対的に高まってしまうからです。この状況を改善すべく佐川急便は、採算の確保のための値上交渉を繰り返していたようですが、9月末で決別してしまい今回の撤退という結果となったようです。日本郵便の取扱量はそれほど多くはなさそうですので、今後はヤマト運輸一社が独占的にAmazonの宅配業務を引き受けることになりそうです。
ヤマト運輸は佐川急便と異なり、契約社員であるドライバーが宅配を行います。したがって取扱量が増えても基本的に人件費は変わらず、一人あたりの稼働率が高まるだけです。とはいっても佐川急便が担当していた分もヤマト運輸が引き受けるとなると、相当な人員増を覚悟しなければならないでしょう。さらにこのところ矢継ぎ早に流通センターを開業させていますが、物量の増加に伴うさまざまなコストは明らかに高まりますから、ヤマト運輸といえども決して潤沢な利益を得られるとは思えません。反対にAmazonも利益率が5%程度のようですから、物流コストを増やすわけにはいかない事情もあります。となると、今後はより効率的な業務運営によってコストを低減し、このサービスレベルを維持することがヤマト運輸、Amazonの両社に求められるようです。
さらに心配なのは、ヤマト運輸の業務体制が物量増に対応できていないという事実です。先月大阪から陶器の皿を自宅に送ったところ、十分な梱包をしていたにもかかわらず輸送中に割れてしまいました。「だめもと」でヤマトに連絡したところ、保険で代金が支払われるとのことでした。ところがその後支払い予定の期日の連絡だけがきて、あとはなしのつぶてになってしまいました。今月に入ってさすがにおかしいと思って連絡すると、調査するとのことで一連の経緯を説明させられました。するとその後調査をすると言ったまま、また連絡がなくなってしまいました。後日再度こちらから連絡を取ると、またまた最初から経緯の説明を求められました。そのおかげか翌日の夕刻に代金の支払いに行くと連絡があったため待っていましたが、結局深夜まで誰も来ませんでした。
翌日ヤマトに連絡すると、再度最初から経緯の説明を求められました。仕方なく説明したのですが、翌日になって担当者が不在だから別担当者が最初から経緯を教えて欲しい、との連絡があり、さすがに私もあきれてしまいました。結局すったもんだのあげく大阪の所長を捕まえなぜこのような事態になったのかを説明してもらいましたが、内部でクレーム処理のシステム登録をしたものの、その後この一件を放置していたようであることが判明しました。さらに本当か嘘かはわかりませんが、クレーム処理のシステム登録後はすべて紙ベースでの対応を行うため、報告されない限りマネジメント側はクレーム発生やその処理の過程や経緯を知ることなく放置となってしまうようです。
天下のヤマト運輸ですらこの体制ですから、他の業者はもっとひどい対応なのかもしれません。
(ちなみに15日時点で、返金の連絡がまたまたありません...もうめんどくさいからいいか...
→ ようやく17日に支払いが行われました...)
数年前日本郵便のゆうパックで品物を送る歳、急ぎであることを伝えると速達料金を払ったほうがよいといわれたため、そのように処理して送ったことがあります。しかしながら現実には翌日どころか一週間程度遅れて発送され、損害を被ったことがありました。これは郵便局員の勘違いから起きたことだったのですが、結局対応はたらい回しの上うやむやにされ、速達料金を含めた代金の返金等は行われませんでしたし、一切の謝罪もありませんでした。このように宅配を巡る問題は各社で発生しているのですが、比較的この問題が少なく、問題発生の際にも対応がよかったのがヤマト運輸だったような感じがします。しかしながらその体制も物流量の増加とともにほころびをみせ、今回の問題につながったのかもしれません。
ヤマト運輸のこの一件が特殊な事態であればよいのですが、私の感覚的には最近恒常的に発生している事象のように思われました。現に伊豆熱川のヤマト運輸のドライバーは、受け取りのハンコも必要ないと明言していますので、未着等の事故が起きた場合の追跡も事実上不可能と思います。このようにほころびを見せている業務体制のもとで大幅に物量が増えれば、さらなる事故の頻発は不可避のように私には思えてしまいます。
ネットビジネスの台頭の陰で、リアルなビジネスは衰退の一途です。同時にネットビジネスの台頭は、宅配企業の業務量を増やし、おそらくかつてのコンビニ業界のように新たな社会問題を生み出す可能性が高まります。ビジネスが大きく変わろうとしている現在、これまでのやり方を抜本的に見直し、より問題の起きにくい業務をおこなうことをすべての企業が考えなければならない時期が来たように私には思えます。ヤマト運輸のこの業務体制の不備が、皆様が委託するさまざまな物品に影響しないことを、心から願っています。
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先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
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・「テレビの巨塔」と決別 パナソニック、プラズマ撤退 スピード感、課題
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今週は、どんな一週間なのでしょうか。